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【リスク管理について】 「知っている」を「できる」に変える2つの視点。

こんにちは
理学療法士19年目のyokoです。
 
これは、患者さんと理学療法士(PT)の「より良い20分」を創るために、あれこれ考えるブログです。
 
今回はリスク管理について考えてみます。
(前回の回答は、同ブログの最後に追記いたしました)
 

リスクの知識 「知っている」から「できる」に変える2つの視点。


「患者さんの異変に対する違和感」に対する感度を、職場として、どうしたら底上げできるか?

リスク委員である同僚と、度々話をします。

私も経験がありますが、患者さんの異変に違和感を感じずにスルーしてしまうことは、患者さんにとってもPTにとっても、ダメージが大きいものです。
 
今はシステムや環境を整えることで、個人因子以外からリスクを減らそうという方向性にシフトしつつあります。
個人で気を付ける、頑張るリスク管理は意味がないという流れがあります。
 
ダブルチェックやオーダー管理などシステムで防げるものについては、この方法を徹底すれば改善できることも多いです。
しかし、「患者さんの異変に気付く」「違和感を感じとる」ためには、やはり個人のリスク意識を高めることが不可欠であるように思います。
 

「知っている」≠「おや?と気付ける」


リスク管理についての情報は、以前とは比べ物にならないくらい詳しくなっています。
リスク管理の書籍も多く販売されており、リスクの勉強会やロールプレイングなどで知識をブラッシュアップする機会も定期的に準備されています。
 
しかし、それでも違和感を感じずにスルーしてしまうケースは一定数存在します。
決して知識がないわけではない。
むしろ知識の量や精度は以前より増えているはずです。
 
yokoは臨床に出たときに、「おや?」と気付けるかどうかは、知識を持っているとは違う問題であると感じます。

視点①最悪の状態を想定する


臨床中に「おや?」と気付けるかどうか?それは
・最悪の状態を想定できるか?
・自分のフィルターを持っているか?

の2つを準備することで大きく向上すると思っています。
 
私は、新卒後の4年間を脳神経外科で過ごしました。
急性期病棟に配属されていたこともあり、患者さんの状態が1日の間で急に変わってしまうことも、しばしばありました。
急に麻痺が重くなり、ICU管理になった患者さんもいました。
自分の患者さんが急変して、朝出勤したら亡くなられていた、ということも経験しました。
 
そんな環境だったので、自分がリハビリに入ったときに、患者さんは何かサインを出していないか、見逃したら明日はこの患者さんは亡くなることさえある、と最悪を考える癖がつきました。
 
整形外科に来て、脳外科と比べて急変が少ないことから、「最悪」を見るケース自体が少なくなりました。新卒から整形外科の現場にいて、そういったケースを経験していなければ、想定することも難しくなります。
「おや?」と引っかかりにくくなります。
しかし、頻度は格段に少ないけれど、患者さんを診ている以上、必ず急変は起きます。
 
最悪が起こってからでは取り返しがつきません。
yokoが新人の頃、リスク会議ででたケースを元に、「これは最悪何につながるか?」といった質問を先輩から繰り返し出され、答える練習をしていました。(PTだけでなく、なぜか仲のいい薬剤師の先輩も来てくれました。)
当時は、起こっていないことに対して、これを考えることで何の意味があるのか理解できていませんでしたが、今になると、最悪を想定し、リスク意識を高めるのに非常に有効な練習だったと感じます。
 

視点②自分のフィルターを持つ


次に自分のフィルターについてです。
リスクについての知識が増える一方で、それを臨床で生かすためには、情報を絞り込んで自分のフィルターとして準備しておくことが大切です。
 
知識を多く身につけることと、情報を絞り込んでフィルターを作ることは相反するように感じます。しかし、前述のようにリスク管理について「知っている」を「できる」に変えるためには、一度自分で情報を整理し、使える状態に組み直すというプロセスが不可欠です。

リスクフィルターの作り方

私は主にガイドラインの情報から、ざっくりとした数字を盛り込んでフィルターにしています。
 
例えば、世間話の間に、「こないだ転んじゃったのよ」と患者さんが教えてくれることをよく経験します。
この時、脆弱性骨折を疑うためには、どんなフィルターが必要でしょうか?

骨粗鬆症ガイドラインでは、70歳代の女性の骨粗鬆症発症率は腰椎で40%、大腿骨頸部で60%です。50歳から増え始め、60代から10歳進むごとにおおよそ1.5倍ずつ上がってくるグラフが示されています。
そして、骨折の頻度も70歳代を境にして急激に上がります。
骨折の頻度は下記のグラフのように橈骨遠位端骨折、圧迫骨折、上腕骨近位端骨折、大腿骨近位端骨折です。

引用:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版 http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf

松下隆:整形外科医から見た骨粗鬆症に おける脆弱性骨折の予防と治療の現状.日老医誌 56 2019.130―135p

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/56/2/56_56.130/_pdf/-char/ja


それを踏まえて、私の持つフィルターは、
女性で60歳超えたら脆弱性骨折リスクは上がる。
70歳の2人に1人は骨粗鬆症を抱えており、70歳を超えると骨折リスクも急激に上がる。
骨折を疑ったら、手首・胸腰椎・肩・骨盤から大転子部分の叩打痛・炎症症状を確認する。
というものです。

数字がざっくりすぎる!とお叱りを受けるかもしれませんが、自分で情報を読み込んだフィルターであることが大切だと思っています。私の場合、これくらい単純じゃないと覚えられないし、使えないのです。(笑)

情報を絞り込むことで不安を感じる方もいるかもしれませんが、理由を持って削ぎ落としたり、グラフを読み込んでいると、意外と記憶に残るものです。
 
ただ、ガイドラインは5−10年に一度は刷新されるので、
これからも新しい資料を引っ張り出しては、より新しく使えるフィルターに刷新していきたいと思います。

前回の話にも通じますが、「おや?」と気付けるPTは医師からの信頼を得たり、能力を伸ばしやすい傾向にあります。
後輩にはそういう存在に育ってほしい。

リスク会議の時に、こんな話を折々混ぜて話していきたいと思います。
(お説教にならないように気をつけて・・・笑)


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