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『鬼滅の刃』ヒットから『おもてなし幻想』を考える

『鬼滅の刃』の人気がこれほどまでに凄まじいものになったのは、動画配信サービスが流布した状態の今、たくさんの人の「おもしろいらしいぞ」→「観てみよう」が何のストレスもなく行われた結果である、というSNS投稿を見た。

人間は思いついた瞬間に、すぐ行動に起こせる即時性が大切だという視点は、とても興味深く、「たしかに!」と膝を打った。

『おもてなし幻想』という一冊を思い出した。多くのサービスオペレーションの事例をもとに、サービス提供者が考えるサービスは、実は受け手側にはストレスを強いるものがほとんど、というような論考。まえがきの見出しは、日本の「おもてなし」は、単なる「おせっかい」だった?。そこではUBERを体験してしまうと、丁寧すぎる日本のタクシーは単なるおせっかいに感じてしまう……という例が用いられている。

大半の企業が、ひたすら喜ばしい経験を創出し、顧客に繰り返し提供するためだけに、何十年ものあいだ時間とエネルギーとリソースを投じてきたというのに、皮肉にも顧客がまさしく心から求められているもの(中略)は、「努力いらずの体験(エクスペリエンス)」だ。

この本は、サブタイトルが「デジタル時代の顧客満足と収益の関係」とあるように、基本的にはデジタルのUXについて書かれているが、カスタマーサービスに関わる人全般に向けたヒントが提示されている。webマガジンの運営している時、「喜んでもらいたい!」とさまざまなことを仕掛けることに猛進し続けている時にこの本に出合った。「自分が力を入れようとしていることのポイントが実はかなりズレているかもしれない」と頭を冷やしたり、考え方の軌道修正をするのに役に立った。

冒頭の『鬼滅の刃』。原作の質の良さ→アニメの出来の良さ。ここまでは、きっと今までもたくさんあったような気がする。そのアニメが評判となり、「いつでも、どこでも、気になった人がすぐに鑑賞できた」ということが何より追い風となり、普段、アニメを見ない層、そして漫画を読まない層を巻き込んだ。

新しい体験、楽しい体験、ユニークな体験……そういったことを考えることは楽しいし、「喜んでもらいたい!」という欲求が仕事のモチベーションになることは多い。けれど、「○○したい!」という瞬発的な本能が人々に生じた時に、できるだけ即時的に、ストレスなく届ける仕組みを考える。こちらの視点も忘れずに、と改めて。





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