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私の父はビカソですが何か?


パリのピカソ美術館に行ってきた。
少し前からそのつもりだったのに先延ばしになってしまっていたのには大した理由はないのだけれど。 
ピカソの特別企画展には毎回必ず顔を出しているのだが、単に今回のタイトルにさほど興味がなかったからだと思う。

<マヤ=ルイズ・ピカソ パブロの娘>

そう、人を惹きつけるタイトルとは思えないような気がしたからだ。
ここでマヤがパブロ・ピカソの娘なのはわかりきったことだし、同じくパブロの娘だったらパロマなら宝飾デザイナーだからそちらの方が個人的には気になる。

なんだかんだ言いながら半日を展覧会観覧のためにあけることにした。
やはり後悔したくないからである。

開館は9時半であるが.、早めに家を出た。

ピカソ美術館の周辺は明るいイメージで、マレ地区と言ってものどかな雰囲気のするところである。

公園やらカフェやら、リール市名物のゴーフルを販売している<メール(Méert)>もすぐ近くにある。
以前はサン・ジェルマン・デ・プレにも店はあったのだが、今はマレ店のみになってしまったメール。

もう何年も前にリール市在住の友人にもらって以来虜になってしまったここのゴーフル。

要するに、ゴーフルサンドの事である。
中のクリームは数種類あり、私はピスタチオとグリオット(期間限定だったらごめんね。これ、本当に美味しいのよ)が好きだが、他にマダガスカルのヴァニラ等のクリームもある(これが定番かな?)。

デパートではボン・マルシェの食料品館、<グラン・デピスリー>で少々見かけるが、クリームのヴァリエーションは少ない。
でもこの間ミニサイズのヴァニラクリーム入りを半額売りしていたので容赦なく買い占めた。

ただし後からよくよく考えてみると、クリームは長持ちしないから早く食べないと味が落ちてしまって本当にお得かどうかわからないかな。

と、呟きながら一人で全部平らげた。


この辺りはメトロの最寄り駅がそう近くにはないけれど、逆にわざわざ買いに来る人のことを考えると、住人はメールのゴーフルに関しては取り敢えず恵まれているな。

などと余計なことを言いながら話を再び
ピカソに戻す。

美術館の建物自体は最初17世紀に建てられたのだが、その後ちょこちょこと持ち主が変わった。ピカソ美術館としてオープンしたのは1985年である。
果たしてこれがピカソのイメージに合うのかというと、一度中に入るとあの白い壁や、吹き抜けや、屋根裏がいかにもフランスの素敵な建築イメージで、目に焼き付いて離れない位魅力的だ。

展示スペースは基本的にシンブルで白いイメージであるが、ところどころ、例えば移動するときに扉が目の中に入ってくると、やはりここは邸宅なのだなあとつくづく思う。


さて、いつもの通り夢見る気分で、しかもやる気モリモリで見学を始める。

マヤの展覧会は二階にあった。
最初はマヤとピカソ、そして母親のマリー・テレーズのそれぞれの紹介。
知らなかったけれど出会ったときにマリー・テレーズが17歳でピカソが45歳。
さらに驚いたのが、ピカソがマリー・テレーズに向かって「君は面白い顔をしている。」といきなり言ったそうだ。

そこで個人的に思い出したのがモンマルトルの丘のテルトル広場(画家の集まる場所として有名)の手前で、いつも私と一緒にいる人はお客様にしても同僚にしても「お美しいですね。モデルになっていただけませんか?」と声をかけられるのに私には一度もない。

いや、一度だけあった。

それは私が一人で歩いていたので気を使ったのであろう。
何よりの証拠に、言葉の最後に「ハハッ。」と笑って誤魔化した。

そのほうがよほど失礼だわ。

と思ったが、後にも先にもそれっきりなのだ。
面白い顔のほうがよっぽど救われる、いや、それどころか展示作品の中にピカソが描いたマリー・テレーズのポートレートがあったが、

どちらもピカソ作のマリー・テレーズのポートレートである。
やはり<面白い顔>と言われたほうが魅力的に等しいなと思うのだけど、

貴方はどう思う?

マリー・テレーズとピカソはその後別れたが、その時8歳だった娘のマヤはピカソと長い時間を共に過ごしてきたそうだ。
頻繁にモデルをしたので、会場にも10点以上のマヤのポートレートが並んでいた。
 
ではそのうち3点ほどご披露しよう。

どれも1938〜39年頃の作品である。

そしてもう少し大人になったマヤ。

また、一階に展示されていた作品の中からの私の超お気に入りはこれである。

椅子の下でペロペロキャンディを舐めている子供。
モデルはマヤである。
あどけない子供らしさがよくでている。
色がついていないのに観る側は自分なりの色彩を想像しながらピカソの、またマヤの世界に吸い込まれていく。

ここで画家ピカソに関してテクニックなどを語る事はしないが、これらの作品には彼のよくあるスタイルである悲しみ、怒りなどがまったく見られず、私の目の前には明るく無邪気な、自然に包まれた一人の普通の少女が父親の方を見てはいないが、とても好きで信頼している様子が伝わってくる。
ここではピカソなりの愛情表現がそれぞれの作品の中に染み込んでくる。

展覧会の後半ではピカソのコートや靴など思い出の染みついた品を見ることが出来た。
マヤにとって、ピカソは画家として、また父親として親しく、また特別な存在だったのであろうな。

この特別企画展は2022年内いっぱいまで開催予定なので、その時までパリ滞在予定の人にはお勧め。
特に子供連れの方に、是非親御さんから色々と説明してあげると良いなと思った。

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