見出し画像

VOL.14寄稿者&作品紹介31 野村佑香さん

前号に掲載した〈おしごと 〜Love Myself〜〉では、「チャイドル」としてメディアでブームを起こした少女時代〜現在に至るまでの心境の変化について、率直に綴った野村佑香さん。第14号への寄稿作では、10年前に船旅で訪れた地中海の国々について、2024年の視点で振り返っています。今号、旅(そしてマイクロ旅ともいえる散歩)についての寄稿作が多く、私(←発行人)としては各々が記す旅先情報も然ることながら、「移動における視点/attitude」にお人柄が滲んでいるなぁと興味深く拝読したのですが、そのなかでも野村さんの旅は一番広範囲で、しかも、私がかつて立ち寄ったことのある町も掠っていたりして──近年は寄る年波(と円安)のせいで「ああオレはこの先一生日本国内から抜け出せなさそう」感強し──柄にもなくノスタルジックな気分にもなってしまいました。とくに、野村さんが“月が美しい夜”を過ごした(でもアクシデントにも見舞われた...)マルセイユ。。。私は1日しか滞在できなかったんですけれども、ああ、若かりし頃観た映画『ボルサリーノ』でロッコ(アラン・ドロン)とフランソワ(ジャン=ポール・ベルモンド)が夢を追いかけた町...って独りごちてスイマセン。でも、こんな気分にしてくださった野村さんに、改めて感謝です!


野村さんの船旅はマルセイユ(仏)から、スペインのバルセロナへ。実物のサグラダ・ファミリアを見ての野村さんの感想が、これは写真や映像では到底抱けないなぁ、とリアルに伝わってきました。“これだけ生命を感じる建物に初めて出会った。ガウディさんは地球上のすべてを建築物にしようとしているから、これだけ時間かかっちゃうんだ”と。...しかし、ほんとうに2年後に完成するのかな、Sagrada Família。

マジョルカ島...サン・ミゲル教会の、湧き水の修復作業についての逸話が胸を打ちます。キリスト教とイスラム教の歴史は2024年の世界情勢とも直結していて、おそらく野村さんも執筆時に、平和への思いが心中にあったのではと想像します。そして旅は、バレンシア〜マラガへと。印象的なのは作品終盤で野村さんが“だが、常に対岸のイスラム世界を感じ続けながらの旅だった”と書いていること。地中海っていうと、私なんかはつい「イタリアが長靴で出っ張ってる欧州の海」と考えがちですが...そうだよなぁ、地中海目線になれば、そうだよなぁ...ということで、みなさまにおかれましては、ぜひ野村さんの旅行記とともに、彼の地の成り立ちについて思いを馳せていただければ嬉しく存じます。


ウィッチンケア第14号(Witchenkare VOL.14)発行日:2024年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりー/発行人の屋号)
A5 判:248ページ/定価(本体1,800円+税)
ISBN::978-4-86538-161-0  C0095 ¥1800E


この旅番組のシリーズの最初の旅はイタリアだったが、アラブの方々の知恵を聞いていると、「発祥」「この場所といえば」といった私の知識の大元を知ることができた。自分の固定概念が揺らぐような心地だ。ジェラートはアラブの方々が作ったのが最初だ、とイタリア・シチリアで学び、パエリア発祥のバレンシアではお米やオレンジなどの果物はアラブの人たちが持ち込んだものだ、ということを教えていただいた(農家さんが今でも使用している灌漑用水システムもアラブの方々の知恵だ)。また、中世の貴族のような絹で作られた伝統衣装のドレス(有名な火祭りで人々が着る)を着させていただき、テンション爆上がりだったのだが、その絹の文化を持ち込んだのもアラブの人である。持ち込まれたものを、受け入れ発展させ広めるヨーロッパの方々も凄い。ただ、こうして旅してその国の「文化」というものも歴史とともに体系的に見ることが大事なのだということを学んだ。海と同じ様に世界が繋がっていると、実感する。

 ~ウィッチンケア第14号掲載〈地中海の詩〉より引用~

 

野村佑香さん小誌バックナンバー掲載作品:〈今日もどこかの空の下〉(第6号)/〈物語のヒツヨウ〉(第7号)/〈32歳のラプソディ イン マタニティ〉(第8号)/〈二人の娘〉(第10号)/〈渦中のマザー〉(第12号)/〈おしごと ~Love Myself~〉(第13号)


※ウィッチンケア第14号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!

 
【最新の媒体概要が下記で確認できます】



 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?