北陸除雪伝説
「二谷の奥さん行方不明らしいよ」
「あの人も1年目だからなァ、やられたかもしれんな」
新幹線が開通してから数年、<裏日本>とも呼ばれるこの地域に移住してくる者も確かに増えた。
だが彼らの半数は1年目の冬を越すことができない。
「県道の融雪装置、今年は熱湯どころか強酸らしいぜ」
「マジか、コンクリが痛むぞ」
「春には補修の仕事が……」
『暴れ除雪車が出たぞォ―!』
振り向くと黄色い無人重機が雪をかき分けながら向かってくるのが見える。
俺はいつものように屋内へと避難しようとしたが、道路上に仁王立ちする男が視界に入った。
訝しむ暇もなく、その男は赤熱するママさんダンプをぶつけ、巨大な除雪車のオーガを粉砕した!
「何だアイツは……」
ここは鉛色の空から灰色の雪が降る北陸地方。
暴走した雪対策設備が人間を襲う、暗黒地帯だ。
少なくとも、今この時までは、そうだった。
【続く】
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