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映画「WAVES/ウェイブス」もう一度観る覚悟はない。けど、この衝撃は忘れない。

こんにちは。

ここ数年、毎月1回以上は、映画館で映画を見るのが当たり前でした。残念なことに、2020年前半はほとんど映画館に行けませんでした。2021年はどれだけ映画館に足を運べるか…想像もつきません。(こまった、こまった。)

1回目の緊急事態宣言が解除されてしばらく経った、2020年の7月。いつものようにインスタを開くと、知り合い(彼女が「いい」と言うものは、基本「いい」と信じている)がとある映画の感想をストーリーズに載せていました。その感想は、たった一言。

やばかった。

コメントの後ろの画像を見て、ピンと私は思い出しました。
「これ、見たかった映画だ!しかもA24のやつ!」
そんな抑えきれない気持ちを抱えたまま、急いで映画館へ。
と言っても、まだまだコロナが怖かったので、平日の深夜の回でチケットを予約。平日の深夜の回でチケットを予約。友達も誘いづらかったので、ひとりで見ることに。(2020年にあった1回目の緊急事態宣言の時は、今よりもみんなもっと警戒してましたよね…お出かけも。)

映画館に入るまでは、思いもしませんでした。
ひとりで行くんじゃなかった…しかも深夜に。
と、ものすごく後悔するなんて。

詳しい感想の前に、まずはストーリーから。

あらすじ

高校生タイラーは、成績優秀なレスリング部のエリート選手。美しい恋人アレクシスもいる。厳格な父親ロナルドとの間に距離を感じながらも、恵まれた家庭に育ち、何不自由のない生活を送っていた。そんなある日、不運にも肩の負傷が発覚し、医師から選手生命の危機を告げられる。そして追い打ちをかけるかのように、恋人の妊娠が判明。徐々に狂い始めた人生の歯車に翻弄され、自分を見失っていく。そしてある夜、タイラーと家族の運命を変える決定的な悲劇が起こる。
1年後、心を閉ざして過ごす妹エミリーの前に、すべての事情を知りつつ好意を寄せるルークが現れる。ルークの不器用な優しさに触れ、次第に心を開くエミリー。やがて二人は恋に落ちるが、ルークも同じように心に大きな傷を抱えていた。そして二人はお互いの未来のためにある行動に出る…。

目が離せない映画会社「A24」

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映画の感想の、その前に。
映画を好きな方なら、誰もが知っている映画制作会社A24。なかなか大衆映画にならないことが多いけど(なる時ももちろんあります!)、映画好きにはたまらない作品をどんどん世に送り出している会社です。

例えば、2017年にアカデミー賞作品賞を取った「ムーンライト」他にも、「レディーバード」や「フロリダ・プロジェクト」。2019年、結構ホラー好きの間でウケた「ミッド・サマー」。去年だと、あの俳優ジョナ・ヒルの初監督作品「ミッド90s」などなど、好きな人にはものすごーく刺さる映画を常に作っていて、目が離せません。

深夜に1人で見るのはやめた方がいい

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実はこの映画を見る予定の朝、携帯を開くと衝撃的なニュースが目に入りました。それは、有名な売れっ子俳優さんが亡くなったと言う内容。いろんな事を考えるのが大好きな私ですが、その分、いろんな感情になりやすく、繊細です。そんな悲しいニュースを知って心がどんよりしている中、1人で映画館に向かいました。

物語、映像、音楽含めて全力で観る人の心を揺さぶってくる作品のため、映画の途中で「もう映画館から出て行ってしまいたい」と何度も思ってしまいました。繊細な方は、この映画をお昼に観る事をおすすめします。

というわけで、波のようにわたしの心は揺り動かされまくりました。

感想(ネタバレなし)

1. とにかく美しい

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音、映像、色味、そしてカメラワークまで。息を飲むほどの美しさに、何度もうっとりしたり、衝撃を受けました。そして映画のタイトル通り、途切れなく動き続けるカメラワークと音はすごかったです。

例えば、最初のオープニング。
タイラーが彼女や友達とドライブをぶちかましているシーンは、自分も一緒に車に乗っている感覚で、映画館にいるのを忘れさせてくれるような体験でした。しょっぱなから、グォングオンすごかったので、「どうなってるんだろう?これどうやって撮影したんだ?」頭の中は、たくさんの??と驚きの映像美と音の波に圧倒されました。(できれば映画館であの音の没入感を感じて欲しい…です)

