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パタハラ

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 今年の10月の育児介護休業法改正により、出生時育児休業の制度が創設され、男性が産後の育児休業を分割して取得できるようになります。

 しかし、実際には、従業員全員がその制度の存在を知らない会社もあるでしょうし、そもそも、経営者が知らないという会社もあるのではないかと思います。

 育休の必要な本人自身が制度を知らなければその制度を利用することはできません。

 経営者も知らなければ、制度の利用を従業員に促すことはできませんし、制度の説明もできませんので、まずは経営者本人が制度の概要を知った上で、従業員にその制度の存在を知らせるようにしましょう。

 中には、仕事を休ませるような制度の存在をわざわざ知らせる必要はないと考える経営者もいるかもしれません。

 しかし、今年4月1日から、事業主には以下の措置を講じることが義務づけられています(その他にも事業主にはいろいろな措置を講じることが義務づけられています(育児介護休業法第9章))。

① 育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置
② 妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置

 この義務に違反した場合には、厚生労働大臣から、報告を求められ、助言、指導または勧告を受け、それでもそれに従わなければ、その旨を公表されることになりますので注意が必要です(育児介護休業法56条の2)。

 今回の法改正により、今後、男性従業員から育児休業の申出が増えることが予測されますので、会社はこの申告を受けたら誠実に対応することが求められます。

 育休を取ろうとする男性従業員に対するハラスメントは、パタニティハラスメント(略して『パタハラ』)と呼ばれます。

 どういう名前のハラスメントであるかはそんなに重要なことではないので覚える必要はないのですが、男性が育休を取ろうとすることに対して嫌みな発言をしたり、育休の取得を理由に不利益な扱いをしたりすることは、違法ですので、その点は注意する必要があります。

 男性が育児休業を取得することができないと、そのしわ寄せが妻の方に寄ってくるかもしれず、結局、子育てをしにくい社会を助長していることになります。

 ただし、全ての女性が夫の育児休業を望んでいるわけではなく、また、休業してくれてもいいけど時期的には産後直後ではなく半年くらいしてから、と考えている女性も少なくないと聞きます。

 育児休業の申出を受けたときは、会社の人員配置や業務遂行に頭を悩ませることにはなるでしょうが、それも人事の必要不可欠な仕事であると割り切って、従業員全員の協力の下、本人やその家族の意向に沿える方法で気持ち良く育児に励んでもらえるようにしましょう。

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