見出し画像

言葉の宝箱 0363【大人になればなるほど、簡単には幸せになれなくなっていく】

古内03

『キネマトグラフィカ』古内一絵(東京創元社2018/4/27)

老舗映画会社に新卒入社した " 平成元年組 " 6人の男女が2018年春、
地方の映画館で再会する。
今はそれぞれの道を歩む同期の彼らが思い出の映画を鑑賞しながら
26年前に起きた " 全国フィルムリレー " に思いを馳せる。
映画がフィルムだった頃六人は自分の信じた道を
それぞれ必死に前に進もうとしていた。
フィルムはデジタルに、劇場はシネコンに。
四半世紀の間に移り変わる映画の形態。
そして映画と共に生きた彼らの人生もまた。
あの頃思い描いていた自分に今なれているだろうか。
追憶と希望、働く人の心を熱くするエンターテイメント。

・自分に気のない異性を相手に独り相撲を取る虚しさ P87

・大人になった途端、魔法はあっけなく解けてしまった。
シンデレラの馬車がカボチャに戻ったように、
宝ものだと思っていたものは、
全部他愛のないガラクタに変わってしまった(略)
大人になればなるほど、簡単には幸せになれなくなっていく P89

・やっぱり、違う。全然違う。けれどどこへ行けば、
“違わない”ものに出会えるのか、それがさっぱり分からない P90

・やりようがないのではなく、自分にはやれないのだ(略)
社会では、知識以上に、打たれ強さと、ある種の腕っぷしがものをいう。
自分には、それがない P123

・色々なことを棚に上げられるだけ上げて、それでも最終的には、
本当に世俗から切り離されるような生き方はできない P163

・長いものには巻かれればいいし、強いものには逆らわなければいいし、
相容れないものとは関わらなければいい(略)
本当に好きなのは、優秀な人ではなく、己をおだててくれる人のはずだ。
だったらそこを擽ればいい。
それが一番簡単で有効な、楽して生きていくための方策だ P175

・楽して生きていくなんて、簡単だ。
すべてを建前と冗談で済ませればいい P194

・持ってる人はね、最初からなにも気づかないの。
奪うばかりで、奪われる人の気持ちを知ろうともしないんだよ P255

・昔を懐かしいって思えるのは、今の自分に納得してるからなんだよ P268

・頑張れば、努力さえすれば、決して仕事は裏切らない――。
ずっとそう思ってきたんだけど、どうやら、そうでもないみたい(略)
既得権を固辞し、規律が乱れることを恐れる人たちの多くは、
往々にして自分に馴染みのない新奇なものを嫌う。
だから、少しでも違和感を覚えるものが現れると、
分かりやすい名目をさがして人まとめに括ろうとする。
そうしてしまえば、
多少は安心してそれを扱えると思うのかもしれない P273

・お手軽で結構。私は悟ったの。
理想通りのものなんて、この世界にはどこにもないって。
だったら加工して作ればいいじゃん。
そのほうが、違う、違うって、
ないものねだりしてるより、精神的にも楽だし P281

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?