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博多祇園山笠2023_舁き山笠巡り

博多祇園山笠。2023年の舁き山笠かきやま巡りへ。
全7流(土居流・大黒流・東流・中洲流・西流・千代流・恵比須流)と、走る飾り山笠かざりやまの上川端通を紹介します。
なお、解説文は現地(山小屋)でも公開されている内容をそのまま載せています。


一番山笠 土居流

黒田筑前守長政くろだちくぜんのかみながまさ (人形師:中村弘峰)

今年、令和五年は初代福岡藩主・黒田長政の没後四百年という節目の年に当たる。長政は天下一の軍師と謳われた黒田官兵衛の嫡男で信長、秀吉、家康と戦国三英傑に仕えた戦国時代きっての勇猛な武将と言われる。その生涯は波乱万丈で、信長の人質として生命の危機に瀕し、秀吉の時代には朝鮮出兵、関ヶ原の合戦では東軍方につき徳川の勝利に大いに貢献した。その功績に筑前国五十二万石を与えられ、一六〇六年に福岡城を築城、初代藩主となった長政は、数々の産業を推奨し、博多人形、博多織、高取焼など現在に至るまでの名産品の発展に寄与した。没後四百年という節目に、長政公の忠義を尽くした生き様に焦点を当て、これから四百年先までもここ福岡・博多が更に発展し安らかで豊かな街となるように祈念したい。

見送り 見送り側は朱塗合子形兜を被る黒田官兵衛になっています。表とともに一度で親子(官兵衛・長政)を見ることができます。

二番山笠 大黒流

薫風来くうぷんらい (人形師:西山陽一)

薫風は夏に吹く、若葉の薫り漂う緑色の風です。
そよげば人々に涼をもたらし、清々しい気持ちにさせてくれます。大黒天の舞を巻き起こし世の中に明るさをもたらしたいとの思いが込められています。
表題を心にとどめた大黒流の一人ひとりが、薫風となり、人々と街に活気をもたらす意気込みで博多の夏を駆け抜けて欲しいと願っている。

三番山笠 東流

武覚悟乃六文銭もののふかくごのろくもんせん (人形師:白水英章)

信濃国(今の長野県)の戦国大名、真田信繁(通称幸村)は豊臣家に生涯忠誠を誓った「義」のひとであり、十文字槍を用い「日本一の兵(ひのもといちのつわもの)」と評された、知勇兼備の将で国民的ヒーローです。
旗印である六文銭は冥銭を表し、亡くなった人を葬る時に棺に納める六文の銭を意味し、三途の川の渡し賃のことです。これを旗印にすることは「不惜身命(自らの体や命も顧みない事)」を意味すると言われています。
コロナ禍のあと、世の中が動き始める時に、東流も一致団結し、無事に山笠を奉納して、博多の町が活気を取り戻す手助けをしたいと願っております。

ちなみに、東流は飾り山笠のほうも真田信繁が題材となっているため、1度で2体の真田信繁を見ることができます。

四番山笠 中洲流

龍鬼願安寧りゅうきあんねいをねがう (人形師:溝口堂央)

古来より日本では鬼は畏恐の対象としてだけではなく魔除けや守護の神として崇められていました。
その鬼と天に登り 運気を上昇させる龍が力を合わせて昨今、色々なことが起きているこの世を穏やかに何事もなく安らかになる様 願いを込めて作成致しました。

五番山笠 西流

強弓一箭裂鬼神ごうきゅういっせんきじんをさく (人形師:西川直樹)

源為朝は、1139年源為義の八男として生まれ、のちに平氏を滅亡させる源頼朝、義経の叔父にあたります。身長は2m以上。左腕は右腕より12cm長かったと伝わります。正に強弓を使いこなせる体格と云えます。幼い時から乱暴者で、13歳の時に勘当され九州の豊後に追放されますが、並みいる強豪たちを破って3年で九州を平定し、自ら鎮西八郎と名乗りました。後、保元の乱で敗れて肘の筋を切られ弓を使えないようにされ、伊豆大島に流されました。ところが傷が癒えると又暴れ始め、10年後には伊豆七島を支配します。この事態に為朝追討の院宣が下り、20艘の軍船で攻めかかると、為朝は強弓一本で一艘の軍船を沈めてみせ、その後、館で切腹したといわれます。
しかし為朝の人気は高く、琉球へ逃れ、為朝の子が初代琉球王になったという異説もあります。
為朝の強弓で、この世にはびこるあらゆる災いを、豪快にうち砕いてもらいたく、今年の標題としました。

