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夜更けに胸騒ぎが止まらなくなる話

話題になっていたが、見逃していたフジテレビで深夜に放映されていた「世界SF作家会議」をYouTubeで見た。寝しなに何気なく見始めたのだが、あまりの面白さに、最後まで一気に観し、その後、興奮で眠れなくなってしまった。

出演は新井素子、冲方丁、藤井太洋、小川哲の5名。顧問として大森望が参加。司会進行はいとうせいこうが務める。また、海外からの特別ゲストとして『三体Ⅱ 黒暗森林』の劉慈欣氏がVTRで出演!

コンセプトは、「SF作家=未来のプロ」にコロナ禍を通して未来を考えてもらうというもの。メディアには、日々、コロナの専門家のコメントが溢れているけれど、どんなにエビデンスを元に語られていようとも、なかなかピンとこない。なのに、なぜだろう、先生たちの示唆に富んだ言葉の数々は、「そう、私が聞きたかったのは、こういう話!」と膝を打つことの連続で、かつ、エンタメ性の高いコメントの数々に笑いの連続でもあった。

世界を俯瞰で見たり、過去から未来へと時空を超える想像力に長けた先生たちと過ごせる時間は、コロナに一喜一憂している日々を少しだけ楽なものにしてくれると思う。

そして、眠れなくなった要因は、「そうじゃん、アフターコロナを語るのに最適なのは、実は科学者でも、それこそ政治家や経済評論家でもなくて、SF作家じゃん!」という私の中の盲点をつかれた点にももちろんあるのだけれど。だけど、だけど、私がこの番組に受けた一番のショックは、そのコンテンツの面白さ自体では、実のところない。

それは、なぜ、このコンテンツを出版社がつくれなかったのか、という悔しさにある。私が文芸担当の編集者だったら、悔しさで数日間眠れなくなるレベルのような気さえしてしまう。

出演者の先生の中で私は新井素子先生の作品しか読んだことがなかったのだけれど、この番組を通し、各作家の先生のキャラクターや考え方などが分かった途端、全員の先生の作品を読みたくなってしまった。

これはSNS隆盛の今、本当に明確になったことだと思うのだけれど、「人は人に興味を強く持つ」ということに尽きるからだと思う。本が売れなくなった。そう言われて久しいけれど、それに対し出版社がやれることの一つを提示してくれたような番組だったと思う。そして、私は雑誌編集者として、どうしていくべきかという問いに向き合わなければならない。

と、悠長に振る舞ってばかりはいられない。

例えば、今回のように映像で出演者のキャラクターを伝えつつ、彼らをコンテンツにした本(を含めた物販)を作り、直販を始めたならば? 海外ではそのような事例も聞いているので、もう、本当に胸騒ぎ、どころか、動悸息切れ目眩な”救心”レベルである。 

今、ライブが開催できない音楽業界はライブ配信のあり方を急激なスピードで模索していると聞く。一方、ゲーム『フォートナイト』でアーティストのトラヴィス・スコットがライブを実施し、この春に同時接続数1230万というとんでもない記録を残している。現実のコンサートイベントの史上最高レコードを軽々破るどころか、ニューヨーク市の推定人口よりも多いだという。音質と映像にこだわりつつ、利用者がアバター参戦できる仕組みを既に持っているのだからして、音楽業界は、次は明らかにゲーム業界との戦いになるのではないだろうか?

もうジャンルごとに1番を競いあっても仕方のない世界なのだと、「世界SF作家会議」は夜更けに私に冷や水を浴びせてくれた。

もう、ドキドキが止まらない!

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追伸:ちなみに、こちらの番組は1週間で消滅するTverではなく、YouTube配信というのが有り難い。そして、1本の番組をYouTubeにアップする際は、作家先生ごとに切り分けて投稿されているのも本当に素晴らしき配慮。学びしかない!

追記 2020.0802】








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