この映画、ご存知の方も多いと思いますが、「プレイリストムービー」とも言われています。物語の大切なシーンなどのでは、ケンドリック・ラマーやフランク・オーシャンなどの有名なアーティストの曲によって、彼らのセリフの代わりに物語を紡いでくれたりもします。「セリフはないのに、こんなにも胸が締め付けられたり、胸がいっぱいになるのは何故だろう?」って映画を見ながら思いました。また、音楽の使うタイミング、入り方もすごい…相乗効果がすごかったです。

これも、見た人の多くが気づいているとは思いますが、悲しいシーンの時は、画面が狭くて、色も暗く。嬉しいシーンや希望を感じるシーンでは、画面も広くて色も和らいでいったり明るくなっていく。視覚でも物語の波を伝えてくれるので、さらに没入することができました。

圧倒的に美しい、映像、音楽、そして物語までもを映画館でひとりじめしちゃった気分でした。

2. 演技がすごい。と言うか、そこにその役が生きている。

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主人公の「タイラー」役を演じるケルヴィン・ハリソン・ジュニア。その妹「エミリー」を演じたテイラー・ラッセル。彼らのお父さんを演じたスターリング・K・ブラウン。(この人は、This is Us. にも出ていた有名な人ですよね)そしてみんな大好き、妹エミリーに思いを寄せる同級生を演じるみんな大好きルーカス・ヘッジズ。タイラーの彼女「アレクシス」を演じたアレクサ・デミー。(彼女は、Mid90sでも相当いい味出てました)そしてタイラーの義理のお母さん「キャサリン」を演じたレネー・エリス・ゴールズベリー。彼らの全員の演技が本当に素晴らしかった。と言うか、リアルでした。

あまりにも演技がリアルだったので、彼らが悲しみに打ちひしがれている時は、わたしも一緒に絶望を感じ、彼らがかすかな希望を感じる時は、私も一緒に胸をなでおろす気持ちになれました。

そこにその人物が「生きている」事を強く信じさせてもらえるほどの演技力だと思います。

圧倒的な映像美・音楽美で紡がれるリアルな演技で満たされたこの作品は、海を超えた日本人の高校生でもなんでもないアラサーの心にもちゃんと響くものになっていました。

感想(ネタバレあり)

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ここからは、わたしの心にしばらくは残るであろう(既に、2021年になった今でも半年くらいは余裕で心に残っている)シーンと、それに合わせて思った事をつらつらと。

画面の中に突っ込んで止めに入りたくなった喧嘩シーン

レスリング部のエースであるタイラーの肩がほぼ完治しないとわかってしまった絶望的なタイミングで彼女が妊娠したってわかったシーン。

高校生の2人は、中絶を選び病院へ。タイラーは不安な表情で彼女の帰りを待っているが、戻ってきた彼女の言葉に彼は絶句。(絶句するのも、本当は違うけど)なんと彼女は、中絶ができなかったのです。悩んだ挙句、中絶ができなかったあと謝った後の、彼の動揺具合よ。そこから、一気にヒートアップした恐ろしい喧嘩のシーンは、感情の爆発具合が本当にすごくて、見ているこちがもあまりにも悲しくて、苦しくて、止めに入りたくなりました。

その時点で、見てるわたしはめちゃめちゃ辛かったのですが、その後のお互いに家に帰った後の、テキストの掛け合いはもっと悲惨でした…

最初は、タイラーも冷静になって優しいテキストメッセージを送っていたけど、彼女が「もうお父さんお母さんにも話したの。わたし、産むから」って言った直後からの「…は?何言ってんの?」からのテキストの応戦のすごさは、もう。たまらなかった。(悪い意味で)

そこから、わーーーーーーってメッセージのやりとりが物凄い勢いで続いて。(しかもその間は、スクリーンいっぱいにテキストが広がっていて、彼ら2人の顔は見えないのに、文字だけで恐ろしい緊張感が伝わってくる)

