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「心を震わせたくない」と言われた話。誰かの靴を履いてみる?

「心を震わせたくないから、物語は読まないし、ドラマも映画も観ない」と言われた。心が震えてしまった自分の対処の仕方が分からないとも。側から見れば、人々の心を震わせる権化のような存在の方なため、尚のこと驚いた。「現実に起こる出来事だけで十分だ」とその人は言った。

私は、とにかく、心を震わせたいがために、小説を読むし、音楽を聴くし、観劇もするし、映画も観るし……。自分で味わえる感覚には限界があるので、自分が体験することのない感覚を取り込み、自分ごとのように共感する。あわよくば、どさくさ紛れに、思い切り泣いたりしたりして……それでストレス発散しているようなところもある。

私と前述した知人のどちらが良い悪いという話ではない。自分が当たり前に思っていることは、まったく当たり前ではないのだなぁ、と。そんな驚きだった。

相手の立場に立って考える。英語のことわざでは、「誰かの靴を履く “put oneself in someone's shoes” 」と表現するらしい。私は足が大きいので、自分の足に合う靴を日本で探すことすらなかなかに難儀なのだから、ましてや誰かの靴だなんて!   履き心地が悪かったとしても、趣味が合わなかったとしても、それでも、だれかの靴を履いてみることが大切とアメリカのことわざは教えてくれる。

相手の考えていることを同じ立場にたって理解する。自分の気持ちすら揺れがちでつかみどころがないのに!  なかなかに難儀だけれど、自分の当たり前が当たり前ではないという事実に気がつくキッカケにはなる。

ちなみに、最近の心震わせ作品は、amazonオリジナルの『モダンラブ 今日もニューヨークの街角で』。他人の靴をたくさん履きたい人にオススメのアンソロジーだ。

日常で心が震えることなどそうそう起こらない私は、これからも誰かの靴をたくさん履ければ良いな、と思う。



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