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二度あることは、三度ある? ラッキーは、3日目続いたのか?

水曜日木曜日と、2日連続で、東京方面への長距離のお客をお乗せしたのだが、さて、3日目の花の金曜日、再び長距離のお客をお乗せすることは、出来たのか?

ニ度あることは三度あると言うし、私は、内心3日目のラッキーがあるんじゃないかと期待した。

私は、いつものように、夜7時に近くの駅に付けて、乗客を待った。
もしかしたら、前日のように、遠くに行くお客が乗ってくれるかもしれない。
しかし、タクシーの列は、殆ど動かない。
金曜日ということもあって、いつもより、たくさんのタクシーが出ているようだ。
乗って頂けるお客さんもまばらだ。

30分くらい待って、ようやく最初のお客が乗車してくれた。
目的地までお送りし、時計を見る。
7時40分。
うむむ。
残念ながら、このペースでは、売り上げは上がらない。

私は、駅付けをやめにして、鎌倉街道を関内へ向かった。

タクシーは、流しが基本だ。駅付けばかりを繰り返すと、だんだん、それに慣れて、それしか出来なくなる。
心と体がなまって来るのだ。
私は、自戒をこめて、今夜は流そうと思った。

上大岡から阪東橋へ。
長者町。
曙町。
関内。
馬車道。
桜木町。
横浜駅東口。
新しく出来た「Kアリーナ」。
みなとみらい。
ランドマークタワー。
大観覧車とコスモワールド。
ハンマーヘッド。
赤レンガ倉庫。
大さん橋。
中華街。
元町。
横浜スタジアム。
野毛。

私は、お客がいそうな場所を、ぐるぐると回ってみた。
繁華街、観光スポットは、競合のタクシーも多いが、それでも、街角で手が上がった。短い時間で、5組、10組と乗って頂いた。

普段、駅付けばかりをやっているので、錆びついた頭と体がほぐれるのを感じる。

売り上げは、少しずつ伸びて、夜1時半までに、25,000円を達成した。
目標の30,000円まで、もう少し。

私は、コンビニで休憩を取った。
いつものどら焼きとコーヒー。
私は、甘いものが好きだ。
1日1回、どら焼きを食べないと、心が満たされない。
しかし、食べ過ぎると太るので、1日1個と決めている。
私は、甘いつぶあんとカステラ生地を堪能すると、再び仕事に戻った。

私は、その後、長者町から、男性客をお乗せした。
相当酔っているらしく、「磯子駅」と言っただけで、そのまま寝てしまった。

私は、嫌な予感がした。
これだけ酔っていると、目的地に着いても、起きてもらえない時がある。
後ろを振り返ると、お客は、いつの間にか横になり、いびきをかいて寝ている。

まずい。

目的地に到着して、私は、乗客に声をかけた。
「お客さん、着きましたよ。お客さん」
私の声に、お客は全く起きない。
私は、何度も大きな声で呼びかけた。
「お客さーん。着きましたよ!! 起きてください!! お客さーん!!」
お客は、完全に熟睡しており、動かない。
それどころか、後部座席に、体を投げ出して、さらに大きないびきをかいている。
私は、ひたすらお客を起こし続けた。
10分くらい声をかけただろうか。
お客の反応はない。

私は、仕方なく警察を呼ぶことにした。
タクシー運転手は、乗客の体に触れて起こしてはいけない。
トラブル回避のためだ。
携帯で110番すると、15分くらいでバイクの警察官が二人来てくれた。
私は、事情を説明した。
すると、警察官の一人が、後部ドアを開いて、乗客に声をかけてくれた。
「ご主人、着いたよ。起きて」
お客は、なかなか起きなかった。
警察官も、しびれを切らして、大きな声で、体をゆすった。
そして、何度目かの問いかけに、お客は、やっと目を開けた。
お客も、目の前に、警察官がいたので、びっくりしたようだ。
「な、なに?」
「運転手さん、困ってるよ。起きてください」
「えっ?」
「着きましたよ。場所はここでいいですか?」
お客は、上体を起こして、周りを見回した。そして、しばらくして、やっと状況が飲み込めたように「あ、ここです。はい」と言った。
その後、代金を支払い、降りて行った。

私は、来てくれた警察官に、
「どうもすみませんでした。ご迷惑をおかけいたしました」と謝った。
警察官も、「運転手さんも大変だね」と言って、バイクで走って行った。

私は、ほっとした。
警察官が来て起こしてくれたおかげで、トラブルにならず料金も頂けた。

酔ったお客の中には、警察官を呼んだことに激怒して暴れだす人もいる。
今まで、何度か、そんな目に遭った。
そして私は、何度も警察の人に助けてもらった。

時計を見ると、夜中の3時を過ぎていた。
売り上げは29,000円。
30,000円に届いていなかったが、帰ることにした。
本来なら、ねばらなければいけないところだか、明け方まで仕事をすると、間違いなく、体に悪い。
40代50代の頃は、朝6時までやっていたが、50代後半になって、体を壊した。
血圧が急上昇して、家で倒れたのである。
天上がグルグル回り、このまま死ぬんじゃないかと思った。
私は、翌日、病院へ行き、高血圧症だと言われた。
それ以来、健康の管理には、十分気をつけるようになった。
薬も、毎日服用している。
明日も乗務なので、無理はしたくない。

最初の話に戻ろう。

結局、3日目の長距離ラッキーはなかった。
自分では、結構走ったし、頑張ったと思うが、大きな当たりはなかった。
仕方がない。
うまくいく時もあれば、いかない時もある。
人生は、そんなことの繰り返しだ。
大事なのは、タクシーの仕事を続けること。
そして、健康で生きていくこと。

いずれにしても、乗っていただいたお客さんと、無事に帰って来れたこと、そして、相棒の車に感謝して仕事を終えた。

ありがとうございました。





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