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言葉の宝箱 0458【もう無理だ、オシマイだって諦めかけたとき、運命に逆らえって思えば、やっていける気がします】


『ふたりみち』山本幸久(角川書店2018/3/29)


元ムード歌謡の歌手で今は函館の小さなスナックのママ
野原ゆかりは本州をめざし津軽海峡をフェリーで渡っていた。
ある事情で抱えた借金返済のため、
昔のつてを頼ってコンサートツアーと称したドサ回りの旅に出たのである。船内で偶然知り合った同じ名前の
森川縁は12歳なのになぜかゆかりの唄に興味を持ちついて来てしまう。
彼女が母親と喧嘩して家出してきたことを知った
ゆかりは親に連絡させ最終目的の東京まで連れて行くことになるが、
彼女のコンサートツアーは行く先々で
トラブルが起き、ことあるごとに中止になってしまう。
中々ステージに立てないゆかりを支える縁。
2人は55歳の歳の差を超えていつか、固いきずなで結ばれていく。
そしてついに最後の会場、東京に着いたふたり。
ゆかりはここだけは絶対に唄い上げるつもりだった。
そこにはゆかりの悲しい過去が刻まれていた。
ピアフの『愛の讃歌』に乗せて描かれた長編小説。

・六十七年の人生、戸籍がキレイなまま、ひとりで生きてきた身だ。
自分と変わらぬ年の男女が寄り添うのを見て、
羨ましくないと言ったら嘘になる P5

・哀しみに暮れて酒に逃げるなんて、狡いと思いませんか P44

・長生きするのも考えものね。
自分の先行きも不安で堪らない。
昔ならばなるようになるわとうそぶいていたものが、
次第になるようにならないことに気づき、焦るばかりだ P45

・他人を面罵すれば、すっきりできると思ったが、
そんなことは全然なかった P236

・運命に逆らうのよ(略)
その言葉、イイなって思いました。
もう無理だ、オシマイだって諦めかけたとき、
運命に逆らえって思えば、やっていける気がします P347

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