六番山笠 千代流

表 日輪幸慶博多照にちりんこうけいはかたをてらす (人形師:川崎幸子)

イザナギの禊ぎによって生まれたアマテラスは、太陽を司る女神となり、伊勢神宮をはじめとした各地の神社に祀られている。
「母の国へ行きたい。」と泣き喚き、父のイザナギから国を追放されたスサノオは、姉のアマテラスに会うために高天原に登ってきた。たちまち山や川、国土全てが鳴りどよめいた。驚いたアマテラスは、髪を「みずら」に結い、髪や両手に勾玉や数珠状の球を巻き付け、背には千本、胸には五百本の矢を身に着け、弓を振り立て待ち受けた。(見送りに続く。)

見送り 俊豪誓約清明証しゅんごううけいせいめいのあかし (人形師:川崎修一)

スサノオは「やましい心無し。」と証明するため「誓約」という誓いを立てた。こうした事があって、スサノオの十拳の剣からは三柱(宗像三女神)、アマテラスの勾玉や玉飾りなどからは五柱の神が生まれた。
誓約で優しい女の子が生まれたので、清らかな心が証明されたスサノオは「異なる心無し。」と図に乗って暴れ始めた。恐れを成したアマテラスは天岩戸に籠ってしまった。神々は相談し、スサノオは追放され、出雲国に降った。この後、八岐大蛇退治のお話に繋がっていきます。

見送り

博多祇園山笠の長い歴史の中で、舁き山の人形制作に初めて女性の人形師が起用されました。川崎幸子さんと修一さんは姉弟でもあります。

七番山笠 恵比須流

青天白日怒雷奔せいてんはくじつどらいはしる (人形師:人形司武平)

白日の上る青天に突如として響きわたる雷鳴。それは、見るものすべてを置き去りにする目にも留まらぬ心のはたらきを表しています。
源頼光といえば、やはり大江山での酒呑童子退治が有名です。鬼たちの酒宴に混ざり、一瞬で討ち取ったその早業は、まさに青天の霹靂、電光石火の境地と言えるでしょう。

八番山笠 上川端通

表 慶 歌舞伎十八番押戻かぶきじゅうはちばんおしもどし (人形師:田中勇)

桜満開の紀州道成寺。清姫の化身だった大蛇に鐘を焼かれて長らく女人禁制となっていた。
ようやく新たな鐘が建立され、鐘供養が行われる中、二人の白拍子が現れ、舞を舞う事を条件に、寺内に入ることを許されます。
二人は踊りながら鐘へ近づき、鐘の中に飛び込んで姿を消します。
やがて鐘が引き上げられると、白拍子から本来の蛇体の姿となった清姫の亡霊が現れ、そこに筋隈の隈取に、鋲打ち胴着に三本太刀を差した荒事の扮装に、蓑を着て、竹の子笠と魔除けの青竹を手にした大館左馬五郎が現れ、清姫の亡霊から本題に押し戻します。
この場面を「押戻し」と言います。

見送り 外郎売ういろううり (人形師:田中勇)

富士の裾野で行われる巻狩りの総奉行に任命されていた工藤左衛門祐経は部下らと富士山の麓の大磯の廓で、大磯の虎ら多く遊女を従え、酒宴を始めようとしてます。
そこに外郎売りが現れ、有名な長台詞の言い立てをよどみなく語って居並ぶ面々を感嘆させます。
実はこの外郎売りは、工藤左衛門祐経に父を殺害された曽我五郎時致。曽我兄弟の弟です。
曽我五郎時致は工藤左衛門祐経につかみかかろうとしますが、周りに止められてしまいます。
更にそこに兄、曽我十郎祐経が現れ、ともに父の仇を取ろうとする祐経に襲い掛かろうとしますが多くの部下に守られた祐経に届きません。
敵を目前にして悔しがる兄弟を見た祐経には、その心意気に打たれ、この巻狩りの務めを終えたら兄弟に討たれようと約束します。

見送り

以上、全7流に舁き山笠の紹介でした。
その他、飾り山笠のほうも機会があれば…。

☆ 山小屋の場所

今年度の舁き山笠の山小屋の場所は下の地図のとおりです。
千代流と恵比須流が若干離れているくらいで、他の流は比較的近くにありますので見物しやすいのもいいですね。(いずれにしても徒歩や自転車で巡ることができる範囲です)

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