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【考え事】漢字の「醤油」は難しい?

■ 「醤油」は難しい?

 小学校のころ、TVのCMか何かで「しょうゆって漢字で書ける?」という内容を見た。「醤油ってそんなに難しいの?」と思いながら調べたところ、「そうでもないやん」という感想に至った。小学生時代はぶっ飛んだものが好きだったので、一十百千万億兆京・・・那由多不可思議無量大数などの数をおぼえていたり、辞書に載っている一番画数が多いような漢字(龞・・籯など)の存在を知っていた。そのためそれらに比べるとあまり「醤油」という漢字は難しく映らなかった。

■ 大人になると「醤油」は難しくなる

 小学生時代は全然難しく感じなかった「醤油」だが、大人になるとだんだん難しく思えてきた。というより「醤油という漢字が難しいと言われる理由」に心当たりがでてきた。

■ リテラシーの差

 醤油の難しさはおそらく、リテラシーの違いとして表される。龞・・籯などの漢字を書くときに暗記している人はほぼ居ないが、大きな紙に印刷して写せと言われれば比較的誰でも書ける。つまり普段は書けないが、書こうと思えば(リソースを気にしなければ)書ける。そこでは大して玄人と素人の差がつかない。

 醤油ぐらいの難易度であればおそらく差が出てくる。醤油がぱっと思い浮かんで書くだけの人と、「ちょっと浮かばないので調べます」という人には完成までにかかる時間に差が出てくる。

 「今はググったらすぐ出てくるし、漢字一つ思い出せるかどうかでそんなに差は出らんやろ笑」という指摘はあると思う。しかしそれが漢字テストであれば、1つ1つを調べている人と、暗記している人の差は大きな差になる。「醤油」レベルの難しさの漢字をパッと引き出せる状態に保っているかどうか、という点でその人の漢字の能力(≒リテラシー)が測られる。英文でも同じだ。一つの文章の中で調べなければ意味が分からない単語がいくつあるかどうかで、読解スピードが大きく変わる。

■ 5分でできることの質

 リテラシーの言い換えとして、「5分でできることの質」という言い方をするのがしっくりきている。これは作業によってもっと短くても良いが、「あ、いいっすよ」という感じでパッとできることの質と捉えてもらえば良い。5分で野菜炒めを作ることができる人、5分で超うまいスケッチが描ける人、5分でExcelマクロが組める人、5分で聴いた曲をピアノで弾ける人、ジダンのトラップ、菊池の守備、など、それができない人から見るとCrazyな作業を、何気なくさらっとこなす人達がいるし、それは分野を限らなければ誰しも持っているものだと思う。

■ 企業におけるリテラシーは「見積金額」に表れる

 このリテラシーを企業レベルで見ると、同じ品質の成果を生み出すまでの時間が変わる。生み出すまでの時間が変わると、見積金額が変わる。そこがビジネス上では大きな差になる。日本の企業が「いやぁ、それは技術的に高度な作業が必要になるので1000万円ぐらいかかりますねぇ。」という作業をGoogleがタダでやっていたりする。つまり技術力の差は見積金額となって表れ、それは結局顧客に選ばれるかどうか(≒競争力)に大きく関わってくる。今はほとんど全てのサービスがインターネットサービスとして公開されるため、ITリテラシーの差が如実に表れる。

 このITリテラシーの差というのは非常に怖く、一人で作業できしまう。普通の人が1000人いてもできない量の仕事を1人のトップエンジニアがさらっとやってのけたりしてしまう。個人的に一番この差を実感したのは「予告.in」の開発だ。10年ぐらい前になるが、ネット上の犯行予告を検知できるソフトの開発費を作るのに政府が「費用は数億円かかる」と言った翌日に、「0億円、2時間で作れました(エヘッ)」という形でサービス紹介とともに記者会見が行われた。

 こんなことが今世界中で起きている。インドやアメリカの大学で学んだトップエンジニアが、計算機が十分に整った集中できる環境でガンガンコードを書いている。すると日本の企業では体制を組んで要件定義をして・・・とやっている間に超すごい無料サービスが公開されてしまう。その後のアップデートの速度も爆速だ。この差が以前の記事でも書いた「失われた30年」の原因だと思う。

■ 対抗策はないのか?

 リテラシーは、「提供する側と受ける側の関係者間で相対的」なものだ。その提供側と受ける側で価値が交換できればお金が発生する。世界中のトップエンジニアの誰よりも美味い料理が作れる料理人はいるし、誰よりも上手いマッサージを提供できる人もいる。だからITで負けていればそこ(苦手分野)を強化するよりも、自分達がパッとできる分野(得意分野)を、それを必要としている人たちに提供するという考え方で行くと良いと思う。今日は長くなったので、これについてはまた後日。

・・・「醤油」の話はどこへやら笑(≒漢字リテラシーという扱いです)


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