死んで欲しい。4 左側の顔

駅で待ち合わせなんて久しぶりだ。
僕は初めてのデートをするような緊張感と高揚感で待っていた。
君はペコっと会釈して、ニコッと笑いながらこっちに向かって走ってきた。
あー僕にはデジャブなんだけれど君は気づいていないよな。

「久しぶり、元気?
オンラインでは合ってるから久しぶりな感じはしないけどね。」
内心、リアルの方が断然いいよと心の中で言いながら
僕らはお店へ向かった。

 老舗の料亭で昼御膳を食べた。
君は昼間っから贅沢だと言いながらビールも飲んでいた。
飲まない僕はちょっと頬が赤くなっていく君を正面からみながら
なんとも言えない幸せを感じていた。

 君といる時間は不思議だ。
箸も止めずに、会話も止むことなく、全てがスムーズに流れていく。
食事も会話もどちらも充実してるんだ。

なんだこの充実感は。
この不思議な充実感と幸福感をまだまだ味わいたい。
まだ終わるべきではない、君とのこの時間。

ご飯はきれいに食べ終った頃
「コーヒー飲みに行こう!」
君の予定や行きたいお店など聞かずに僕はすぐ近くのラウンジへ軽やかな足取りで君を連れて行った。
だいぶ軽かった足取り、もしかしたら僕はスキップしていたかもしれない。

街が一望できるラウンジで、僕たちは肩を並べて座った。
自然に僕の右側に座った君。
僕から見える君の左側の顔。
僕の一番好きな顔なんだ。

やっぱりそうだ。
昔あの時、僕の右側でみたことのある君の左側の横顔。
その泣きぼくろ、
やっぱり君だよ。





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