第4回目の参考図書のご紹介は、向後千春『上手な教え方の教科書~ 入門インストラクショナルデザイン』(技術評論社、2015年) 2016年

参考図書の紹介記事から

あるところで、研修のための参考図書の紹介を書いていました。その時の紹介記事を再掲していきます。

第4回目の参考図書のご紹介は、
向後千春『上手な教え方の教科書~ 入門インストラクショナルデザイン』(技術評論社、2015年)

「教えること」を教える先生が書いた、教え方の教科書です。「教えることの科学と技術」であるインストラクショナルデザインの理論が、やさしい説明とマンガでわかります

「はじめに」には、次のように書かれています。

本書で解説するインストラクショナルデザインとは、「教えることの科学と技術」です。この本を手にしている大部分の人は、 「教える」ということを職業にしている人ではないかもしれません。たとえ、そういう人であっても「教えることの科学と技術」を学ぶ必要があるのでしょうか。答えは「Yes」です。教えることを仕事にしている代表は学校の先生ですが、先生でなければ教えられないということはありません。
それどころか、仕事でも日常生活の中でも、私たち全員が「教える」という行為をしなくてはなりません。たとえば、子どもに勉強を教える、職場で新人に仕事を教える、おじいちゃんにケータイの使い方を教える、などなど。そして、もしうまく教えることができたら、相手は喜び、仕事ははかどり、教えた私たちも喜びを得ることでしょう。
インストラクショナルデザインは、私たちが誰かに何かを教えなければいけないとき、「効率の良い上手な教え方」を提供してくれます。単なる経験則や人生訓ではなく、科学的に効果的な教え方を追求するのがインストラクショナルデザインという学問です。この本では、インストラクショナルデザインの考え方、理論、そして実践への応用について説明しています。

本書の目次構成は以下のようになっています。

第1章 インストラクショナルデザインって何?
第2章 運動技能のインストラクション
第3章 認知技能のインストラクション
第4章 態度のインストラクション
第5章 ニーズ分析とゴール設定
第6章 リソース、活動、フィードバックの設計
第7章 評価の設計

本書では、運動技能のインストラクション、認知技能のインストラクション、態度のインストラクションの3つについて解説してあります。

運動技能のインストラクションとは、身体で覚えるスキルで、仕事で言うとパソコンやオフィス機器の使い方、資料整理の手際のようなもので、身体で動作して覚えるものインストラクションです。運動技能のインストラクションに必要なことは、スモールステップと即時フィードバックです。

認知技能のインストラクションとは、頭を使って覚えるスキルで、報告書や企画書を書いたり、会議で議論することなども認知技能と言えます。頭を使うスキルを教えるときには、記憶と思考の仕組みを知ることが重要です。

態度のインストラクションとは、態度の育成に適したインストラクションです。

このように3つの技能に分け、指導方法が詳しく解説されています。最初にマンガで概観し、その後丁寧に解説がされていきます。具体的な方法が分かりやすく書かれており、かと言って単なるノウハウ本ではなく、考え方の基本的な部分や、根本となる学説についてもしっかり書かれています。

例えば、運動技能のインストラクションでは、具体的な指示について、以下のように書かれています。

トレーニングにおける指示は常に具体的でなければなりません。運動技能のインストラクションでは、特にそうです。たとえば、テニスの初歩では、ラケットの中心でボールをヒットさせるために、つい「ボールをよく見よう!」と指示してしまいます。これはスローガンとしては良いでしょう。しかし、具体的にどう見ればよいのかが学び手にはわかりません。そうではなく、「ボールの回転はどうだった?」とたずねます。ボールの回転を確認するためには、必然的にボールをよく見なければならないからです。

このように、実例をもとに、インストラクションのポイントが、分かりやすい言葉で、詳しく説明されています。

職場で指導育成する際にも、自分自身の今までの指導方法を見直すためにも、本書は役立つこと間違いありません。

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