地球環境と食事の関係

 毎年1月、一カ月にわたってヴィーガン(完全菜食)向けの食事をとり続けようと呼びかける国際キャンペーン「ヴィーガニュアリー(Veganuary:VeganとJanuaryの合成語)」が2014年から開催されています。

ヴィーガニュアリーの背景
 ヴィーガニズム(完全菜食主義)への関心が高まっている背景には、肉の消費が気候変動に及ぼす影響に関して環境科学者たちが警告していることと関係しているようです。
 特に、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年10月に報告書を発表したことで、食生活を変えることに対する個人の関心が高まったと述べています。IPCC報告書には、個人の生活を変えることについての提案も含まれています。2015年のパリ協定で定められた摂氏1.5度未満という目標値を達成するためには、企業だけでなく、個人の努力が必要であるとしています。そして、具体的な提案としては、肉の消費量を減らす、飛行機の利用を減らす、車での移動を避けるということだそうです。
 これまで環境問題は、企業や国の責任と思われていましたが、今や企業レベルでは対応できないため、個人にもその責任を考える時期にきたといえるでしょう。このように、気候変動と環境への懸念は確実に、食事を植物中心にしようという強い動機付けとなっています。地球の健康のために、われわれが食べる食事を見直すという、切迫した理由があるため、世界的に広まっているようです。

食肉と環境の関係
 2013年に英ランカスター大学が中心になって行なったある研究によると、個人の食事から肉を取り除くと、温室効果ガスの排出量は35%減少するそうです。また、牛肉やラム肉のような炭素集約度が高い肉を、鶏肉や豚肉に換えれば、1人当たりの排出量を18%減らせるといいいます。
 また、2018年10月に発表された、英オックスフォード大学が中心となった研究では、すべての国のデータに基づいて、食料消費が環境に与える世界的な影響が分析されています。そこで、今世紀に世界の気温が2度以上上昇するのを防ぐには、平均的な人が摂取量を牛肉で75%、豚肉で90%減らす必要があると示唆されているのです。
 そこで、研究を率いたマルコ・スプリングマンは、食料税を提案しています。生産に必要な排出量を反映する税金であり、これを取り入れれば、牛肉の価格は40%、他の肉の価格は20%上昇するといいます。

豊かさと肉食
 経済協力開発機構(OECD)によると、世界の中流階級は、2009年の18億人から2030年までに49億人に増加すると予想されています。そして、中流階級が増加すると、肉に対する需要が高まります。予測によれば、家畜の肉に対する世界の需要は、2050年には2010年の1.8倍になる可能性があります。
 肉に対するこうした中流階級の需要を左右するのは、「豊かさ」に関する欧米的な認識であると指摘されており、文化が変わらないと、肉断ちは受け入れられないと指摘されています。その中では、「われわれは、マイカーを運転し、マイホームを持ち、肉を食べよう、という価値観を作ってしまいました。したがって解決策はおそらく、豊かな食生活というものがどういうものなのかについて、世界の中流階級が認識を変えることにあるでしょう」とメルボルン大学のエッカード教授は述べています。

食肉を減らす動きが世界でも
 地球に優しい生活行動をしたいと思っている北欧各国の市民からは、「商品が出す排出量を数値で知りたいが、わからない」という声が以前から出ていました。その声にこたえて、二酸化炭素などの排出量を意味する「カーボン・フットプリント」(炭素の足跡)を、商品の包装に明記する企業が出始めています。
 そして、欧米では、植物性たんぱく質で作った人工肉が定着しつつある。その勢いは、ファーストフード店にも広がってきました。アメリカで人気のファーストフード店バーガーキングが、今月牛肉を使っていないハンバーガーの販売を開始した。シリコンバレーのベンチャー企業インポッシブルフーズと共同開発した「インポッシブル・ワッパー」という商品です。
 同社の主力商品のハンバーガー「ワッパー」と見た目は変わらないものの、100パーセント大豆由来の人工肉を使い、脂質は15パーセント低く、コレステロールは90パーセントカットされています。トランス酸脂肪も含まれていない代わりに、値段は、5.59ドルと普通のワッパーより1ドルほど高い。そして見た目だけではなく、味もほとんど普通のハンバーガーと変わらないのが、人気の秘密といいます。
 大豆の根から抽出されたヘムと呼ばれる物質を配合させることで、肉独特の鉄の味を作り、肉汁滴るパティを再現した。売れ行きは上々で、フロリダやカリフォルニアからその味を試したくて買いに来る人もいるそうです。
 日本でもこのbeyond burger(ビヨンドバーガー)は人気を集めており、今後様々な分野で取り入れられてくると思われます。

まとめ
 ヴィーガン(完全菜食)という考え方は、単にお肉を食べないという宗教的な意味合いよりも、環境対策としての側面が強いと考えられます。それは、お肉をはじめとした畜産物が、CO2を大量に排出し、地球環境を悪化させている要因の1つであるからといえます。そして、環境問題は今や国や企業のレベルでは間に合わず、個人レベルでの協力が必要となる事態です。そんな中このヴィーガンというスタイルが、世の中に広まりつつあるのだと思います。
 健康と食事は関連が深い事象ですが、食事と環境も関連が深い事象です。そう考えると、健康を考えるということは、強いては地球環境を考えるということであり、我々は養生という生き方を進めている以上は環境問題にも積極的に協力していく必要があるのだと思います。そのため、YOJYO Do-JYO(養生道場)のテーマは「健康行動で環境をイノベーションする」なのです。今後は、環境に優しい健康法を紹介していきたいと思っています。

参考資料
https://www.buzzfeed.com/jp/elfyscott/heres-why-more-people-are-going-vegan-1
https://japan-indepth.jp/?p=45427


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