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改憲の賛成・反対の前にできること

期日前投票と確定申告後は必ずケーキを食べます。
(今回も7/2に済ませました。)
これから憲法改正の議論が始まると思います。
そこで、政治学専攻の端くれとして、

  • 世界情勢と現代の人権から、改憲が0100かで話せない理由

  • 公民の点数悪かった人も大丈夫な本で学ぼうという話

を手短に紹介します。
同じように体系的&フラットに法学や政治学を学んだ仲間は、おすすめの本を「主観や批判を交えず」「ハードル感を出さず」シェアして欲しいです。
言いたいことはあるけど、今は分断より情報へのアクセスを重視しましょう。

改憲の話が0か100かではないのはなぜか

憲法は、「国家権力の個人に対する影響力を制限する」目的があります。 なぜなら、国家権力は無限に強くなれるのに案外責任の所在がなく歯止めが効かないから。
例えば、痛みを伴わない人達の多数決で暴走したり、少数で意思決定し対象外の人を家畜同然に扱うことも可能です。(前者は日本、後者はドイツ)
完璧ではないなりに、国家の暴走を抑止しようという機能の一つが憲法であり、国民=主権者、害してはいけない=基本的人権と置くのは「人の権利と生命なんざ簡単に少人数の多数決で害せるから」です。誰も無関係ではありません。

それでも、昨今の情勢と現代社会の人権から争点になる部分があるから改憲の話が出ています。そのため「触っていいもの」「触ってはいけないもの」の判断が必要です。
わかりやすい形で3つの問いを書いてみます。
話の通じない国に「侵略されそうな状況でどう専守防衛」する?少ない人口で対応すると?
「人権」は「家父長制の家族単位を営む者のみ」のもの?それを全員に当てはめるとどうなる?
「主権者」は国民、国家どっち?「国家のための国民」って?それが実生活になると?
こういう感じでいったん「素朴な疑問」の形にブレイクダウンして、自分たちの生活に当てはめた問いにしてみると、100%賛成!全部絶対に反対!に至れない理由が見えてきます。

①は仮にスイスをお手本に老若男女問わない徴兵にして防衛しても色々欠けてるぞ、②は現代社会の構成員に私たち単身者もLGBTQ+も日本で働く外国人もいるし権利が欠けてる部分あるぞ、③は主従逆転したら私たちはどんな税制も受け入れなきゃいけなくなるし国家って誰がやるの?と、「私」を主語にして想像をすると具体的な適用イメージが浮かんでくると思います。
国家とか社会とかデカイものを主語で話すと「あるべき論」「世間体」「内輪の論理」でブレていくので、あくまで「私」で考え直すと理解しやすくなります。

そのプロセスを経てから、自分の幸せと世の中の幸せのリンクポイントを探ります。逆はイデオロギーの麻薬にハマる危険があるのでいったんやめます。
そのようにして、絶対改憲反対!でも絶対改憲!でもない、「私が生きていくうえで、触って欲しくない部分はこれ」「社会に必要なのはきっとこれ」を見つけ、自分の意見と意思決定につなげるのが憲法を理解する第一歩です。
「素朴な疑問」にブレイクダウンし、「私」を主語にしてみることで、ちゃんと腹落ちできます。

おすすめは「いちばんやさしい憲法入門」(有斐閣アルマ>interest)

公民の勉強嫌いだったから、わかりやすいことがいい!○○さんの意見を聞いておけばいいじゃん!という人は多いと思います。
それが原因で身近な人と分断したのがアメリカで、より人口密度の高い国の人としてはもっと踏み止まりたいところです。(隣の人と喧嘩するの地獄ですよね)

そんな時、ページ数も少なく1つの小説みたいにサラッと読めておすすめなのが、この有斐閣さんの本です。

この本は法学や政治学を体系的に学んだ人なら、入門期に見たことがある一冊。
有斐閣さんは学術書で定評ある出版社さんです。
大学の授業で入門編として採択されるような学術書は基本的に出典を明記し、公平性や客観性を厳密に扱い、極力フラットな理解をしやすいよう作られています。

極力フラットに知るというのは、切り取り動画やエモーショナルで分かりやすいものがたくさん出ている社会では、とても貴重な機会です。

また、憲法を「押しつけ憲法」と100%GHQ草案だったと感じている方は、GHQが考えを変えるに至った日本人草案の背景の人たち、植木枝盛、鈴木安蔵について調べるのもおすすめです。

戦前戦後の法曹界で良心を持つ人達は、足尾銅山の公害に心を痛め、福祉国家を望んでいた人たちも多かったです。
戦争という失敗から学び、福祉国家を目指した人達が作ったものと知ってから改めて日本国憲法の前文を読むと、印象は大きく変わるはずです。

完璧ではないなりに、国家の暴走を抑止しようという機能の一つが憲法」と述べたのは、ハックする奴はいつの時代も登場するからです。
ワイマール憲法下で政権に就いたナチスは、熱狂を作るプロ。ドイツの大衆はユダヤ人をガス室に送るのも「必要悪」と熱狂し後押ししていました。
短絡的に考え行動することは、極端に言えば、このナチスを熱狂的に支持し戦後は手の平を返して生きた人と同じになってしまうんですね。絶対改憲も絶対反対も雰囲気とノリで決めるのは怖いことです。

いろんな意見があるからこそ、まずはフラットに学んでみる人が増えてくれるよう願って、これを書きました。

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