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これしかできないっすから

松本人志さんと中居正広さんの番組『まつもtoなかい』に出演した甲本ヒロトさん(以下、ヒロト)の言葉が話題を呼んだ。

ヒロトの言葉

以下、要約。

若い人はみんないい。なんでかっていうと、音楽って何がいいかというと、形とかがないところ。結局、やったるでっていう気合。そんなのが一番大事。で、アナログ世代とデジタル世代の違いは1箇所感じるのは、(音楽が)デジタルになると情報としてキレイに入ってきちゃって、歌詞を、文字を追いすぎてるような気が、ちょっとだけする。ぼんやりしてないんですよね。ぼんやりしてると、どこに焦点を合わせるか、みんな自分で選べる。だけど、ペランって1枚にされると、みんなそれしか見れない。なんかね、デジタルになってからはそんな気がちょっとする。もっとぼんやりしていていいのに。洋楽の歌詞なんてわからなかったけどロックはなんか元気をくれたし、カッコいいって思った。同じ所にいて同じ方向を向いてるから、同じ物が見えてるとは限らない。ピントがあってる場所が違っていい。僕はたまたま中学生の時にロックにピントがあっただけ。

今、生まれいく音楽たちはどんどんマーケティングで生まれているような気がしている。頭でっかちな音楽が増えているような気がしている。音楽に正解というものがあるような気がしてしまう。

ヒロトは言う。

年取ると、老眼ってあるんですよね。僕ないんですよ。そのかわり遠くがどんどんぼやけてくるんですよね。そのタイプでよかった。なんでかっていうと、近いものを見たい。遠くのものって、見えなくてもたいして影響ないんですよ

自分の声をただ聞いて欲しくて歌っていたはずが、いつしか皆の声、大衆化された正解を代弁しようとする。近くの知人の顔は見えなくなり、遠くの不特定多数の人々の顔色を見ようとする。

『関ジャム』というトレンド曲の分析番組を私は楽しんでよく見ているが、これを楽しむマインドこそが、今の音楽をつまらないものにしているのかもしれないとドキリとする。

藤井風

「これしかできないっすから」というような人たちの音楽が、今、なかなか日の目を見ていないような気がしていたら、彗星のごとく現れた、藤井風。マーケティングされまくった世界を、スーッと喚起してくれるがごとく。

今年の12月に「土」から「風の時代」に変わると言われている。本当に「風」が現れた。

宮本浩次

エレファント・カシマシ宮本浩次さんのカバーアルバムが良い。

1. あなた
2. 異邦人
3. 二人でお酒を
4. 化粧
5. ロマンス
6. 赤いスイートピー
7. 木綿のハンカチーフ-ROMANCE mix-
8. 喝采
9. ジョニィへの伝言
10. 白いパラソル
11. 恋人がサンタクロース
12. First Love

※個人的には、特に、3. 4.がツボだった。

エレカシともまた違い、ヴォーカリスト、表現者としての実力が遺憾なく発揮されている。「結局、これしかできないっすから」と頭をワサワサとかきながら照れ臭そうに語る宮本さんが見える。

お笑いの世界

お笑いの世界には、まだ、「これしかできないっすから」というスピリットを多く探すことができる。心なしか、そういう本音吐露の番組も増えたような気がする。予算がかかる歌番組を組むより、かからないお笑い番組が量産されているという意見もよく聞く。もちろん、そうだとも思うが、もう、私たちはマーケティングされまくったカドのとれた番組では満足できず、「俺、これしかできないっすから」の尖りを見たいんじゃないかな、と。供給側の都合と需要側の欲求がシンクロしている部分もあるのではないかと思う。マルチに活躍する芸人さんも増えたが、結局は、「コントや漫才の価値をあげ、よりたくさん見てもらうために」ということに帰結している方も多いのではないか? 

ヒロトは言う。

バンドをやってお金持ちになりたい。それだったら、バンドは捨てて、不動産の勉強でもした方がいい。バンドをやって有名になりたい。それだったら、犯罪を犯せばすぐに有名になれる。夢を語る時に、2つの要素を混ぜるな。手段と目的を混同するな

松本さんは、東京進出をしてきた頃、ブルーハーツの音楽に助けられた、と言った。今、ザ・ブルーハーツをBGMにするのが似合うのは、若手ミュージシャンではなく、若手お笑い芸人のような気がする。

ヒロトの言葉で、最近、なぜ、自分がお笑いにのめり込んでいるのかがよく分かった。私は、結局、「これしかできないっすから」に弱い。

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今日の一曲




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