代替休暇の与え方

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 やるべきことがたくさんあって、休んでいる場合じゃない毎日を過ごしていますが、先日、子供にねだられて半日公園で遊びました。

 遊んでしまうと時間がなくなって大変になるかと思いきや、それまで溜まりに溜まっていたストレスが軽くなるのを実感でき、翌日からの仕事の効率が格段に上がりました。

 この年齢になってもそんな状態で、自分コントロールがなかなかできないのです・・・救済してくれた子供と友人に感謝です。

 人間は生身なので、時々は心身のメンテのために休暇が必要だっていうことを実感しました。

代替休暇

 労働基準法には、「代替休暇」の規定があります(労働基準法第37条3項)。

 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第39条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。

 そもそも、時間外労働に対しては割増賃金を支払わなければなりませんが、その割増率は、次のとおりです。

① 時間外労働の時間が1か月合計60時間まで 
 ⇒ 0.25%以上の率

② 午後10時から午前5時までの深夜労働 
 ⇒ 0.25%以上の率

③ 時間外労働の時間が1か月合計60時間超の場合の60時間超の部分 
 ⇒ 0.5%以上

④ 休日労働 
 ⇒ 0.35%以上の率

 このうち③の時間外労働の場合に、通常の時間外労働(①)の月60時間を超える割増率の部分に対しては、割増賃金を支払う代わりに、通常の賃金を支払いつつ休暇を与えることができます。

 その休暇のことを代替休暇と呼びます。

 たくさん働いてくれたので休んでください、その間の給料も払いますよ、という制度ですね。

 有給休暇とは別の休暇として与えることになります。

 なお、中小事業主については、60時間超の場合の5割の割増賃金支払義務は2023年4月1日からスタートします。

労使協定

 代替休暇の制度を使うためには、事業場の過半数組織組合または過半数代表者との労使協定が必要です。

 労使協定においては、以下の事項を定めなければなりません(労働基準法施行規則19条の2)。

① 代替休暇として与えることができる時間の時間数の算定方法
② 代替休暇の単位(1日又は半日(代替休暇以外の通常の労働時間の賃金が支払われる休暇と合わせて与えることができる旨を定めた場合においては、当該休暇と合わせた1日又は半日を含む。)とする。)
③ 代替休暇を与えることができる期間(延長して労働させた時間が1か月について60時間を超えた当該1か月の末日の翌日から2か月以内とする。)

 代替休暇の時間数の算定方法(上記①)は、以下の算式によります。

【60時間超の時間数】×(【代替休暇を取得しない場合の割増賃金の率】-【代替休暇を取得した場合の割増賃金の率】)

 例えば、1か月60時間までの割増率が25%、60時間超の割増率が50%と定められている場合に、月80時間の時間外労働をした場合には、以下の計算式に基づき5時間を代替休暇として取得することができます。

 (80時間-60時間)×(50%-25%)=5時間

代替休暇の取得を命じることはできない

 代替休暇を取得するかどうかは、労働者の判断です(平21・5・29基発0529001号)。

 したがって、使用者が、代替休暇の取得を命ずることはできません。

 基本的には、労働者が代替休暇を取得するかどうか、取得するとしていつ取得するか、を自分で決めることができることになります。

 ただし、就業規則で、「労働者の意向を聴取した上で代替休暇を指定する」と定める場合には、そのような定めも有効と考えられています。

リフレッシュが必要

 中には、休暇よりも時間外手当を支払って欲しい、という労働者もいます。

 しかし、休みのない働き方は、長くは続きません。長く続いたとしても、健康を害することになりかねません。

 短期的に残業代をたくさんもらったとしても、健康を害してしまえば、将来的には大きな損失を被ることになります。

 その損失は、当該労働者一人の問題ではなく、会社にとっても大きな問題です。

 従業員と共に末長く発展していくことを目指し、代替休暇を積極的に運用するようにしましょう。



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