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VOL.14寄稿者&作品紹介25 すずめ園さん

昨年5月の《BOOK LOVER'S HOLIDAY》でもたいへんお世話になりました、自由律俳句ユニット・ひだりききクラブのすずめ園さん。SNSを拝見すると、現在は文学フリマ東京38(5月19日)への準備で忙しそうです。今回は「寿々木ここねとひだりききクラブ」名義での出店。寿々木さんとすずめさんの2人でまとめた日記の他、“去年売り切れちゃって以来刷ってなかった『ヒペリカム』という個人の句集も紙をキラキラにして再販します!”とのこと。あっ、小誌も「ウィッチンケア書店」として仲俣暁生さん、木村重樹さんとの共同主宰で出店しますので、ぜひご挨拶させてください! さて、そんなすずめさんの今号への寄稿作は〈まぼろし吟行〉と題する、旅行記+俳句で構成された一篇。タイトルに“まぼろし”と付けたのは、同作が過去に体験したいくつかの旅を振り返りつつ、新たな俳句を加えてみた創作作品だから。この試み、とてもうまくいっていると思います(小誌をそういう「試しの場所」としてくださったこと、感謝!)。なんとなく、詩歌には詩歌ならではの(その世界を味わうための)ゲートウェイがあるようなイメージもあって、ふだん雑文読みしている人は、敷居的なものを感じるかもしれない。でもこの形式だとすんなり作品世界に導かれて、肝心な所で句を味わえるかも。すずめさん、オオタニサンみたいな二刀流が冴えてます。


“隣に居たターャジス先に去っていく”...作品前半に配されたこの句、バス旅行での雰囲気がとても感じられて好きです。ターャジス、句単体で接したら「?」でフリーズしていたかもしれない。トラックやバスの右読み文字って、いまや密かに世の中から消えつつあるのか。今号はほんとうに旅や散歩に関する寄稿作が多いのですが、なにを見てなにを感じるのか、ほんとうにほんとうに人それぞれ、なんだなぁ。

作品の終盤には能登半島も登場します。すずめさんからのお原稿が届いたのは2月初旬で、世の中では山本太郎議員が被災地でカレーを食べた云々騒動...の少し後のこと。この地名を記したことには筆者の思いも込められている、と入稿やりとりの過程で伺いました。みなさまぜひ小誌を手に取って、内容をお確かめいただければ嬉しく存じます。


ウィッチンケア第14号(Witchenkare VOL.14)発行日:2024年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりー/発行人の屋号)
A5 判:248ページ/定価(本体1,800円+税)
ISBN::978-4-86538-161-0  C0095 ¥1800E 

 サービスエリアには、用がなくてもバスが停車するたび降りるようにしていた。
 毎日何台もの車がやってきては、誰もを受け入れてくれるのに、そこに住む人はいなく、物や人を運ぶ往来の中にぽっかりと浮かぶ無人島を連想させる。深夜バスに運ばれてきたわたしはそこに流れ着いた漂流物となり、暗い孤島の中をさまよってみる。
 建物の中に入ってすぐのところに売店があったが、閉店後なので商品の棚には網がかけられていた。そこに並ぶお土産のお菓子を見て、まだバスが富山県すら出ていなかったことを知る。冷蔵庫にはおいしそうなご当地牛乳が冷えているのが見えるけれど、買えない。


~ウィッチンケア第14号掲載〈まぼろし吟行〉より引用~


すずめ園さん小誌バックナンバー掲載作品:〈人間生活準備中〉(第12号)/〈惑星野屋敷〉(第13号)
 
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