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ビジネス上の人権リスクを予防するために会社ができること~その2

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 さて、今日は昨日に続き、ビジネス上の人権リスクを予防するために、会社は何ができるか、を考えます。

 昨日は、経営者が人権に対する意識を高く持ち、従業員の人権に関する知識を増やし、人権問題に気づくことが大切であること、それが会社の風土を構成し、人権リスクを減らすことができることを書きました。

 会社を構成する人達のマインドセットができたところで、今度は会社の制度を整える必要があります。
 今日は、その点について書きます。

方針と規程の整備

 まず、制度を整えるに当たっては、みんなが寄って立つ柱となるものを作ることが必要です。

 それが、会社の「方針」と様々な「規程」です。

 方針には、会社が人権を尊重するものであることを明確に示します。

 規程は、従業員が行動する際に従うべきルールですが、規程があることによって、経営者や管理職が恣意的独善的になることを予防することができます。
 結果として、弱い者に対する人権侵害を予防することができます。

社内慣習の見直し

 慣習には、良いものと悪いものとがあります。

 人権リスクとなるかどうかという観点で、今ある社内の慣習が良いものか悪いものか見直してみましょう。

 ただ、自分の会社のことは主観的に見てしまうため、真の問題点に気づきにくいことがあります。

 会社の中に、同じようなカテゴリーに属する人たちしかいない時は特に気づきにくくなってしまいます。
 例えば、会社の経営陣が全員中年男性だとすると、若い子育て世代や、女性や性的マイノリティなどの気持ちを無視した慣習ができあがっていても、その問題点に全く気づかない可能性があります。

 今、ダイバーシティが強く求められているのは、そういう問題点に気づく必要性に迫られているからです。

建物の構造

 物理的な人権侵害の可能性があるものもあります。

 例えば、昔から男性従業員の多い業界においても、最近では女性の働き手が増えてきていますが、女性トイレを設置していなかったので、急遽、これまで男性用として使っていたトイレを女性トイレにした、というような事業場があります。
 元々男性トイレだったため女性の使える個室の数が少なく、また、事業場内に1カ所しかないため移動に時間がかかるなど、女性従業員はトイレに行くだけで大変な思いをしなければなりません。

 また、エレベーターが設置されていない事業場では、車いすの従業員の移動の範囲は限定的になってしまいます。

 建物を改築するには時間もお金もかかりますから、そう簡単に根本的な改善をすることはできませんが、誰かが辛い思いをしている可能性に配慮しつつ、中長期的に改善を加えていくようにしましょう。

人事制度

 人事は、不当な差別が如実に表れる一場面です。

 裁判においても、人事上の差別的な取扱いは大きな問題となります。

 故意に差別をした場合だけでなく、無意識にした人事が古い価値観に基づく差別的なものであった、ということもありますから、できるだけ透明性のある公平な手続を整備しておきましょう。


 これらの制度整備以外にも、それぞれの会社ごとに工夫できることはたくさんあるはずです。
 社内でよく考えて、少しずつ改善していくようにしましょう。

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