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なぜ『モンスターペアレント』は生まれるのか?

先生をやっていると、どこかで遭遇する『モンスターペアレント』

私自身は幸い保護者の方に恵まれた教員生活でしたが、身近な先生がモンスターペアレントに悩まされているところを何度か目の当たりにしてきました。

私も息子を生んでやっと「なぜモンスターペアレントになってしまうのか。」について、保護者の立場で共感をもって考えることができるようになってきました。

『教員の不適切な指導・対応』に対する正当な保護者の指摘を、先生側が『モンスターペアレントが・・・』と受け取ることもあると思います。(本当にいろいろな先生がいますから・・・)

ですが今回は、『先生は一生懸命子どものことを思って指導をしている(不適切な指導はしていない)』『けれど、保護者の理解を得られず苦しんでいる』『保護者の要求がエスカレートしてきて困っている』という状況であると仮定して、モンスターペアレントになっていしまう保護者の心理について考えていきたいと思います。



親は子どもの『できない部分』を受容したくない


私自身、子育てをしていて『自分に自信をもってのびのび育ってほしい』と思いながら、周りの子どもとつい比べてしまうことがあります。

『あの子はもう喋れるのに、うちの子はまだ・・・』と我が子を下げるような視点で見ることもあれば

『うちの子はあの子と比べて、もうこんなこともできるようになった。あの子より遅く生まれたのに』と、誰かを下げて我が子を上げる見方をすることもあります。
(我ながら少々性格が悪いなと自覚していますが、きっと誰も口にしないだけでそう思うこともあるでしょう。)


そして、周りより劣っていることがあれば『何とかできるようにさせよう』と躍起になってしまうことがあります。子どものできない部分、発達が遅れている部分を目の当たりにすると、『私のせいではないか?』『自分が親として不十分じゃないか?』と不安になるからです。


もし子ども自身が困っていて、助けになりたいから一緒に取り組む・練習するということなら、きっとその子自身の成長に繋がるでしょう。

しかし『できるようにさせよう』という気持ちが大人のエゴであるなら、子どもからするといい迷惑で、「○○ができない自分はダメな人間なんだ。恥ずかしい存在なんだ。」と思わせてしまいかねません。

『こんなこともできないなんて、恥ずかしい』と思っているのは子ども自身か?それとも親なのか?

『子どもを育てられない親』とレッテルを貼られることを恐れて、子どもの意志とは関係なく、あれもこれも『できるようになれ』強要しているのではないか?

大人になればなるほど、間違いを受け入れることは難しくなります。親であれば『子どもの現状を受け入れられない自分』『未熟な自分』だと薄々気付いていても、受け入れられません。むしろ、あの手この手でそれを否定しようとします。(完璧な親、完璧な人間などいないので、弱みを隠したり自分を否定したりする必要はないのですが・・・)


だから先生たちへの要求がエスカレートする


周りの子への加害があるにも関わらず『うちの子は叱られずにのびのびやれば、ちゃんとできます。』または『先生がビシッと叱れば言うことを聞くんです。』と言い張る親。
『そんな褒め方はやめてください。もっとこんな声かけをしてください。』とどこから拾ってきたか分からない情報を振りかざす親。
子どものわがままを見極めず『子どもの自主性を大切にしたい。』と言って無理難題を要求してくる親。
『学校で起こったことは、学校でどうにかしてください。』と子どもに向き合おうとしない親。

そう言われると、時に先生たちは怒りを覚えてしまうかもしれませんが、保護者も必死なのです。

『自分が子どもに対してやっていることは間違いじゃない』『自分の子育ては間違っていない』

と思っていたいのです。
(私自身、子育てをしていると「間違えないように、間違えないように、、、」と思ってしまうことがあります。)

自分の子育てを肯定するために『学校が、先生が関わり方を工夫すれば、状況はもっと良くなるはず』と主張していたいのです。

ネットの情報を鵜呑みにして、先生の指導に対して意見を言うことを通して『子どものために動いた自分』に満足していたいのです。


保護者も『子どものため』と思い込みながら、本当は自分の心を守るために必死なので「その考え方、間違っていますよ?」「それは本当に子どものためですか?」と問題を突きつけたところで、簡単には受け入れられないでしょう。

先生たちにできることは、難しいかもしれませんが『できるだけ保護者に理解を示すこと』だと思います。「親だって未熟な存在で、そのことを受け入れられずに困っているんだ」「自分が正しいと主張することで、自分の心を守っているんだ」と思えば、相手に対して少し思いやりを持てます。(本当に少しだけ・・・)

そのうえで先生たちには、自分の指導を自分自身は否定せずに、自信をもってほしいです。保護者の要求に耳を傾けながら、学校としての立場でできること、できないことはきちんと伝えることは、先生の心を守るためにも必要なことです。

時に、先生の人格まで否定するような言い方の方もいらっしゃるかもしれません。その方も、過去には人格を否定されるような環境で育ってきたのかもしれないですね。


いつも頑張っている先生方へ

どんな状況でも、どれだけ自分に敵意が向けられようとも、クレームをすべて『自分のせい』『自分の指導のせい』と思い過ぎることがないように気を付けてください。過度な自己否定は、心のバランスを崩します。

話し合いにならない時やどれだけ説明しても聞き入れてもらえない時は、学校や先生とは関係のない「保護者自身」の育った環境や未熟さが大きく関係しているかもしれません。

要求をすべて鵜呑みにする必要はないですが、そんな保護者自身の事情に少しだけ思いを馳せて、「自分だけのせいではない。」と思うことで先生自身の心も軽くなるかもしれません。

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