見出し画像

神様仏様、夫様 #1「新幹線のホーム」

夫婦の日常を気まぐれで綴ります。
発言や感想はあくまでも個人の主観です。

新幹線で東京に行くため、新大阪へ。
この日は休日。お昼までに到着するようにしたから出発は午前中だ。

今回、夫はお留守番。なのに、新大阪までついていくという。
一緒に家をでると、私のスーツケースを転がしてくれる。大した荷物は入ってないけれど、大きなバッグをもって駅の階段を登ったり降りたりしなくていいので楽ちんだ。

新大阪は、朝からたくさんの人で賑わっている。人混みを避けながらお土産を物色し、大阪っぽいお菓子と、車内で食べるおにぎりを買う。その間夫はすみっこで荷物番だ。

出発時間が近づいてきたので、在来線から新幹線に乗り換える改札に向かう。私はEXカードとPiTaPaを重ねてタッチすれば入れるが、夫は入場券が必要だ。
改札横の券売機で切符を買おうとしたら、カードを入れろと表示される。在来線のICカードを入れなければ入場券が買えないらしい。

「JRで来たんですが、入場券はどこで買うんですか?」
「横の券売機で買ってください」

「ICカードじゃなくて、スマートウォッチで来た場合はどうすれば?」
「一度、改札をでて外の券売機で買ってください」

この時点で出発10分前を切っている。

「もう時間ないから、お見送りはここでいいよ」
「うん、気をつけて。行ってらっしゃい」

カードをタッチして改札をとおり振り返ると、さっきまですぐそこにいたはずの夫の背中が遠くに見える。人混みをかきわけて、どんどん後ろ姿が小さくなる。
私はLINEで「13号車だよ」と送る。

既に到着している列車に乗り、指定席を探す。スーツケースを座席の前に置きホームに出てしばらく待っていると、LINEにメッセージが来た。

「もう間に合わないから、入場券はあきらめる。楽しんできてね」
「うん!ありがとう」

***

新幹線が出発してしばらくすると、夫からLINEが届いた。

「ホームまで見送りできなかった。これが今生の別れになったらどう責任とってくれるんだ、って要望窓口に送っておいた」

今生の別れって、私死ぬんかいと思いながら、
「パワーアップして元気に帰ってくるよー」と返信した。

***

数日後、新大阪駅まで、仕事帰りの夫が迎えに来てくれる。
夫の好きなお土産が詰まったスーツケースは、行きよりも少しだけ重くなっていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?