言葉の宝箱 0935【才能。人がその言葉を口にするのは、結果からその人間を見るからだ】
『再生巨流』楡周平(新潮文庫2007/12/1)
組織というものを甘く見ていたのかも知れない。
抜群の営業成績を上げながら、
スバル運輸の営業部次長、吉野公啓は左遷された。
ピラニアと陰口される仕事ぶりが、社内に敵を作っていたのだが、
打ちのめされた吉野は同じように挫折を味わっている男たちと共に、
画期的な物流システムの実現に自らの再生を賭ける。
ビジネスの現場を抉った経済小説。
・スジいいアイデアというものは、
何度もデッサンを繰り返しながら形を成していくものではない。
全てのプロセスをスキップして一瞬にして下絵ができ上る。
あとは最適な色彩を施し、完成させるだけだ P45
・最大の武器は、最大の弱点でもある P63
・組織と名のつくところで圧倒的多数を占めるのは可もなく不可もない
平均的能力しか発揮できない人間か、それ以下の奴らだ(略)
平均以下の人間は、いつ自分に降りかかるかもしれない、
時に非情ともいえる組織の定めの陰に怯え、ひたすら保身に走る。
一旦悪循環の連鎖に陥った者は
そう簡単にそこから抜け出すことはできない(略)
その一方で、勝の味を知った人間は、
最後の時まで決して諦めはしない(略)
仕事に対する執着心。
自分の能力を最後の時まで信じ切れるかどうかが勝敗を決する P73
・才能――。そんなものがあるかないかは、誰にも分からない。
人がその言葉を口にするのは、結果からその人間を見るからだ。
人は成功者、あるいは成功へのとば口を摑んだ人間を、
人纏めにしてその言葉で片づけようとする。
逆に、成功への階段を途中で踏み外してしまえば、
『あいつには才能がなかった』。
それまで誉めそやし、羨望の眼差しを向けていた人間が、
一転してその一言で、口を噤む。
才能なんて言葉はそれほど曖昧なものなのだ P123
・客も女も同じだ。
最初からこっちの手の内を全て明かしたんじゃ、獲物は逃げる P170
・苦しみの果てに自分が描いた絵が現実のものとなった時に覚える快感、
達成感……。こいつは何物にも代えがたい P172
・データ分析なんて大した頭はいらねえ。
極端な言い方をすれば単純労働。力仕事だ P468
・不安材料を挙げろと言われれば、幾らだって出てきます。
誰も気がつかないでいる落とし穴だってあるでしょう P478
・永遠の命などあるわけがない。
遅かれ早かれ人間は皆死ぬもんや(略)
人間には神様から与えられた人生を全うするというほかに、
もう一つ義務がある。人を育てるという大きな義務がな P557
・懸命に生き抜くためには(略)
正確な時代状況の理解と、
自らのポジションに関する冷静な状況分析が必要となる P568
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