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1日1建築 ⑭ 「福建土楼」

✅ 福建土楼

中国 / 福建省


✅ 特徴

 福建土楼とは、中国福建省南西部の山岳地域にある、客家その他の人々による独特の版築(土を建材に用い強く突き固める方法)建築物であり、地形、風土、文化や材料から生み出されたヴァナキュラー建築の代表格である。1419年に建てられた。この建物は武装した盗賊集団からの侵入を防ぐ、城のような役割を果たし、通常、外部立ち入り禁止である。

 福建土楼は、中国の伝統的住居の「外に閉じ内に開く」概念に従って設計されている。つまり一般的に、中央に中庭を置き、居室の壁を周囲に巡らす。中央の前開きの小さな土楼は祖廟として、祖先崇拝、祭祀、会議、結婚式、葬式など公式の機能を果たす。


 壁は中央に向けて建設されることで、自然の重力で壁を支えあうように造られている。この内側に傾斜させる方法は、応県木塔の建設にも見られるものである。土楼の壁の厚みは、『営造方式』にもあるように、高さに従って減少する。土楼の下2階分の壁には窓も狭間もなく、窓は3階から5階だけに開けられる。そのため低階層の部屋は家族の保管庫として使われ、上階層が居室として使われた。


 同心円状に2棟の円形土楼が建てられており、外側は4階建てで、それぞれの階に53部屋ずつが作られている。階段は72か所ある。内側は1階建てである。


 土楼は、土の地面に2段から3段、石を敷き詰めて舗装したものを基礎として建設される。一番上の段の基盤に丸く排水溝が作られ、雨水が土楼の壁を損ねるのを防ぐ。


 ほとんどの場合、土楼の外壁は2つの階層からなる。下の階層は、切り出した石のブロックや、川の玉石と石灰、砂、粘土を混ぜたものを1メートルから2メートル積み上げて造られる。これは、この地域の洪水の水位を考慮した高さである。

石の階層の上に、押し固められた土壁が積み重ねられる。粘着性の高いコメを混ぜた土を押し固め、竹の棒で水平方向に補強する、という土壁の建設法に関する最初の記述が、宋代の標準的建築法の本『営造方式』に残されている。


 今日では、新しくてより現代的な施設の備わった住宅が、中国の地方にも建設されている。多くの居住者がより現代的な家を購入して土楼を出て行き、あるいはより大きな街に出てより良い仕事を得ようとしている。しかし彼らはまた、先祖伝来の土楼には鍵をかけ、祭祀の時などだけ土楼に戻ってきて、離散した一族が再会する。

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