牛若丸(うしわかまる)君にインタビューできました。その3(全3回)


ポン!昨日の続きだよ。

すると、その大男は、みるみる顔色を変えて、持っていた薙刀(なぎなた)を振り上げてかかってきたんだ。僕はひょいとその下をくぐりぬけて、向こうへ出た。薙刀はがつりと橋の欄干(らんかん)につきささった。僕は、さっと欄干に飛び移ると、{どうされた?}と男の顔を覗いて言ってやったんだ。男は呻き(うめき)ながら
、また薙刀を振り上げてきた。今度はその男の肩を一蹴りしてやって、向こうに飛び降りた。その男は仰向けにひっくり返ってしまった。そこで、{それ、それ}と馬乗りになって、男の手首をねじ切れるほど捻り上げて(ひねりあげて)やったんだ。そうしたら、男は降参したのさ。僕の家来になると言ったからね。その男は橋の上で両手をついて頭を下げたんだ。{私はこれまで強いつもりでおりましたが、あなた様にはかないません。どうぞ、お名前をお聞かせください}というからね。{鞍馬山(くらまやま)の牛若丸(うしわかまる)である}と僕は胸を張って言ってみた。そうしたらビックリさ。{な、なんと。源氏の御若君でございましたか。どうりで源氏の御若君の家来とならば、これほど誉れ高きことはございませぬ。行く末までお仕えしとうございます}と言ってくれたんだ。僕の名前を知っていたんだ。{お前の名は何という?何者ぞ、何ゆえここで刀を盗み取っていたのか?}その男は両手をついて言ったよ。{私は比叡山(ひえいざん)の西塔(さいとう)の武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)と申す者でございます。宝は何でも千という数を揃えて持つものと聞いております。奥州(おうしゅう)の秀衡(ひでひら)は、いい馬を千匹と、鎧(よろい)を千両揃えている。九州の松浦太夫(まつうらのだゆう)は弓を千張(せんちょう)と靫(うつぼ)を千本揃えて持っている。ならば、自分こそは刀を千本手に入れようと思おたのです。都へ入れば千本くらいの刀はわけなく手にできるだろうと都のこの五条の橋の上で刀を集めていたのです。ちょうど、999本まで数えましたところで、今日ひとつばかり手に入れたならば、千本となるところでした}{それは気の毒であった}僕は笑ってしまったのさ、弁慶も笑ったのさ。弁慶の話を聞いていたらね、弁慶こそは頼れるものと思ったのさ。ひと目会った時から弁慶は、兄上のような、父上のような、母上のような何
だか分からないけれど、僕の大切な人となる気がしたのさ。」 
「そんなことがあったんですね。牛若丸くん、どうもありがとうございました。」 

ポンポン! 

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