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勝手にチャレンジ1000 00102 家猫ネオちゃん

 ネオは私のベッドに潜り込むか私の上に乗るかして一緒に寝る。密着しなくなったら、春だなーとか、寄らなくなったら、夏だなーとか、感じる。蜜月的な私たちの夜に水を差すのはくりのすけの鳴き声だ。くりが鳴き始めると、私がなだめたり叱ったりしに、くりが寝ている居間に行く(と言っても、襖一枚隔てた隣の部屋)ので、ネオもニャッと短く鳴いて起き上がる。にゃんだよー、こどもー。はいはい、いってらっしゃい、みたいな感じだ。そして、くりを静かにさせて、また、寝室に戻り一緒に寝たり、もう起きたからごはん食べる、お腹空いた、というときはエサをやって私だけ二度寝する。

 ネオは完全室内飼いだ。うちにきたときから、ほぼ外に出していない。三階建ての大きなケージに入っているか、家の中のどこかにいる。外に出そうと思って、猫用のヒモ(ハーネス)をつけてみたら、それだけでフリーズ。パタン、と、横倒しになって1ミリも動かなかった。ヒモ無しのフリーの状態で外に出すのはネオのためにも、私たちのためにも危険すぎるので、外に出すのは諦めた。

 そんなネオもうちに来て間もない頃、外に出てしまって探しまわったこともある。何度かあったが、なぜか同じところで見つかった。居間からピョン、っと出て、ガサガサっと植え込みを潜り、木の裏側にぽこっとあいてる出窓の下の空間に行く。昔、庭を掃除したときのがらくたやものほしざお、壊れたガラスなんかもまとめてあって(ごみ屋敷の兆し!)危ない所なのだけど、遠くに行かず、無事見つかってほっとした。でも、どうしてそこなのか?生まれたところ、少しの間だけどお母さんや兄弟といたところに似ているのかな、と、勝手に想像した。

 さて、くりのすけのせいでなにかと騒々しくなって、ネオの静かな生活も乱され、私たちの関心も分散している近ごろ、くりを庭に出したときに庭に出るサッシを開けっぱなししにしていたら、いつの間にかネオもついて外に出ていた、ということがあった。1度目はネオも出てきたのに気付いて、慌てて、家のなかに入れてサッシを閉めたが、二度目はネオがついてきてるのに気付かず、くりのすけを入れて、ガラスの戸を閉めたところ、振り返ると、ガラスの前にネオが座って、開けてもらうのを待っていて驚いた。
 これは危ない
おとなしいネオだから、たまたまこうして待っていたから良かったけど、外に出したらどこに行くかわからない。今まで大丈夫でも、次はわからない。外に出て、フラッと一歩足を伸ばしたら、冒険に出てしまうかもしれない。首輪もつけてないのに帰れなかったらどうする?他の猫に会ったこともないのに喧嘩に巻き込まれたらどうなる?怖いことを次々想像して、くりを外に出すとき、自分達が外に出るとき、今まで以上に気を付けなければ、と思った。

 思ったのだ、そのときも。
 夕食後、くりと庭に出てうちには入ろうとしたとき、サッシが10センチ・・・くらいかな?開いていた。でも、その時はそんなに長い時間でなかったし、チラッと心配はよぎったが忙しかったのでそのままうちに入った。
 その夜、ネオの姿は寝室になかった。夜、ベッドに現れないときは、ベッドの下、襖を少し開けてあるさらに奥の部屋にいるか、暑いかだ。まだ暑くはない。ベッドの下を覗いたがいなかった。しかしながら、その前の数日、ほんとにくりのすけがうるさくて、ネオは少々不機嫌だったので、どこか落ち着けるとこに隠れてしまったのだと思った。

 翌朝、というのにはまだ早い午前3時過ぎ、くり時計が鳴った。どうしようかと思ったが、起き上がった。
 何かおかしい。
 ネオの気配が無さすぎる。
 隠れてしまうと、すっかり気配がなくなるネオだが、みんな寝静まってしまったら、夜中のうちにこっそり出てきてなにもなかったようにケージか、ベッドに、少なくとも寝室のどこかに戻るのが普通なのに。なんだか嫌な予感がして、くりと共に庭に出た。

 懐中電灯で照らしながら庭を歩く。くりは自分の気持ちの赴くままに庭をぐるぐるまわるのだが、私は嫌な気持ちがどんどん高まって、気もそぞろだった。もし、あのときネオが外に出ていたとしたら、もう、何時間もたっている。一晩外にいたらネオだってどこかに行ってしまうに違いない。どうしよう。危ない目に遭っていたらどうしよう、と、泣きそうな気持ちになった。そのとき、フーッという音がした。橙の木の下の茂みをくりがしきりに嗅いでいる。すると、今度はシャーッと。
 猫だ!
急いでくりの鎖を引き、近寄って懐中電灯を照らした。
 丸い光のなか、ネオが座っていた。がらくたと一緒に置いてある古い犬小屋のなかにいた。

 ネオは、外に出てからずっといつもの出窓の下にいたのだろうか。そして、そこに放置されていた小屋のなかには入って休んだのか。真相はわからないが、こんな長時間、しかも真夜中を経ているにも関わらず、無事に見つかるなんて本当に良かった。今回は本当にラッキーだったのだと思おう。ネオちゃんならではこその無事発見だ。くりもでかした。ネオに向かって激しく吠えたりしなかったし、ネオもくりに驚いてにげださなかった。シャーって怒られて、ネコパンチを食らってもくりは全然堪えてないようで、ちょっとしたイベントみたいに楽しそうだった。

 くりをつないで、鰹節をもって出て、犬小屋を覗いたらネオの姿がなくてちょっとドキッとしたが、犬小屋の外、出窓の下にうずくまっていた。瓦礫の上をそっと近づいて鰹節を差し出し、食べてるところを抱き寄せた。まあ、ネオの方から捕まってくれた、というか。おとなしく抱かれて家に入った。

 外は楽しかった?怖かった?

お母さんたちもサッシを開けっぱなしにしないように気を付けるからチャンスがあればまた出よう、とか思わないでね。

 それにしても、外に出ても小屋のなかに入って休んでいるとは、ネオちゃん家猫の鑑!


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