マガジン

最近の記事

  • 固定された記事

セミの最期を見た。どこに行くもなくなにをするもないので、道端の木陰に腰を下ろし何度も読んだ小説を暇に任せめくっていた。およそ一メートルと少­し先で何かが視界の端にみえた。そのすぐ後にかつん、からからと音がしたので視線をそれに向けた。 六本あるうち一番前の一対がほんの少し動いたがそれだけだった。もう一度くらい身じろぎのひとつもしないかとしばらくじっと見ていたが、本当にそれで最期だったようなので私は視線を手元に戻した。 しばらくしてくしゃという音と「あっ」という少女の声がした。ど

    • VRC大喜利ハウス お題集 2023

      毎月第2第4金曜日の22時から開催しているVRC大喜利ハウスで出したお題をまとめました。 良識の範囲内で活用ください。 お題リストVRChat次回アップデートの内容を教えてください このワールド他人にはお勧めしにくいんだよなぁ どんなワールド? 逆VRChatterについて知っていることを教えてください Create, Share, Playみたいなことをいってください 最近あいつプラベから出てこないんだよ なにしてる? Vketに一生閉じ込められた人 中学生の

      • 駄文

        ぶいちゃ民をTwitterで多くフォローしていると、似たような話題がちょくちょくと流れてくることに気がつく。(もっともこれは特定のクラスターによらず発生することだ。) そのなかでもコミュニケーションについての話題をこの文章のなかでは取り上げる。 ぶいちゃでは多くの種類の人間が活動している。絵を描く者にダンスをする者、音楽に興じる者や動画を撮る者などなど様々な人間が何かしらの表現を行っている。 中には、ぶいちゃをするまではそのような表現をまるでしてこなかった(あるいはできなか

        • 猫と蝉

          堕ちた蝉に猫が寄り添う。とって食ってしまうという訳でもなく、ひっくり返った蝉をただじっと見つめている。 やっとの思いで背を空に向けた蝉が木に向かい歩き始める。 猫は前肢で蝉を一度つついたがそれで終いだった。猫は蝉を見つめ、そして向かう先の木を見上げた。

        • 固定された記事

        マガジン

        • 紙背文書
          4本
        • あることないこと
          7本

        記事

          「胡蝶」あらすじ

          魔獣の脅威から人類の生活圏を守るその男は、この頃いつも同じ夢をみるという。 そこには魔法も魔獣もなく、人類は脅威に命を脅かされることもなく平和を謳歌していた。男はその夢の中で妻と娘を持ち、何不自由なく暮らしていた。 乾いた世界で日々人類の脅威を振り払う男は、ひとときの幸せを夢にみる。 本編 https://note.com/yoko_chance/n/ne74b61270c21

          「胡蝶」あらすじ

          「胡蝶」本編

          ずっと同じ夢をみる。 夢でみる世界は魔法が廃れ科学が全てを照らしている。夜にさえ暗闇はなく、建造物は空に届かんばかりに伸びている。 そんな世界で私は美しい妻とかわいい娘に恵まれ、不自由はほとんどなく充実した日々を過ごしていた。 我ながら空想的な夢を見るものだと思う。 そんな夢の世界とは似ても似つかないこの世界に満ちている魔素は、扱うものに代償を求めることもなく大きな力を与える。 古来、獣が魔獣となり知性を得たように、人間は魔素を利用する技術"魔法"を得た。 それまで魔獣に

          「胡蝶」本編

          胡蝶

          いつも同じ夢をみる。素敵な妻とかわいい娘がおり不自由なく暮らしていた。 最近は夢をみる時間が短くなった。夢での暮らしは不自由が段々と増え、妻も娘もやつれていった。 ───現実の私は世界を支配する巨悪を倒すべく流浪する旅人。 夢で見るような悲しみを晴らすため、今日も。 ジャンプ+大賞用に書き直したやつ https://note.com/yoko_chance/n/ne74b61270c21

          昨日の続きの今日が始まる。 さっきまでみていた夢の続きを惜しみながら身を起こす。卸したばかりの透き通った空気が身を雪ぐ。まどろみを優しく固めたような、まだ暖かい布団に別れを告げる。 清らかな冷たい水をケトルに受ける。 湯を沸かすためにつけた炎はつまみ上げて手のひらで転がしたくなるような雫型。ケトルを上に置くと炎は逃げるように外に広がる。 湯が沸けるまでの間に歯を磨く。口の中に溜まった夜の淀みを涼やかな香りが洗い流す。 顔を洗う。澄んだきらめく水に夢の残り香が溶け出す。雲のよ

