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元テーマパークマーケターが、西武ゆうえんちに行った感想
こんにちは、熊野古道でマーケターをしている大﨑です。
前職ではテーマパークマーケターとして、上流の戦略策定をメインにしつつ自社で下流の戦術をやっているマーケ集団に中にいました。大手広告代理店のストプラの方と切磋琢磨しながら頑張っていました。
今回はマーケターの仲間と生まれ変わった西武ゆうえんちを回ったのでテーマパークマーケターとして、マーケティングやオペレーションについても触れていきたいです。
西武ゆうえんちの簡単なプロフィール
全盛期は年間194万人の来場者数を記録していた『西武園ゆうえんち』も、近年は全盛期の1/4ほどに減少…。歴史あるテーマパークあるあるの脱却に向けた再投資として、森岡毅率いる刀が加わり2021年にリニューアルを果たしました。
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「西武HDは、昨年8月に『としまえん』が閉園。西武鉄道は、沿線に途中下車したくなるような駅がない上、観光スポットも乏しく、“ベッドタウンを走る電車”というイメージの払拭が急務でした。そのために取り組んだのが、所沢一帯のテコ入れです。池袋線と新宿線が交差する所沢駅に大規模商業施設を作り、西武球場も大規模改修工事を実施。そして“3本の矢”の最後の1本が西武園のリニューアルでした」
ここが凄かった西武ゆうえんち!
2021年当初、コロナ以前と比較してチケット売り上げが13倍に伸びたそうですが、僕が行った8月26日(土)はそこまで混んでないと思いました。(おそらく5000人~7000人規模ではと)
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それでも、親子だけでなく、Z世代のカップルや女性2人組なども見かける機会が多くとても勉強になりました。
【凄いと思った4つ】
①「古いイメージ」を逆手に取ったプロダクト設計
②古いままのアトラクションを活かすターゲット
③新たなターゲットをも取り込めるコンセプト
④資源配分がマーケティングのお手本
古いイメージを逆手に取ったプロダクト設計
正直屋外型の中~大規模テーマパークの100億円はたかが知れています。その中で全体を新品にリニューアルできない苦しさがあったと思います。
「古い=弱み」に捉えガチなイメージを「古い=強み」に転化したことが素晴らしいです。
【大﨑のメモ】
一見弱みに感じるものを強みにできる力は、トップマーケターやPRパーソンには必要な能力だと思います。
(例)ビンテージマンション
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レトロな世界感を作るために、入口からのこだわりにも注目しました。入口はかなり狭い印象を受けましたが、おそらく夕陽館と夕日の丘商店街を見せて世界観に入れる工夫だと思いました。
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逆にレオランドは最初見えない構造のため、子どもを連れて遊ばせる親の顔と懐かしさ(親)・新鮮さ(Z世代)を感じる世界感を行き来できます。
HPや館内案内など「レトロ・アンティーク」に統一したプロダクト設計が素晴らしいと思いました。
古いままのアトラクションを活かすターゲット
「古い=レトロ」に変換したとしても、古いアトラクションは古いです。でもそれはエンタメに越えた20~30代の世代であり、子どもたちは古いアトラクションを楽しんでいました。また100億円の投資の中で、この古さを解消することに予算を割けないでしょう。
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その意味で子ども=親をターゲットに外すことはできないでしょう。しかしその親が退屈せず、疲れない設計とコンセプトがなされています。
リニューアルテーマは「心あたたまる幸福感に包まれる世界」
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テーマパーク=ワクワク・刺激によってストレス解消を狙うことが多いです。しかし子どもを連れて疲れた親たちは必ずしも、刺激を求めているのではなく、小さな幸福感の積み重ねを求めているのかもしれません。
【大﨑のメモ】
ほとんどのサービスは「ストレス解消」の解像度が低いと思います。ストレス解消を図りたい人の感情の特定(悲しみ、怒り、恐れ…)とどんな方法での解消か(癒し、刺激、リラックス…)など解像度を上げましょう
新たなターゲットも取り込めるコンセプト
マーケティング=ターゲットを極限まで絞って狙うと考える人が多いですが間違いです。親子だけを取ると確実に赤字になります。
①パークのゲストキャパが大きいこと
②平日のベースラインを確保できないこと
が主な理由です。USJも映画好きのパークから脱却するため子どもエリアを作ったことは有名ですね!
