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【ネットワークが手探りだった頃】 西荻 ご近所づきあいの日々

今でこそ、家にいながら簡単に世界中の人たちとつながることができるけど、以前はそうじゃなかった。

フランスに来る直前まで住んでいた東京 西荻窪では、ご近所づきあいが充実してました。一人暮らしでご近所とのつながりができることってまずないと思う。
自分にとっては特殊だったなーと思える日々を書いてみます。

西荻窪

西荻窪は中央線で吉祥寺の一つ手前の駅。吉祥寺は大きな駅だったけど、西荻はこじんまり。吉祥寺にも魅かれたけどより駅の近くに住めるところが魅力、家賃も吉祥寺よりはお手頃。小さな飲食店や古着屋さん、ライブハウスがあった。地元の人と言うより上京してきた人たちが集まってる印象。

仕事仲間ではなく

社会人になり3年目、職場で一日の大半を過ごしていた頃。家と職場の往復。そんな中で当時、だんだん大事な居場所になっていった西荻。
仕事帰りに寄った古着屋さんが 自分の中で大きな存在になっていく。
オーナーさんが気さくな方で、行く度に知った顔が増えていった。

古着屋さんの閉店後にオーナーさんを交えて飲みに行くこともあったし、私の家でスッポン鍋パーティーをしたこともあった。バンドをやっている西荻仲間のライブに行くことも。行く先のバーや小さな飲食店の人とも知り合って どんどん西荻での私のつながりは拡大。

会社勤めの子もいれば、ダンサー、音楽活動をしているコ、フラワーデザイナー、料理人のコもいて職場とは違う多彩なメンツが刺激的だったな。

アリさん

西荻に住んで4年になる頃、フランスに行くことにした。その直前に古着屋さん仲間と夜中にラーメンを食べに行ったことがあった。飲みに行った帰りかな。そこに当日初めて会ったアリさんがいた。アリさんは確かイランから来ていて日本人の彼女さんと西荻に住んでいた。

ラーメンを食べている途中、少し席が離れていたアリさんが急に怒りだし、ビール瓶をお店の人に投げつけた。静まり返るカウンター。私たちは眠気も酔いも覚め、お店を後にした。
店を出た後、お店の人がアリさんに差別的な発言をしたと聞いた。

明け方の帰り道にアリさんは私に言った。

「あんたもフランスに行ったら こういう想いするよ」

当時は、「えー、そうかなぁ」そんなことはないだろうって気持ちでいた。自分が差別を受けるなんて想像できなかった。

あれから。当時の予想に反して 差別意識を感じてしまうことは、今 時々ある。あのアリさんの言葉は振り返ると 当時よりも深く響いてくる。

本のインタビュー

こんな私の西荻ライフが『上京』小林キユウさん著 のインタビュー集に載った。友人のつてで、インタビューを受けたもの。
当時の生活、淡路島出身であること、地球一周に参加。それから西アフリカのマリを3回訪問したこと。いろいろ話したけど、小林さんが面白いと感じてくれたのは、この西荻でのご近所づきあいだった。
ちょっと意外な気がした。だけど今思えば、東京に出てきてご近所づきあいをするとうことはかなり珍しい。今、東京と同じく大都市パリに20年住んでいるけど、いまだかつてご近所づきあいがあんな大人数に発展した経験はない。

街であそこまでつながることができた経験は、後にも先にも西荻だけ。飲食店の常連さん同士で仲良くなって、というようなことはあり得るかもしれないけれど、あんなに幅広く大人数にはならないんじゃないかと思う。

壮行パーティー

フランスに行くにあたって開いてもらった送別・壮行パーティーでは、会社の仲間1/3、西荻仲間1/3、学生当時の仲間と学生時代に地球一周した時の仲間が1/3ぐらいの割合。西荻仲間も大きなウェイトを占めていた。古着屋さんのオーナーさんは集まりの最後、 〆の挨拶をしてくれたな。

特別なネットワーク

会社の人間関係だけでなく、近所でも交流ができたおかげで、私の東京ライフの色彩は濃くなった。年齢、性別、職業、個性もバラバラな人たちと集まって話す。そこじゃなければ交流できなかった多くの人たち。会社の人たちと飲んで帰るのも楽しかったけど、また別の空気。西荻仲間は刹那的で、また違った世界にたくさん出会えた。仲間のライブやダンスのイベントにまで足を運んでいた。

私がこの特別なネットワークに身を置けたのは、西荻だったからという理由は大きい。でももっと大きいのはやはりオーナーさんの人柄。

気さくに声をかけてもらって、どんどんみんなを紹介。さらにお店の時間を離れてまで交流する。そのバイタリティーには敬意と感謝を今更ながら伝えたい。

そんなコミュニティーをが今作れるのかな、って思うと。今だったら私はお店に立ち寄らず、真っ直ぐ家に帰って SNSのタイムラインをなぞってるかも。

私が西荻を離れてすぐフランスに来る時、オーナーさんから みんなの寄せ書きとT-シャツを贈られた。お店オリジナルのT-シャツ。

そのT-シャツのプリントと手渡された時のオーナーさんの言葉。

I ♡ NO
(Nishi Ogi)

「NOと言える日本人、って意味も込めてね」

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