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 本日は、食事から環境問題を考えてみたいと思います。
 食事が健康に害を及ぼす可能性があることについては、みなさんもご存じ多だと思いますが、食事が身体だけでなく、環境に影響を及ぼす可能性があるということをご存じでしょうか?
 例えば、週に一度しか肉を食べないことで、死亡率を下げるだけでなく、自動車の走行距離750億kmに相当する二酸化炭素の排出量を削減することができるという研究報告があります。
 肉食を減らすことが健康に良いことは何となくは理解している人も多いと思いますが、環境に影響を及ぼしていることはそれほど話題にはなっていません。そこで、今回は食と環境を深堀してみます。

何を食べたらよいのか?
 健康で長生きするには、日本人の現在の食生活が良いということは良く知られています。長生きの秘訣は動物、植物たんぱく比1:1で摂るのが良いとされています。 過去に行われた100歳老人の食事調査でも、食肉 などの動物性食品の摂取量の多かったとのことです。
 そこで、種々の食品の温室効果ガス(GHG)排出量や原因を知り、どの様な生活が良いのかを考えてみましょう。 

肉の温室効果ガス
 肉は二酸化炭素CO2などの地球温暖化の原因となる温室効果ガス(GHG)の排出が多いと言われています。具体的には、畜産用の飼料生産、飼料運送、ゲップ(腸内発酵)、育成など、様々な部分からCO2が排出されています。ちなみに、使う飼料や育成の仕方などのプロセスに依存してGHG排出が違ってきます。多くの生産方法を比べると傾向が分かり難くなってしまいますが、一般には、肉類では、鶏肉、豚肉、牛肉の順番にGHG排出が大きくなっています
 牛は腸内発酵に伴うゲップ(メタンガスCH4)が大きなウエートを占め、鶏や豚と比べて、GHG排出が大きい。羊は牛と同様に腸内発酵に伴うゲップ分が大きく、かつ、牛に比べて食用可能な部分が少なく、可食可能なkg当たりのGHG排出が牛より大きくなります。また、老廃物(糞ふん便、尿など)処理も重要です。温室効果が大きなメタンガスCH4(二酸化炭素CO2の25倍)や一酸化二窒素N2O(二酸化炭素CO2の310倍)が生成するので発生を抑制するのが要と言われています。更に、スーパーなどの冷凍庫の電力使用および食肉の廃棄に関するGHG排出量も検討されています。よって、GHG排出のデータの比較には、LCA(Life Cycle Assessment=ライフサイクルアセスメント)と言っても、どの項目まで検討されているか、どのように育成したかなどの詳しい条件を知る必要があります。


食品の二酸化炭素CO2などGHG排出量の比較
 各食品とCO2に関係を以下にまとめてみます。
・穀物では、米:1.3が小麦:0.45より大きいとされています。米は稲作に伴うメタンの発生がGHG排出を大きくしているようです。
・畜産品では、鶏肉:2.5、豚肉:3.8/5.3(国産/輸入)、牛肉:15.2/13.5(国産/輸入)と大きくなっています。
・魚類のさけ・ます、さば、さんま、ぶり類では、0.7から2.3程度。まぐろが4.3と飛びぬけて大きいようです。養殖を除いて、GHG排出のほとんどが漁船の燃料によるものです。また、・小型魚のGHG排出の比較では、養殖魚が多いアユなどはGHG排出係数が大きく、豚肉並みとなっています。他方、休耕田を利用して養殖するモロコは魚体全体が食べられ、GHG排出が少なく良いとされています。
・野菜や果実はほとんどは1以下。例外は、冬春トマト:1.6、冬春きゅうり:1.7、冬春ピーマン:3.5、冬春なす:1.7、ハウスみかん:10、いちご:4など、ハウス栽培によるものはGHG排出量が多くなります。
 ※:以上の数値の単位は、「kg-CO2/kg」です。

以上から、結論としては、GHG排出の観点から、
①一般には、輸送に伴うGHG排出が少ない地産地消が好ましい
②ハウスものはGHG排出量多くなり、路地ものの旬なものを頂くのが良い
③鶏肉、豚肉、牛肉の順にGHG排出が多い
④マグロを除き、魚は鶏肉と同レベル
⑤米はGHG排出が麦の2-3倍と多い
⑥野菜はGHG排出が少ない
ということになります。

まとめ
 食事は毎日必要なものです。その分、その影響は身体にも地球にも大きいと言えます。近年では身体のことを思って食事を注意する人は増えてきたと思います。しかし、まだ環境を意識して食事を選んでいる人とは日本では少ないのではないでしょうか?しかし海外では、若者を中心に環境問題を意識して食事を行う人が増えています。
 そう考えると、これからは「ダイエットしているからカロリー控えるわ!」から、「環境を意識してCO2排出が少ないもにするわ!」と言えるような世の中を作りたいですね。


参考資料:
資料1)栄養面から見た日本的特質
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/eiyo.html

資料2)はつらつ家族のヘルシーパートナー「タンパク質特集」
http://www.jmi.or.jp/common/download.php/ヘルシーパートナーNo.09%EF%BC%88バックナンバー%EF%BC%89.pdf?id=MjI2

資料3)鶏肉のCO₂排出量の算定
http://gakuen-hachioji.jp/wp-content/uploads/P030.pdf

資料4) 食 肉生 産 シ ス テ ム に おけ る環境効 率 と環境影響評価
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jietaikaiyoushi/24/0/24_288/_pdf/-char/ja

資料5)ラム肉と牛肉の比較
https://www.ewg.org/meateatersguide/a-meat-eaters-guide-to-climate-change-health-what-you-eat-matters/climate-and-environmental-impacts/

資料6)食料生産の二酸化炭素排出係数 -ホンモロコの養殖-
http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~wwb1046/syokuhin2_oogaki_0419.pdf

資料7)日本の主要食料消費における温室効果ガス排出のライフサイクル分析と その削減ポテンシャルの評価
http://www.ritsumei.ac.jp/se/rv/amano/pdf/2009KKS-yoshikawanaoki.pdf

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