最後に、彼女の方から「I am Blocking you now. (ブロックするか)」っていうメッセージが届いて、ぷつっと終了。

こんな大事な話をブロックで終わらしてしまうの??という呆気なさとやり場のない気持ち。この後の、末路に悪い予感しかしないのが、うまい演出だなぁと今振り返ると思います。(映画館にいる時は、とりあえずわたしも胸が苦しくて、それどころじゃなかったです。笑)

タイラーの転落から思うこと

イケメンで、お金持ちの家に育ち、レスリング部のエリート、そして超絶可愛い彼女がいる主人公のタイラー。映画の始まりでは、俺が世界の中心だと言わんばかりの彼の人生が、少しずつ転げ落ちて行く様はすごかったです。

レスリングの練習は相当頑張ってるけど、肩の痛みが消えない。でも、お父さんには言えない。

病院に行くと、病院の先生からは、「今すぐレスリングをやめないと肩が壊れてしまう」とまで言われてしまったのに、それでもお父さんには言えない。彼女が、妊娠しちゃった。それも、誰にも言えない。彼女は、産むって言っている。それも。誰にも言えない。

誰にも言えずに、全てを抱え込み、挙句には痛み止めという名のドラッグ中毒になって、ラリった状態で別れた彼女に会いに行き、彼女を殺してしまう。

映画のお話だけど、なんかありえそうだなと思っていました。あと、この映画を見てて、Netflixの「人間レッスンを思い出しました。

高校生が、生き抜くために、大人に相談せずに選んでしまった選択が、どんどん悪い方向に行く感じ。落ちて行く様が、本当に恐ろしく、似ています。もしよかったら見てみてください。

この2つの作品をみて強く思うのは、多感な10代の時に「親じゃない相談相手」がいるってどれほど大事か。

結婚もしてないし、子供もいないけど、悩んでる10代の人の話を聞いてあげられる大人でいたいなと最近はよく思います。言える人が1人いるだけで、きっと何かが違うと思うのです。

今の時代って(前の時代も?)、SNSでなんでもかんでも簡単にアクセスできるから、ネットの使い方、プライバシーの守り方、性教育とか、何でもかんでも、簡単に危ない方向に落っこちていける可能性が満ち満ちていると思うんです。

周りの大人が、もっと子供たちが安心していろんな事を相談できる環境を作ってあげれたらいいのになと思ったりしています。親でもなんでもないけど。

最悪な出来事があったって、わたしたちの人生は続いていく

胸がいっぱいになったり、胸が苦しくて息ができないようなシーンはたくさんあったのですが、涙が流れることはありませんでした。ただ、最後の方の1シーンがわたしの心に強く残りました。それは、映画のかなり最後の最後に、タイラーのお父さんとお母さんがタイラーの部屋にいるシーンです。

栄光の人生を突っ走っていた、タイラーとその彼女に悲劇が起き、夫婦の中はズタボロに壊れ切り、もちろん家族の関係もボロボロ。修復なんてできないだろうって思われるような絶望の中、お母さんが刑務所に服役中のタイラーの部屋に入ってベッドの上に座ります。

まるで時が栄光の日々の場所で止まってしまっている、タイラーのいない部屋を見回すお母さんの横に、そっと座るお父さん。

壊れてしまった2人の関係。家族も壊れている。それは映画を見てきた人全員がわかっていること。

何をいうわけでもなく、鏡越しに2人が手を握るシーンにわたしは、胸が熱くなり、ウルッとしました。

「こんなことあっても、人は、もう一度目を前に向けて生きることができるのかもしれない」と。微かな希望をこの2人の仕草に感じ取ることができました。

最後に

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かなり長文になってしまいました。書き慣れてないので、どれくらいがいいかわからなかったのと、この映画はかなり思い入れがあったので、気合い入れすぎました。今後は、こんなに長くはならないと思います。こんな長文を読んでいただけた方がいたら、本当にありがとうございました。嬉しいです。

まとめとして、この映画は大衆ウケはしないと思います。120分超えてるし、こんな感情の波に付き合うのは大変です。(笑)でも、わたしの心にはとっても響きました。

今から見ようと思っている方は、夜に1人で見るのはお勧めできません。(笑)お昼からお菓子片手に見ましょう。じゃないと心壊れます。(笑)

<Podcast: Waves/ウェイブズのEpisode>
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