          本を読む

          映像作品をみているときと本を読んでいるとき、どちらのほうがより没頭しているだろうか。 これは個人的な好みの問題も大きいので一般的なことは言えないし、そのつもりもない。 私の場合、映像より本の方がながらで楽しむのが難しく、その分より没頭度は深くなる。 本を読み、きりの良いところで顔を上げたとき、本を読んでいた間の時間が何倍にも長かったように感じることがままある。 例えば通勤電車のなかで小説を読み耽り、目的の駅でやっと顔を上げたようなときには一日がもう過ぎてしまったような感覚に

          本を読む

          余暇よか

          最初に書いたnote記事を久しぶりに読んだ 改めて自分の毎日を振り返ると余暇という余暇はもうほとんどなくなってしまったように思えた。 朝起きて味噌汁のために湯を沸かしつつ、歯を磨いている間の暇つぶしにyoutubeで動画を流す。絵を描く間にも、ご飯のときにも、湯船に浸かるときも、VRChat(VRSNS)でも人と会うまでの間はyoutubeを開く。 この人を惹きつけ離さない不定形の怪物は、気づけばあらゆる隙間に入り込んで空白を塗りつぶす。 流石に気持ち悪くなって近頃は意識

          余暇よか

          みそひともじ前後

          雪想い 落葉望み 陽を忌む日々 彩る花の 匂いいとしき 風拒み 一所留まる 根無草 省みる跡 腐り落ちた葉

          みそひともじ前後

          雨が降る

          今日たぶん雨が降る 目を覚ますとすぐに分厚い雲の壁が朝のきれいな光と私とを分断する 昨日はなにがあっただろう 記憶は滲んでぼやけているが今日も私は活動する 活動しないで済むならどれだけいいかわからない 終わらせるだけの胆力がないばかりに今日も昨日の続きを繰り返す カバンは昨日のままでいい 焼き上がったトーストにはジャムを塗る 小さな鏡をのぞいて息を吐く 針がだまって私を急かす 暗い雲が広がっている …… 星も見えない光の中から淡い暗闇に帰ってくる 家具が輪郭を仄かに主張

          雨が降る

          VRChatはあの頃の公園でした

          Oculus Quest 2が届いた2/4からVRChatを始めて2ヶ月弱、自分の感じたことをつれづれなるままに書きつづってみる questが届いたその日は午前休をそのためにとっていたので初期設定を済ませてすぐにvrchatへログインした vrcの初心者向け記事の案内に身を任せて早速クエ集へ行くと(今思うと運のいいことに)数人の方がいて、親切に操作説明をしてくれた 説明がある程度終わった頃、pcアバターを着た海外の方がやってきた すごく近い距離でアバターかわいいね、声が素敵

          VRChatはあの頃の公園でした

          いつかの初夢

          こんな夢を見た。 気がつくと私は友人の家にいた。 この友人というのはなにかあれば会議だと酒をのみ、なにもなくても理由をつけて酒をのむ、今思えばかけがえのない友人だった。 そんなようなのでこの友人の家というのはすっかりなじみの場所だった。 けれどこのときのそこは元来のそれとはまるで違いとても広かった。 私はもう寝ると言ったが、友人はそれを許さず私はそれに従った。部屋の中をざっと見渡すとDJブースを見つけた。私は驚いたが次の瞬間にはその前に立っていた。 よくわからない機械があちこ

          いつかの初夢

          余暇

          『華氏451度』再び読み終えた。 ふと最近の家にいる自分に目をやると、なにするでもなくYoutubeを眺めている時間の多いことに気がつく。 はやりのvtuberを見ていたりする訳だけども、それが劇中の"親戚"に重なってぞっとするものがあった。 名前を読んでくれたりをすることはないけども、snsを通じればコミュニケーションもできてしまう。 別段警鐘を鳴らすとかそういうことではないし、自分もyoutube断ちをしなければとまで思った訳ではないんだけども、休みの多くをそれに