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VOL.13寄稿者&作品紹介22 吉田亮人さん

写真家・吉田亮人さんは、とにかく有言実行の人。ウィッチンケア第13号への寄稿作「写真集をつくる」は今年の始めごろ、吉田さんが奈良県立図書情報館で展示会を開催することを私(発行人)が知り、そのイベントと連動した内容でセルフパブリッシングにまつわる一篇では、と相談して決まったテーマでしたが、お原稿が届いて(2/13)から、ここ(本日は5/8)までの吉田さんの、怒濤の行動力が、もう凄すぎ! 作中に出てくる《現在制作中の「The Dialogue of Two」という写真集は、編集もデザインも印刷も製本も、そして本が入るスリーブケースもすべて僕自身の手でつくる手製写真集》が2月10日には完売、さらにスイスのImages Vevey Book Award2023の最終選考にノミネートされた、とSNSで知ったのが3月24日。その後、4月7日には《”Three Books”という写真集を主にしたインディペンデント出版レーベルを、ヴィジュアルアーティストのMoe Suzukiさんと立ち上げ、運営》との発表が。そして4月9日には、同レーベルから写真集「The Screw」を発行する、と。さらに、それと関連した展覧会を京都の室町通りにあるGallery SUGATAで4月15日から5月14日まで開催...(←イマココ)。最終日前の5月13日には、作家のいしいしんじさんとのトークイベントが控えています。

不肖私もWitchenkareというセルフパブリッシングを2010年から細々と続けていますが、紙(および紙のメディア)に関する環境は、ほんとうに変わりました。古い付き合いの友人とはときどき「全部スティーヴ・ジョブズのせいだ!」とか、冗談めかせて言うんですけれども、たとえば紙にまつわるあれこれ...それは鉛筆だったり鉛筆削りだったり消しゴムだったり定規だったり...いま自分のデスクまわりに置いてないし。そもそも電話がカメラになっちゃったわけだし(iPhoneは〈Phone=電話〉なのだろうか、という根本的な疑問)。カメラ/写真にまつわる状況もほんとうに変わっちゃって、ついこのあいだネット上で「DPEショップ」という言葉を見て、あれ、なんの店だっけ、とすぐには思い出せなかった。。。

吉田さんは《僕の場合、自分の写真作品の完成形は展示でもプリントでもなく、写真集だと考えている》と語っています。いまの時代、「吉田亮人」と検索すれば、とりあえず吉田さんが撮影した写真をネット越しに見ることは可能。でも写真作家が「私の作品の完成形は写真集です」と言い、みずから写真集を制作すると聞いて、心が動きません? 選択肢が増えたからこそ、「本物」とDiffusionの見極めに敏感な人も増えてくるはず。みなさま、ぜひ吉田さんの寄稿作を読んで、写真集ならではの魅力を再確認してください!

 デジタル全盛の時代に何ともアナログで非効率なやり方だなと我ながら思う。また、本は流通してこそという考えからすると、その真逆のことをやっている自分。
 しかし同時に僕の場合、このプロセスを通過すること自体が作品の強度を増す一つの方法だとも思っているし、決して大量に流通されて、消費されていくことだけが正しいとは思わない。
 最も大事なのは、写真集を手に入れた読者がずっと大切にしてくれること。そしてそのことによって作品が残り続けていくこと。僕の中ではその2点だけである。
 僕が感銘を受けてきた古今東西の様々な写真集もそうやって時代を越えて、世代を越えて「本」という形態で残り続けてきたからこそ出会えたわけだから。

〜ウィッチンケア第13号掲載「写真集をつくる」より引用〜

吉田亮人さん小誌バックナンバー掲載作品:〈始まりの旅〉(第5号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈写真で食っていくということ〉(第6号)/〈写真家の存在〉(第7号)/〈写真集を作ること〉(第8号)/〈荒木さんのこと〉(第9号)/〈カメラと眼〉(第10号)/〈対象〉(第11号)/〈撮ることも書くことも〉(第12号)

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