東洋医学で社会をイノベーションするためのアントレプレナーシップ教育
東洋医学の知恵で社会問題を解決する
東洋医学と知識は病気の治療や健康の維持のために使われることが多かった。そのため、東洋医学を学んだ人の多くは治療家として、患者さんの施術に当たる人が多いのが実情です。
しかし、東洋医学の考え方は人の身体のことだけでなく、道徳的なことや自然の摂理など様々なことを教えてくれています。そこには、健康になるためでなく、社会を良くするための知識が沢山含まれています。そもそも、中国の唐代の名医、孫思の著書『千金方』巻一「診候」で「上医は国を医し、中医は人を医し、下医は病を医す」と記載しています。これは、西暦454年から473年にかけて書かれた中国の陳延之の著書『小品方』にある、「上医医国、中医医民、下医医病」、「上医は国をいやし、中医は人をいやし、下医は病をいやす。」からきていると言われています。
このように、やはり本当に患者さんを治そうとすると、病気ではなく、社会を踏まえて考えていかないといけないというのは、今の昔も変わらないのだと思います。
コロナ禍で社会的処方が必要不可欠になった
特にコロナ禍では、仕事を失った人やリモートワークや外出禁止により孤独になった人など、単純な肩こりや腰痛に見えても、社会的因子が背景に影響して生じていることも沢山あります。さらに、新型コロナウイルスの発生自体にも地球温暖化などの環境要因が関係していると考えている人もいます。そう考えると、コロナ禍の病の多くは、社会的な因子を受けていることが間違えなく、病気を診るだけでなく、社会全体をみて、さらには社会自体を変えていくような行動を起こしていかなければいけないのです。
特に東洋医学の使い手である鍼灸師などは、身体を自然変化に例え、身体と環境の関係を強く意識した医学であることから、身体の視点から環境や社会を変えることができるのではないかと考えています。
学内ベンチャー企業で社会問題を解決する
そこで、我々は「健康行動で社会問題をイノベーションする」をスローガンに、健康になるために不便を楽しむという「不便益」の精神のもと京町屋での暮らしや地産地消、山登りなど東洋医学の健康観「養生」と掛け合わせて、過疎地を活用した新しい健康コミュニテーの形成に力を入れています。そして、その「養生」という不便益システムを学問化するために、企業からの寄付を頂き、養生学寄付講座を開設、さらには不便益をシステム化するためのアプリケーションの開発を行うための学内ベンチャー企業「YOJYOnet(株)」を設立し、患者さんの治療だけでなく、社会を変えると取り組みを始めています。
参考記事:不便益とは?
https://note.com/yojyo1192/n/n2c499c29b1cb
企業家を育成するためのアントレプレナーシップ
アントレプレナーシップ(英:entrepreneurship)とは、新事業や新商品の開発などに高い創造意欲を持ち、それに先立つリスクに対しても果敢に取り組んでいく姿勢や発想、能力などを持つ”企業家精神”のことを指します。独立心や達成動機、独創的な発想力などが中心となっており、”企業家精神”を持つ人材の需要が高まっています。
そこで、私の在籍する明治国際医療大学鍼灸学部では、治療家や研究者、教育者の育成だけでなく、東洋医学の視点を持って、社会問題を解決する起業家を育成するアントレプレナーシップ教育を養生学寄付講座で始めています。テーマは「健康になるための力で社会問題を解決する」ということで、健康と絡めたエコツーリズムの開発、小学校や幼稚園などの子供の教室、食糧問題や環境問題を解決するための農作業システムの構築などを手掛け始めています。
このように、患者さんを治すから、社会問題を解決するへ、新たな挑戦を学部あげて行っています。
明治国際医療大学養生学寄付講座
https://www.meiji-u.ac.jp/pub/curingscience/
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