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小4息子、顔から火が出る

桜のつぼみがほころび始めた週末、
小4息子のサッカークラブでの練習のときのこと。
息子はまさに、「顔から火が出る」ような経験をした。
頬が紅潮し、高鳴る鼓動の音さえ聞こえそうな我が子の姿に、
私は思わず息をのんだ。

その日は、6年生の先輩たちが引退する最後の練習日。
練習終わりで、
メンバーひとりずつ、6年生にメッセージを言いましょう、という展開になった。
みんな、ひとことふたこと、簡単な言葉を言っていって、
息子の番。
頭が真っ白になっているのが、傍から見ていても分かる。
何も言えずに目が泳いで、数十秒の沈黙。
顔は真っ赤で、泣き出すんじゃないかぐらいの緊張が、伝わった。
蚊の鳴くような声で、「中学に行っても頑張ってください」と、ふりしぼった。

思えば、私にも似たような経験がある。
大学4年の就職試験で、いわゆる圧迫面接を受けた。
入念に準備したつもりだったが、
初めての質問をされた。
今までどうして誰も聞かなかったんだろう、というぐらい
シンプルで当たり前の質問。
でも私にとっては多分一番聞かれたくなかった質問で、
だからこそ自分自身も目を背けて準備してなかったんだろうと、
今になって思う。
絶句して数十秒。
最終的には、震える声でありのままを答えたけれど、
思い余って涙ぐんでしまったことが、情けなすぎて忘れられない。

それ以来私は、
さらに用意周到に面接の準備、シミュレーションをするようになった。
そして何より、聞かれたくないことも含めて、正直に自己分析するようになった。
結果、その後の面接はほとんど落ちずに、数社から内定をもらった。

顔から火が出るような体験のインパクトは大きい。
精神的にも身体的にもダメージを受け、決していいものではない。
一時的には自信を失うこともあるだろう。
でも、だからこそ、本人に与える影響は大きい。
一瞬で、その人の行動や考え方を変えるほどの威力があるかもしれない。

件の息子の「顔から火」のことについて、
彼とはまだ一言も話をしていない。
多分本人にとっては、思い出したくもないような
出来事だったと思う。

でもそこから何か、
息子に変化が生まれるかもしれないことを、ひそかに楽しみにしている。
もう少し時間がたって振り返った時に、
いい体験をしたなと、本人が思える日がくることを
母は祈るばかり。

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