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両思いじゃない、彼氏という存在

夕日みたいなやさしい朝日が部屋いっぱいにふりそそぐ、土曜日の朝。朝どというのに、なぜか感傷的になってしまって。昔の恋のお話をここに置きたくなって。


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両思いじゃない、彼氏という存在。16歳の夏に初めて手に入れた。手に入れたと書いたのは、何回も何回も何回も私から告白して説き伏せたからだ。


同じ高校の3年生だった彼と1年生だった私は共通の友人を通して、メル友からスタートした。たぶん、彼氏が欲しい! 高校生なんだから彼氏が欲しい! と騒いでいたのだろう。クラスメイトが、この人昔から家族ぐるみで仲いいし、今彼女がいないから、年上だけど。と私に彼のメルアドを教えてくれた。

メル友から始まったものの、顔が気になるじゃない。でも3年生のクラスは校舎が違うから、そのご尊顔を拝みに行くことは難しい。1年坊がこんなとこで何してんだ? ってなるじゃんやっぱり。

でも私の彼氏になるかもしれない人の顔が見たくて見たくてしょうがなかったので、放課後靴箱の近くで待ち伏せすることにした。メルアドを教えてくれた友だちと一緒に。

あ、あれあれ。あの人。

と教えてもらったその人の顔に一目惚れをした。きれいな二重の目、スーッと通った鼻筋、そして何よりも肌が綺麗だった。50メートル離れた物陰から見ても、彼の肌がシルクのように美しいことは分かった。


それから1ヶ月ほど、メールのやり取りを続けただろうか。私は一目惚れだったので、最初から恋の暴走列車と化していたけれど、彼は別に私のことを年下の女の子で幼馴染のクラスメイトとして認識していなかった。

それでも一緒に下校する約束を取り入れたり、タイミングが重なるように学食に行き、偶然出くわしたふりをして挨拶をしたり、すげえ頑張っていた私。


家に帰ったら、矢沢あい先生の「天使なんかじゃない」や、高須賀由枝先生の「グッドモーニングコール」や、小花美穂先生の「こどものおもちゃ」なんぞを何度も繰り返し、結果的にはハッピーエンドになるというイメトレに勤しむ。


何度も何度も、偶然を装い彼との接触回数を増やしていく。気軽に「おー元気か?」と話しかけられるぐらいに、彼の記憶の中に自分を刷り込ませることに成功した私は、これはそろそろ告るタイミングなのでは? と考え出した。


(つづく。たぶん。)

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