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妖精の紙々

生活に欠かせない「紙」の素材、パルプ。
かつては木材性パルプが主流であったが、大量消費により生態系のバランスが崩れたため、近年は年間使用量に上限が設けられた。

私たち陽成製紙工業新素材研究課が森林探索を実施しているのは、規制対応のためにまだ見ぬ非木材性パルプを求めての調査というわけだ。

「課長!見たことのないパルプがいます!」

木材性パルプが激減した理由は、基本的におとなしく1か所に集まる性質ため捕獲が容易な点にある。
だが陸上移動性パルプや飛行性パルプはそうはいかないため研究も進んでおらず、まさに秘めた可能性は未知数だ。

そんな折、私たちの前に姿を現したのは、予想を超えた存在だった。

「あれは……私もこの眼で見るのは初めてだ……!」

スラリと長い四肢を持つそれは、高度な知性を感じさせる眼でこちらを見た。
森の妖精とも呼ばれる幻のパルプ、「エルプ」であった。

【続く】

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