CITTA手帳にみる成功の条件
手帳業界は超成熟市場
こちらの写真、昨年10月末の京都で有名な大型書店さん一番目立つ平台のコーナー。一面手帳。実際にはほぼ同じ大きさの平台がもう一台あってそこも一面手帳でした。一台は、手帳の〇橋さん、もう一台は能〇手帳さん。業界の2台巨頭と言っていいのではないかと思います。書店で販売しているということは、おそらく書籍扱い。実は書籍は新刊発売3か月間は、書店から出版社へ返品自由。つまりどれだけ仕入れても書店サイドはノーリスク。
これ以外に出版社が発行する手帳と言えば、著名なビジネス作家さんがプロディーしているものも多数。これも書籍扱いなら、3か月間返品自由で、書店サイドはノーリスク。もちろん、ノーリスクだからといって仕入れたい放題、返品し放題、というわけではありませんが。
手帳はこれ以外にも、群を抜いて有名な「ほぼ日手帳」があり、最近のヒットとしては文具のコクヨが販売している、「ジブン手帳」など文具メーカーが手掛けているものや、無印良品にも素敵なラインナップがあるし、なんなら百均にだってかわいい手帳が並んでいます。
そんな中、もしあなたの無名の友人が、自分で設計した手帳を自分で製造して販売したいと言い出したらどうしますか?
ド素人手帳業界に参入の件
私が今愛用している「CITTA手帳」
こちら全くの新規参入。そう、無名の状態で手帳業界に算入された青木千草さんが、ご自身で企画し自社で製造・販売されています。2019年の実績は4万部とお聞きしています。
'13年に自分のためだけに手書きで線を引いて手帳を制作。それを翌年、印刷会社に依頼して自主制作10冊から始まったこの手帳。わずか6年余りで、4万部ってすごくないですか? でも、おそらく、2015年1000部製造する際に補助金申請したら、一発不採択もしくは、申請書作成時点で計画変更をアドバイスされていたかもしれません。(あくまで予測ですが)
おおよそ言われそうなこと。そして補助金審査の方が言いそうなこと
1.価格が高い。3,750円
2.手帳市場は飽和状態、個人で新規参入は無理
3.同様のページ構成の手帳は既に販売されている
4.ノーブランドだから無理
5.市場(顧客)が見えない。
結果、実現可能性が低い事業ですね、市場を獲得したければ、もっと価格を下げて買いやすい手帳にする努力をしてください、とか言われたと想像します。→あくまでも個人の予測です。
価値とはお客様と一緒に創るもの
ただし、上記のダメ出し5条に決定的に欠落している視点があって、それが、以下の3点
1.顧客の需要
2.感性価値という視点
3.顧客セグメントが明確でその点で競合はいない
言い換えれば、
1.既存の商品では解決できない課題を持った顧客がいる。
2.機能が同じでも、顧客が感じる感性=感情に意味がある。
3.提供先は万人ではない、対象としている顧客層が明確
女性が自分ひとりのために時間を創り、未来の自分のためにスケジュールを予約するというコンセプトで創られた手帳はいまだかってなかった。
それは、同じような機能を持った手帳では代替えできない価値。 使う人の生活を細部にわたって想定した上で、未来を「手帳の書き方」によって実現するための「講座」の開催や「書籍」の販売で叶えようとした。
手帳の〇橋や能〇手帳が狙うような、大きな市場はないけれど、CITTA手帳を必要としている顧客が確実にいたし、開発者青木千草さんはその顧客層の痛みと喜びがどこにあるかを、明確に分かっていた。
感性主義の時代とは、女性性を活かす時代
補助金審査委員のいいそうな5か条と私が示したものは、モノが圧倒的に少なく、大量生産、大量消費が「善」で、それが世の中をよくすると信じられていた時代の発想。
今やスマホという小さなPCを一人一台以上持ち、てのひらの中で常に最新情報を入手することが当たり前になっている時代。
平安時代の人の一生分以上の情報に触れているからこそ、人と同じことが「いいこと」、機能が高いことを「すばらしい」とは思わない。
それよりも、「自分が使って心地よいかどうか」その商品がどんな風に「自分を成長させてくれるのか」かという女性的な感性に価値が置かれる時代です。
CITTA手帳の開発者、青木千草さん、お会いになった方はご存知かと思いますが、とってもサバサバとして「男前」。でも、彼女は、一人の女性として生きる、その前に、誰かの娘であったり、誰かの妻であったり、誰かのママとして生きることの「喜び」と同時にその「痛み」も知っている。見過ごされがちなその「痛み」をきちんと拾い上げ、未来を予約するというコンセプトで「CITTA手帳」を世に出した。
あなたが日常感じる痛みをないものにしないで
女性は、物質中心資本主義がもたらす「痛み」に気付き、それを自らの感性で解決する力を持っている。その力は家族の中で発揮する人もあれば、ビジネスという大きなフィールドで発揮する人もいる。そしてたいていその「痛み」は、これまで男性が見落としてきた「生活」や「日常」の中にある。
従来型の資本主義的発想から抜けられない、制度や仕組みの中で起業を考えず、「痛み」を「痛み」と感じた自分の感性とそれを解決すると決めた社会性を信じ、コツコツ共感者コミュニティを育て、「痛み」を「喜び」に変換する仕組みを「ビジネス」として創ってゆくと決めること。それがこれからの女性起業に求められるマインドセット。
オフィスやまもとは いつもそんなあなたを応援しています。
京都で「知的資産とビジネスモデルの専門家」として、活動しています。現在は内閣府の経営デザインシートの普及に勤めています。