パーク内でみたZ世代は「古い=新鮮」だと思います。つまり最初から仕組まれた「若者向けの昭和」だと思います。
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若者にとって「テーマパーク=非日常」ですが、「昭和=ファンタジー(非日常)」が刺さったと思います。実際Z世代を中心に「昭和レトロ」や「平成ギャル」などが流行っており昭和への好意度が高いです。
逆に昭和の負のイメージ(説教くさい)は取り除かれており若者も心温まって帰れるように感じました。
開業当初は7〜8割が若者だったとのことですが、私が行った日は7〜8割親子でした。
①夏休みの土曜日だから
②オープン当初からの話題性や広告・PRが弱くなっている
③若者向けの企画を生み出せない
【大﨑のメモ】
ターゲットを極端に狭められる=マーケとして勝ちやすいです。しかし狭めて埋まらないキャパがあるため、しっかりとターゲットを理解し、CEPやメンタルバリアを取り払うことを精緻に考える必要があります。これは僕がテーマパークから小規模宿(10室以下)や大規模宿のお手伝い(200室以上)を行う中で気づけた財産かもしれません。
資源配分がマーケティングのお手本
テーマパークの場合、リニューアルにお金をかけすぎて回収できないことがワーストシナリオ。事業の持続性のため既存のアトラクションを最大限生かす工夫と投資が少ない(人)をアトラクションにする工夫が素敵でした。
西武ゆうえんちの投資アロケーションで大きなパイをしてたのは下記の順番ではないでしょうか?
①夕陽館の4Dアトラクション(ゴジラザライド)
②夕日の丘商店街
③ショーキャスト
④レオランド
①夕陽館の4Dアトラクション
ウルトラマンザ・ライドの満足度は凄く高かったです。
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パークを代表する広告塔を作らないとマーケティングの柱ができません。新技術のライドでありながらウルトラマンの世界(昭和)に没入できました。出てくるキャラクターやショーキャストも少し昭和っぽくて新鮮に感じました。
②夕日の丘商店街
夕日の丘商店街はパークで大きな役割を果たしています。
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・パークの世界観を決めるプロダクト
・雨でも大人数のキャパを収容可能
・商店街を通ってから、アトラクションに乗ると「古い=マイナス」にならない。(だって古い世界に来てるのだから)
・アップセルの聖地(お土産、ドリンク、食事など)
③ショーキャスト
商店街の住人のフレンズクルーは「1960年代ってこんな感じだよ〜」と教えてくれる装置になっています。フレンズクルーが来るとみんなパフォーマンスを見に来るのでとても一体感が生まれます。
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また「大水かけ祭り」などの盛り上がりはすごかったです。子どもが参加できるイベントは意外に人と水があれば十分なんだと勉強になりました。
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④レオランド
レオランドは身長制限(110cm)などの子供のためにキャラクターの絵や水鉄砲発射OKエリアなどがあり、低予算ですがターゲットのパイを広げるのに有効なエリアでした。
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【大﨑のメモ】
資源配分をプロダクトごとに変えられるマーケターは凄いです。5プロダクトを統括しているマーケターがいるとして、そのプロダクトの売上比と同配分で広告宣伝費を配分することほど愚かなことはありません。また資源配分は金だけでなく、人・モノも。
マーケターの仕事は広く深い。
西武園通貨の賛否
園内の支払いには10園札・100園札などの『西武園通貨』が使われています。(換金せず電子決済もできました)
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ネット記事で昔西武園通貨を叩く記事を見ました。
「事前購入したが使いきれない」「換金に1時間も並ぶのはありえない」「使いきれないが返金はない」などが理由でした。
僕は紙幣での支払いもアトラクションのひとつだと感じました。10園=120円なのですが30園と書いてあると思わず「安い!いっか!」と購入ハードルが下がります。マーケターに嵌められていることを見透かされてるように感じる人もいるのは納得できますが、僕はオペレーションに課題があると感じました。
テーマパークオペレーションは難しいです
入り口が狭い・換金が1カ所(郵便局)などは待ち時間が集中してしまいます。また商店街のレトロの世界観での食事スペース(レストラン・喫茶店)のキャパは狭かったので、開業当初は待ち時間が凄いと思います。
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人間は期待するものを待つ時ワクワクします(ウルトラマンザライド)が当たり前のものを待つ時にイライラします(入場口や館近所)
またキャストの教育レベルはディズニー・USJと比較すると少し素人感がありました(ショーのプロの方は凄すぎました)。レストランやゲートキャストを教育が再度肝なんだろうなと思いました。
現在売上損益3400万円とのことでオペレーションへのテコ入れも始まっているみたいです。
マーケターの皆さんと回って
皆さん「ターゲットは…」「インサイトは…」と話しながら楽しむ一方でウルトラマンザライドなどはお客さんとしても純粋に楽しめました!ネスタリゾート編もやりましょう😎
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