見出し画像

オオカミから進化してきた犬とは?

オオカミから犬が進化してきたというのは皆さんご存知だと思いますが、どのように人間と一緒に生活するまでになってきたのでしょうか?今日はその歴史をご紹介したいと思います。


犬の家畜化

オオカミから犬に進化したと聞くと、どうやって、オオカミを飼いならしたのだろう、と「人類の偉大さ」に思いをはせてしまいますが、実は逆で、「人懐っこい犬」が人間と共存し始めたと考えられています。つまり

・まだ小さいオオカミを人間が拾って、狩りを仕込んで、人間の狩猟をサポートさせた
・狩猟の得意なオオカミを人間が慣れさせて、家畜化してきた

というのではなく

・人間をさほど恐れないオオカミが人間の集落のごみ箱をあさり始めた
・人間と暮らすほうが食料にありつける可能性が高いため、犬が人間とともに暮らし始めた

という説が有力になってきています。

約3万年ほど前に、中国でオオカミから犬に進化し、その進化には数千年かけてきたと考えられています(諸説あります)。近年、犬と狩人がともに描かれた壁画や、犬と一緒に埋葬された人間の墓が見つかっており、古代の人類にとっても、重要なパートナーであったことがわかります。


オオカミとの違い

オオカミの身体的・行動的特徴は自然による淘汰の結果、獲得された資質ですが、犬への進化の過程で人間の手による選択的交配が行われたと考えられています。

つまり、人間に慣れやすい、指示を聞きやすい、そんなオオカミ同士を掛け合わせて、より人間に従順でよいパートナーとなる「犬」を作り上げてきました。(野生のオオカミと人間は共存できないですものね・・・)

その結果、なんと見た目も丸みを帯び、人間が「かわいい」と感じるようになったんですよ!

この現象は「幼形成熟」といわれます。

ロシアの生物学者ドミトリー・ベリャーエフが発表した研究結果で、「人への従順性は、犬の見た目の特徴に影響する」ということがわかっています。巻いた尾、たれ耳、マズルが短い、目が少し離れている、こういった特徴がある犬ほど従順性が高いといわれているんですね。この実験では犬が数千年かけて進化した幼形成熟の身体的特徴を、数十年でキツネが獲得できたことを示しています。


幼形成熟

この幼形成熟は見た目だけでなく、行動や意識にも影響を及ぼしており、犬は、大人のオオカミではなく、子どものオオカミの行動特徴を強く残しています。例えば、

・恐怖心が少なく、好奇心がたっぷり
・縄張り意識が低い
・遊び行動が多い
・親からのケアや食べ物をねだる行動

などは、成熟したオオカミの個体ではあまり見られない行動です。(オオカミは非常に警戒心が強く、遊ぶよりストイックに狩りをする印象ありませんか?)

このような気質をもっていることも、人間に懐きやすい、共生しやすい一因となったのでしょう。


人間の手による交配の結果

人間の手による交配はヴィクトリア朝以降、特にヨーロッパで盛んになり、今ある犬種のうち400種ほどが確立されたといわれています。この頃には、犬種ごとに使役目的が明確になり、その役立つ資質を強化するよう交配を進めていました。例えば

ダックスフント
役割:穴の中の獲物を吠えて追い出す
強化された資質:足を短くし、吠えるという行動が強化されている

チャイニーズ・へアレスドッグ
役割:湯たんぽのように寝床で飼い主を温める
強化された資質:ノミやダニがつかないよう、体に毛が無い

アメリカン・ピット・ブル・テリア
役割:牛を襲う闘犬(19世紀のイギリスで流行った娯楽)
強化された資質:筋肉質な体形で、噛む力が非常に強い。攻撃性も強い。

というように、見た目も性格も行動も、いろんな面で改良されているのです。

Tip
しかし近年はドッグショーなどで、「この犬種はこういう形であること」という外見上の犬種標準がエスカレートし、遺伝的疾患につながりやすくなってきています。

ジャーマン・シェパード・ドッグは、腰の位置を低いほうが美しいとされ、膝関節が外に曲がってしまったり、ダックスフントは、体重が増えすぎると立てなくなってしまったり、短頭種のパグなどはは興奮が高まると、気管に軟口蓋が詰まって酸欠を起こしたり、夏場の呼吸が他の犬に比べると困難になりやすくなったり、、、などの疾患を起こすことがあります。

また、見た目をよくするために手術を行うこともありますよね。断尾や耳を切って立たせたり。もちろんドッグショーに犬を出すのであればよいと思いますが、一度犬のウェルフェアも考えたうえで、本当に必要か考えていただければと思います(なんといっても痛いですからね!)


ついつい、人間が犬という種を作ってきたと思いがちですが、それは近年のことで、実は犬が人間を選んできた、という歴史的背景があります。

犬が人間を好きなのは、実はDNAに刻まれているのかもしれません。また、そんな犬をかわいい、好ましい、と思う人間の感情も、同じくDNAに刻まれているのかもしれませんね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?