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懲戒処分の通知方法

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 最近は、手紙を書くことがすっかり減り、何か連絡をしようとするとメールやラインで、ということが増えてきました。

 ビジネスの場ではChatworkやSlackの利用を求められることもあり、連絡手段は次から次へと進化しています。

 そうした中、タカラジェンヌへの連絡(?)は、個人的な知り合いでなければ、基本的に「お手紙」です(「手紙」に「お」を付けるのも宝塚歌劇団)。

 ちょっとしたことを伝えたい時でも、お手紙を書かなくてはならないので、パソコンのキーボードや音声入力、スマホのフリックに慣れっこな現代人としては、結構ハードルが高いです。

 そして、我々法律家の世界でも、未だに書面を送付したりFAXで送信したり、ということが王道です。

 契約書にも「事前に書面をもって」なんて書かれていることが多く、「書面」にしなければならないことが多くあります。

 裁判所へのちょっとした連絡なら、メールで済ませたいところですが、上申書の提出を求められますし。

 そんなことで時間を大幅に取られている気がしてなりません。

 効率よりも正確性や確実性を優先している結果でしょう。

 さて、今日は、受取り方法で時々問題になる懲戒処分通知について簡単に説明します。

懲戒処分を伝える必要性

 懲戒処分は、会社が従業員に対して一定の不利益を与える会社の意思表示です。

 懲戒処分の対象となる従業員に、どのような懲戒処分を与えるのか、どの行為が懲戒処分の原因となったのか、などを明確に知らせる必要があります。

 意思表示は、相手方に到達しなければ効力を生じません。

 口に出して言わなければ思いは伝わらない、ってことですね!

通知の方法

 では、懲戒処分の通知は書面でしなければならないのでしょうか。

 法律では、「書面で」とは規定されていません。

 就業規則に「通知書により」などと規定されている場合は必ず通知書で行わなければなりませんので、終業規則の内容を確認しておくことが必要です。

 就業規則に定めがなければ、書面でも口頭でも、懲戒の意思表示が対象となる従業員に伝わればいいというのが法律ですが、実際の現場において、対象従業員のいつのどんな行為に対してどのような懲戒処分を下すのかを、書面なく口頭だけで正確に伝えることは結構難しいです。

 ですから、事前に作成した通知書を本人に交付するという方法が、確実で気楽です。

受領を拒否されたら

 ところが、懲戒処分に対して不満を持つ従業員の中には、懲戒処分通知書の受領を拒む強者がいます。

 また、会社から行方をくらましてしまったり、出勤せずに自宅に閉じこもったままの従業員に対しても、懲戒処分通知書の郵送による交付は困難を伴うことが多々あります。

 面談の際に渡そうと思っていたのに受取りを拒否されたら、その場で読み上げて伝える方法もあります。

 その場合は、後で通知書を自宅に郵送しておきましょう。郵送する通知書には、いつどこで交付受取を拒絶されたかのメモを書き加えておくと良いでしょう。

 自宅に通知書を送る際には、書留郵便や特定記録郵便を利用して、対象従業員に配達されたかどうかを確認できるようにしておくのが望ましいのですが、受取りを拒否されて郵便物が戻ってくることもあります。

 その場合は、配達物が戻ってきたことを書いた手紙を添えて、普通郵便で送ったり、懲戒処分通知書を添付した電子メールやLINEを送るしかないでしょう。

内容が大切

 懲戒処分通知書は、交付の方法も問題ですが、書いてある内容がトラブルのもとになることも少なくありません。

 せっかく苦労して交付したのに、内容が不十分だったために懲戒処分が無効に・・・なんていうことにもなりかねません。

 対象従業員のどんな行為が(いつどこで誰が何をどのようにしたか)、就業規則の何条に違反していて、就業規則の何条に記載されたどのような懲戒処分を下すのか、を明確にした通知書を作成するようにしましょう。

 懲戒処分通知書の詳しい書き方については、また後日、機会があれば。

 懲戒処分は会社にとっては苦渋の決断でしょうから、その意思表示が正確に確実に対象従業員に届くよう、十分な注意を払うようにしましょう。




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