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2022年 メディアでの発信

医師が教える減酒のコツ


・メディア名: 日経グッデイ
・媒体:ウェブ
・公開日:2022年2月8日
・主な対象:酒害・酒量が気になる人
・解説: 
 取材し、記事を書いて下さったのは、葉石かおりさん。酒ジャーナリストの肩書を持つ方です。
 『酒好き医師が教える 最高の飲み方』という本を2017年に出されていて、丁寧に取材していただいた記事が収録されています。 仕事柄、飲酒する機会は多く、前著の取材の際も、「自分も飲み過ぎることがあります」とおっしゃっていました。
 本記事中では
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 筆者は12点で「有害飲酒」だった。「飲酒は週2回」と決めたものの、まだまだ危険性をはらんでいるようだ。確かに年末の飲み会で、酔っぱらって人の靴を履き間違えて帰宅する失態をおかしてしまった(恥) それでも完全に酒をやめようとは思わない。いや、酒飲みの多くは、自分の状況を知ってもなお、なかなか断酒・減酒を実践できないように思う。
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 と勇気をもって自己開示されています。 自身も減酒に取り組んでみて、良さも難しさも経験されたうえで取材をしていただき、丁寧に記事を書いていただきました。ありがとうございます! 
 サイトを見ると、人気記事のランキング(週間)で4位と、多くの人に見ていただいています。

  どうか、酒害軽減に役立ちますように☆彡

お酒をやめたい、減らしたい。何をすればいい? 減酒中の記者が、専門医に聞いてみた

・媒体:ウェブ
・公開日:2022年3月16日
・主な対象:酒害・酒量が気になる人
・解説:
 ハフポストの生田綾さんに取材していただいた記事が公開されました。    生田さんは2018年、山口達也さんの飲酒問題を機に、アルコール依存症について関心をもち、<アルコール依存症の実態とは?>という記事を書いてくれた方です。
 今回は、自身の大量飲酒が健康管理の大きな障害になっていることを認め、減酒に挑戦することを決断。拙著を読んで実践を始めた後、取材を受けるようになりました。
 「減酒にチャレンジして実感したのは、飲酒を自分でコントロールできるようになるのは想像以上に難しい。」(記事から)とのことで、取材では、実践している方法について助言も行いました。
 
 実は「酒害を減らさなくては! 減らそう!」と計画している時は、あまり意識しませんが、実は、酒量を減らしたり、禁酒すると、酒好きの人はQOL(Quality of Life 人生の質、生活の質)が急降下します。

 実際、「それまで飲むことが当たり前の生活を送っていたため、1日のご褒美として晩酌ができないことにどうしても物足りなさを感じてしまいます」という心境だったそうです。
 減酒を一時的ではなく長く続けるためには、QOLの回復を早くするかという工夫が大事で、拙著にも色々な方法を書きました。

 生田さんは、それらも実践しつつ減酒を続けるうちに、「毎日4〜6ドリンク」の時と比べて全体のアルコール摂取量は大幅に減っています。朝早く起きられるようになったとか、肌の調子が良くなったとか、飲まないメリットも感じています」と効果を感じるようになったそうです。
 素晴らしい実践だと感銘を受けました!

 酒害を減らす治療は、アルコール外来、減酒外来、飲酒量低減外来といった名称で少しずつ増えており、治療効果があることが立証されるようになっています。
 例えば、『アルコール関連肝疾患患者に対する内科医によるセリンクロ錠投与の飲酒量低減に対する効果』という論文があります。著者の堀江義則先生は消化器内科医として、この領域の第一人者です。
  この研究では、簡易介入のみでは飲酒量の低減に結び付かない人であっても、セリンクロ(飲酒抑制薬)を服用すると、副作用もなく通院を継続し 24週間の評価ができた症例(11例)の全例で飲酒量の低減と肝機能の改善を認めたという結果でした。

 今後の研究成果にも期待ができます!

コロナ禍と飲酒問題

・メディア名: 心と社会 53巻1号(No187) p82-88 日本精神衛生会
・媒体:広報誌
・公開日:2022年3月15日
・主な対象:精神保健に関わる専門家、関心がある人
・解説:
 日本精神衛生会は明治35年(1902)に創設された精神病者慈善救治会に端を発する、世界的に見ても長い歴史があるNPOです。理事も重鎮の方々ばかりです。その広報誌で<今日の依存症の動向>という連載が企画され、第2回目として掲載されました。
 飲酒問題を抱えた人がコロナ禍で職場や経済状況が悪化したり、リモートワークになって家に引きこもり、運動不足になると飲酒量が増えて問題が悪化することは容易に予想できます。しかし、予想できるからといって対処が迅速にはできません。臨床家として、もどかしい思い、無力感にさいなまされることが多かった2年間でした。
 そういう中、断酒会、AAの当事者や家族が、迅速にSNSで安否を確認し、オンラインでの集まりを立ち上げ、試行錯誤しながら運営する姿は感動的でした。
 コロナ禍はまだ続きますが、必ず乗り越えていけると信じ、経緯を記録にとどめておきたく寄稿させていただきました。

