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追伸、月子です。〜シンクロ現象 〜No.6

「 観察しにきました!!」

「 観察??!」

予約した者以外の者が後ろから現れ 唐突の発言に ご婦人はさぞ驚いた様子だった。

ご婦人名は 桜という。

20年近く勤めた職場を辞め いまはこの仕事一本でやっているとう。看板は上げていない。口コミだけの 知る人ぞ知る名店なのだ。

初対面の挨拶を交わすなり 勢いよくお手洗いを借りる冥子、その後に続く月子。
お手洗いは外の一角にあり 簡易水洗である。
流れが悪いらしく 便器のすぐ近くには取っ手付きの器に入った水が備えてある。

用を足した冥子と月子は 桜のもとへ戻った。
扉が開き 新たな空間がひろがる。クリアというか空気の澄み切ったような混じり気ひとつ無いスペースだった。こじんまりとした一室には 中央に施術用のベッドが置いてある。

月子は腰掛けを案内され すぐ横の籠のなかへ荷物をやると椅子に座る。ご婦人は 「 2時間待つには退屈するだろうけど 」と気にかけてくれた。承知の上でやってきた月子は気にした様子すらない。

それから桜は 入口の前に立ったままの冥子の背中に 手を当て無言で全集中している。

そのあと冥子は ベッドに案内されると 仰向けになり 施術が始まった。はじめに首から 頭、耳にかけて 桜がほぐしていく。月子は いつカメハメ波が出るものか 魔術はもうかけられているのか 目の前の様子を慎重に見守る。

月子の視線に気づいた桜が話かける。
すると、どうやら意識療法なるものとは カメハメ波でも魔術でもなく 目をひん剥くほどの覚醒でもないようだ。気を送りながら ほぐしていくものらしい。

気を送るとは どういうことなのだろう。
普段から目に見えない世界を近くに感じている月子にとっては これまた興味津々だった。

施術が冥子の胸あたりに差しかかる。すると冥子が咳込み 桜も咳込む。月子も引っ張られるように咳込む。桜が「 普段、呼吸しづらいでしょう?」と たずね 冥子はその通りと返事をする。

桜は冥子の胸の内を外へ放つかのように ほぐし続けていく。会話のなかで冥子が 「人生山あり谷ありで… 」と涙ぐむ頃には またまた引っ張られるように月子まで涙ぐむ。

冥子がほぐされれば ほぐされるほど 月子の体は軽くなっていった。ついには眠くなってしまう程に。さらには 起きている状態と寝ている状態の狭間のような感覚になっていって それはサウナから水風呂その後の外気浴その時に頭がパッカーーーン!となるアレと似ている。

まるで自分が施術を受けているかのような月子。
シンクロとも言えるこの現象は 一体何であろうか。
見えない何らかの波のようなものが振動しているのであろうか。月子は不思議でならなかった。

宵のマリー☪




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