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問題行動の芽の見つけ方

いわゆる犬の問題行動ってなんでしょうか?

・不適切な場所でのマーキング・排泄
・チャイムが鳴ったら吠える
・見知らぬ人を怖がる
・他の犬に吠える、咬む
・コードを噛んで壊しちゃう・・・

実は犬の問題行動というのは、若年期から目立ってきます。若年期とは4か月目位~1歳になるくらいまでの間ですね。なぜ、この頃に問題行動が増えてくるのでしょうか?そもそもなんで問題行動が発生するのか、そのメカニズムを考えてみたいと思います。


1.問題行動の理由①:生得的なもの

犬というのは、人間により家畜化されてきた動物です。使役犬としての歴史が長い犬は特に人間の好む特長が交配を通じて強化されています。例えば狩りにおいて、ダックスフンドは、吠えて獲物を追い立てる役割でした。ダックスフンドは「吠える」のが仕事で、この行動を強化するように交配が重ねられてきています。しかし一方で、現代社会において、「吠える」というのは問題行動になりますね。こういったある特定の犬種に特徴的な行動を「犬種特性」と呼びます。パピーの時はこういう犬種特性の行動が出ていなくとも、若年期から徐々にこの行動量は増えていくんです。そうすると、飼い主さんは小さい頃はおとなしかったのに、急に吠えるようになった・・・なんて感じるのです。

また、犬種特性に限らずどんな犬種でも、「噛む」「吠える」「マーキング」するというのは犬にとっての正常行動です。食糞ですら、犬にとっての正常行動です。つまり、どんな犬だろうと、人間からすると問題行動の種となる欲求は持っているわけで、きちんと飼い主が予防をしていかないと、この問題行動がいつ発生するかは単純な時間の問題というわけです。


2.問題行動の理由②:性成熟によるもの

特にオスだとわかりやすいかもしれませんが、未去勢の犬の場合マーキングや縄張り意識が強く出始めるのが、この若年期です。ちょうど性成熟のタイミングになり、テストステロンが分泌し始めます。このテストステロンにより攻撃性が高まったり、今まではマーキングしていなかったのに、マーキング癖が出てきたり、問題行動が増えてくることがあります。メスも同様に性成熟の時期を迎えるとヒートが始まります。ヒートの前は攻撃性が高まりやすくなる傾向があります。

これはワンちゃんが悪いわけではありませんね。自然の摂理です。若年期は人間でいうところの思春期です。ホルモンバランスが変わり、行動パターンが変わってくる時期です。こういった時期に起こりやすいトラブルを防ぐためには、避妊・去勢をすることも一つの手段です。6,7か月目の手術が推奨されるのもこの行動学上の背景があります。ホルモンが分泌され始めて、マーキング行動が習慣化してしまうと、これは生理的欲求だけではなく、学習された行動に変わっていきます。そのあと去勢を行っても、学習された行動をなくしていくのは容易ではありません。


3.問題行動の理由③:成長した、大きくなっただけ

これが一番ワンちゃんにとっては理不尽ですが、よくある相談なんです。子犬のころ、飼い主さんに飛びつく仕草があると、かわいいですよね。甘噛みも大して傷にはなりません。が、体が成長し、顎の力が強くなるとどうでしょう?一歩間違えると大事故につながりかねません。犬からすると、今までは問題とされなかったのに、なぜかいつの間にか飼い主さんが嫌がる行動に変わっているのです。特に大型犬や噛む力が強いテリアや闘犬では顕著です。つまり、どんなに小さな子犬であっても、人を咬んではいけないし、飛びついてはいけないというのを最初から教えてあげないといけないんです。


4.問題行動の理由④:飼い主が学習をさせている!?

実は問題行動の中には飼い主さんが原因というケースも多いんです。例えばお腹がすいたときに吠える犬がいたとします。これをどうにかしようと、飼い主は餌を与えますよね。すると「吠える=ごはんがもらえる」という学習を犬がしていきます。欲しいものがあったり、おねだりしたいときに吠えるなんていう癖がついてしまいます。また、後ろから忍び寄って犬を驚かし、その驚いた顔がかわいくて仕方ないなんて飼い主さんもいたりします。するとどうでしょう、犬は後ろから忍び寄られるときにいつも嫌な思いをするので、警戒心が強くなり、吠えたり噛みつく仕草を見せたりするようになってきます。

飼い主さんのなんてことない仕草やいつもの習慣が原因になっている場合、犬の問題ではありませんよね。飼い主側がこの習慣を止める必要があります。ちょうど若年期というのはこういった行動の学習が進む時期でもありますので、誤った学習は消去の手順を取っていくことをお勧めします。


5.問題行動の理由⑤:犬が勝手に学習をしている

チャイムが鳴ったら吠えるなんていう行動は典型的な問題行動の一つですが、これは「チャイムが鳴った→知らない人が自分の縄張りにはいってくる→吠えて追い払おう」とする行動です。用事がすんだら来訪者は返っていきますが、犬は「追い払うことができた!」という成功体験を積み重ねていたりします。その結果、チャイムが鳴ったら吠えるという行動が強化されてしまうんですね。行動が強化されるときは、必ず犬にとっての「ご褒美」が結果として存在しています。犬にとって「嫌なこと」が起こるのであれば、その行動は減っていくのです。この原理を理解したうえで、犬にとってどんなご褒美があるのか、ということを考えていくと、問題行動を減らしていくことができます。


6.まとめ

こうしてみていくと、若年期に問題行動が増えてくるのはとても自然なことですよね。ただ、問題行動というのは一度発症すると完治はできません。問題行動の頻度と程度を下げる一生涯の行動修正プログラムが必要になり、非常に根気がいります。。。ですので、予防がとっても大事です。問題行動の種を見つけたら、それがどうして発生しているのかということを考え、それ以上学習が進まないようにする。子犬のころからしつけをちゃんとする、というのが非常に重要なんですよ!




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