カメラマンを廃業した時のこと
誰にも言っていない。
初めて告白すること。
私はコロナ禍の2021年に写真を辞めた。
仕事の撮影、自分の作品撮りもすべて。
税務署へ廃業届を出した。
もう、いいや。
頑張ってもがんばっても報われない。
これ以上は無理だ。
心が苦しい。
写真を撮るのが苦痛だ。
そう感じて廃業し、全く違う仕事へ就いた。
撮影以外の仕事は割と楽しかった。
指示された通りに行動し、仕事をすればお金がいただける。
自分でアイデアを出す必要もないし、計画を練る必要も、ロケハンや煩雑な事前準備も全くない。
非常に楽。
月々安定した収入を得られるのも魅力だった。
カメラマンは請求の時期によっては月の収入が0の時があり、逆に通常の倍以上報酬が多い月もあったりとばらつきがある。
ある日全く違う仕事をしていた私の心が悲鳴を上げた。
「毎日がつまらない」
「人生がつまらない」
iPhoneでそう検索し答えを探す日々。
違う仕事をして、生きる意味をなくしてしまった。
私は気づいていなかった。
写真やデザイン、絵画を見ることが心から好きなことに。
忙しさにかき消されて写真が好きだという事を忘れてしまっていた。
再び立ち直るきっかけを作ってくれたのは、一昨年実家から持ち帰った祖母のアルバム。
若いときの祖母の写真を見て、「写真っていいな」と純粋に思った。
大好きだった祖母のアルバムが何十年も保管されていたことは、運命的だった。
祖母は亡くなってからも、人生の節目で助けてくれる。目には見えない、不思議な力で。
「陽子ちゃん、もう少し頑張ってごらん」
亡き祖母に背中を押された。
立ち直るきっかけを与えてくれるのはいつも祖母。
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