コロナ禍が本格化して2か月後にはイベントがオンライン化された。

アルコール依存症

・メディア名:読売新聞
・媒体:紙とウェブ


・公開日:2021年4月15日
・主な対象:アルコール依存症に関心がある人
・解説:
 読売新聞に<医療ルネサンス>というコーナーがあります。朝日新聞の<患者を生きる>と並び人気があります。そこで、アルコール依存症について5回の連載記事が出されました。


4月8日  アルコール依存症 1 ウイスキー1日で2瓶
4月9日  アルコール依存症 2 仲間と断酒生きる支え
4月12日  アルコール依存症 3 減酒で重症化を抑制
4月13日  アルコール依存症 4 「夫の問題」そっと背中を押す
4月15日  アルコール依存症 5 断酒が基本 減酒療法も

 5回目の記事は、全体が私への取材に基づく内容です。
 2018年、16年ぶりに「アルコール・薬物関連障害の診断・治療ガイドライン」の改訂版が出版され、断酒ではなく、減酒を目標とする治療が普及することが予測されています。
 アルコール依存症が重度になるほど減酒は難しく、断酒の方が、成功率が高いのです。しかし、「それでも、できれば断酒でなく減酒治療を受けたい」という方が多いです。
 医療として、減酒治療が可能な範囲を広げる試みはなされていますが、患者さんの側も、限界を知って、正しく活用していただきたいと考え、取材に応えさせていただきました。
 多くの人に活用されますように!

リモートワークでつい飲酒…コロナ禍で進行するアルコール依存症。どこからが病気? どんな人がなりやすい? 専門医に聞いた

・メディア名: ハフポスト日本版
・媒体:ウェブ
・公開日:2022年11月10日
・主な対象:酒害・酒量が気になる人
・解説:
 今年も11月10日~16日のアルコール関連問題啓発週間に合わせ全国でイベントが開催されます。忘年会、新年会シーズンを前にメディアによる情報発信も増えます。
 その1つとして、ハフポスト日本版から取材を受けた記事が公開されました。是非、御一読下さい。
 記事を読んだ方から、質問をいただきましたので、記事の補足としてお答えします。
質問1
 アルコールの依存性の高さは、違法薬物のモルヒネや覚せい剤と同程度以上という根拠は?

回答1
 次のスライドを御覧ください。

 その薬物を得られるまでレバーを押し続ける回数=依存性の強さ
と推測できるわけです。
 表の中で、ニコチンはタバコに含まれ、ジアゼパムは処方薬で合法です。アンフェタミンは覚せい剤の成分で違法です。
 サルでの実験結果が、人間にも、そのまま該当すると断言はできませんが、一旦、依存症になってしまうと、合法薬であるアルコールやジアゼパムの方が断薬が簡単ではないことから、当たらずとも遠からずだと思います。
 中高年のアルコール依存症の方に薬物使用歴を伺うと、「若い頃は、違法薬も色々試したけれど、値段が高いから、お金が続かず止めるしかなかった。処方箋も不要で安いからアルコールが止めるのが一番難しい」といった話を聞きます。そのため、アルコールを「ターミナル・ドラッグ」と表現することもあります。

質問2
 「飲酒欲求を日常的に感じなくなるまでには断酒期間3年」って、そんなに長くかかるものですか?

回答2
 次のスライドを御覧ください。

 連日大量飲酒をしていると、脳はアルコールに常にさらされている状態で活動して、生命を維持しなければなりません。アルコールの薬理作用は、麻酔薬に近いものなので、脳が興奮しやすいよう変化します。その状態で、突然、断酒したり減酒すると、精神的に興奮するような環境でなくても、脳は興奮してしまいます。これが離脱症候群です。急性離脱症候群は1-2週間でおさまるのですが、その後、6か月ぐらいは慢性離脱症候群が続きます。だから、断酒開始後6か月程度は、可能なら仕事を休むなどして、脳が受けるストレスを減らし、十分に休養させてあげることをお勧めしています。 
 以前から、「断酒が安定するには2-3年かかる」という体験談を当事者の方々から聞くことが多かったので、自分で調べてみました。

 私が外来で診ている患者さんに、VAS(ビジュアルアナログスケール)という方法で、過去1か月に感じた飲酒欲求の程度の平均を回答してもらった調査の結果です。相関係数が0.7以上は「強い相関がある」を意味します。なので、断酒期間が長くなるほど、飲酒欲求も軽くなり、断酒が安定するということができます。
 3年って、過ぎてしまえばあっという間ですが、これから断酒に取り組もうという人にとっては気が遠くなるような長さに感じるものです。だから、続けるためには仲間・助けてくれる人、飽きないための工夫など必要なことが様々あります。