死んで欲しい。3 あの時の君

僕はおしゃべりだけど、君も僕に負けないくらいおしゃべりだ。
僕たちはいつも話し始めるタイミングが同じになることが多く、
どうぞお先にとよく言っていた。

君との話は終わりが難しく、次の予定がなければいつまでも続いてしまう
そんな感じだった。

ある程度社会的に、年齢も地位も高くなる僕の年頃になると
誰も意見したり、否定したりしなくなっていく。
そこに君は年齢も立場も関係なく、ある時は先生のように諭し、兄弟のように励まし、親友のようにはしゃぎ、時には母親のように話してくる。
そんな君を何者なんだ?と時々僕はイライラしていた。

実際に君に会ったのは最初の打ち合わせの時だけあとは
世の中がパンデミックに襲われ、一気に日常化としたオンラインで仕事のやりとりを約2年以上していた。最初は複数でのプロジェクトだったのが、ここ最近は二人でのやりとりが多くなっていた。
その間も相変わらず仕事以上の関係はもちろん深まることなく、
僕が勝手に一人夜のお供にすることがもう日常化していたくらいで他は特に変わりなかった。

そんな中、挨拶がわりの近状報告で、君が近く私用で上京してくることになった。
「時間合えば、ご飯でも。」なんて社交辞令程度の約束が僕を狂わせていくことに僕も、君も誰も知らない。

僕自身も忙しく、念入りに予定を立てたわけでも君の日程を確認するわけでもなく、明日大丈夫だっけ?
そんなノリで、じゃ昼飯でも。
どこに泊まってるの?近くまで迎えにいくよ。
そうやって僕は当日、君を迎えにいったんだ。

人混みの中にいた君を僕はすぐに見つけることができた。
だって前に一度探したことがあるあの君なんだから。




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