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『他者と働く』とリモートワーク

最近、『他者と働く』を読んだのですが、COVID-19の影響でリモートワークが推奨されつつある現在だからこそ意識しておかないといけないことが書かれていると思ったので、この2つの関連性についてまとめてみます。

はじめに

僕のリモートワークの経験を先に書いておくと、業務委託でエンジニアとして関わっている仕事があり、その仕事は週1回のMTG以外はリモートで作業をしています(だいたい1年くらい)。
業務委託ではあるものの、slackではシングルチャンネルのアカウントではなくほぼ全てのチャンネルに参加可能にしていただいています。

『他者と働く』について

宇田川元一『他者と働く』は一冊を通じて、「ナラティヴ」と自分と他者の間に生まれる「ナラティヴの溝」をどう埋めるのかについて書かれています。


ナラティヴとはなにかについては引用すると…

「ナラティヴ(naratiive)」とは物語、つまりその語りを生み出す「解釈の枠組み」のことです。物語といっても、いわゆる起承転結のストーリーとは少し違います。
ナラティヴは、私たちがビジネスをする上では「専門性」や「職業倫理」、「組織文化」などに基づいた解釈が典型的かもしれません。

簡単な例としては、部下には部下の見えている/理解している枠組みがあり、上司には上司の見えている/理解している枠組みがあり、それらの違い、つまり溝によってお互いの理解を妨げているというのが本書の最初のメッセージです。

では、この溝を埋めるにはということですが、これについては4つのプロセスが紹介されています。

1.準備「溝に気づく」
自分と相手のナラティヴに溝(適応課題)があることに気づく
2.観察「溝の向こうを眺める」
相手の言動や状況を見聞きし、溝の位置や相手のナラティヴを探る
3.解釈「溝を渡り橋を設計する」
溝を飛び越えて、橋が架けられそうな場所や架け方を探る
4.介入「溝に橋を架ける」
実際に行動することで、橋(新しい関係性)を築く

ざっくりと内容を掴むには下記の記事を見ていただくと早いかもしれません。


相手のナラティヴを理解する上でのリモートワークの弊害

先に紹介した4つのプロセスのうち、2番目の観察「溝の向こうを眺める」についてはcakesの記事に図が紹介されています。

その中でも大事だと思うのはこの部分。

じっくりと相手や相手の周囲を「観察」してみましょう。相手にはどんなプレッシャーがかかっているか、相手にはどんな責任があるか、相手にはどんな仕事上の関心があるか、それはなぜか、など、いくつもの気づきが得られると思います。

解釈や介入を行うにしても、どのようなアプローチをするべきかという理解がまず必要になります。事例を読めばわかるのですが、この解釈、介入による溝を埋めるというアプローチは相当に難易度が高く、そのため見当違いの解釈や介入を行っても溝は埋まることはないため、とにかく相手の観察が大事になります。
ここまで書くと概ね察されていると思いますが、この観察という行為はリモートワークになった瞬間に急激に難易度が上がります。
同じ職場で机を突き合わせて仕事をしている場合、ちょっとした雑談もそうですし、話をしなかったとしても、周りで行っているときの雑談を盗み聞きしたり、作業中の表情などなど、相手の様子を観察できる要素はかなり多くあります。
それがリモートワークになると仕組みをほとんど整えない場合、相手とのコミュニケーションはslackでのやり取りのみ、MTGはZoomで、しかもビデオをオフにしている場合もあると相手の様子を観察できる機会が激減します。
意図せずではあるものの、相手のナラティヴを理解しにくい状況が生み出されているため、結果的に今まで以上にナラティヴの溝が深まっていってしまいます。

自分のナラティヴを理解してもらうためにやるべきこと

自分が相手のナラティヴを理解できたほうがいいのはその通りなのですが、相手に自分のナラティヴを理解してもらいやすい状況を作るほうが、自分を変えれば良いだけなので手っ取り早く着手可能です。

意識することは、自分のナラティヴはどれだけ手を尽くしても、ほとんど伝わらないことを前提として文字ベースでのコミュニケーションを行うということになります。

最近聞いているポッドキャストにFREE-AGENDAがあるのですが、その中に「Slackがもたらしたもの、奪ったもの」という回があるのですが、この回で話されていることが面白いです。

このポッドキャスト内ではSlackだと思ったことや生煮えの状態の意見を簡単に言えてしまうという話が出ています。
ここまでの話と合わせると、リモートワークでのSlackを中心としたコミュニケーションというのは「観察量が減っている状態」で「瞬発的に思ったことを言えてしまう」ツールを使っている状態である訳で、ある意味リスクが高い状態と言えます。

こうしたネガティブな面を理解した上で、相手に理解してもらうのに必要十分な量の文章を書くことを心がけるというのが大事になります。こう書くとそりゃそうだとなるのですが、Slackの短い文章で投稿することを推奨するかのようなUIに抗って使い続けるのにはなかなかストレスの溜まる体験で、心づもりが必要なのです。。

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テクノロジーを使って、こうしたジレンマを回避するという点ではNotionは必要十分な量の文章を整理して伝えるのにも適したツールになっていると思います。

社内で利用しているドキュメント共有ツールやWikiがあるならば、それらを積極的に利用するというのも一つの手です。Slackを使って議論するにしても、その議論の叩き台はこうしたツールを使って十分に考慮した上で書かれたものを使うというのは出来るはずです。

さいごに

今回の状況でやむを得ずリモートワークをすることになった方も多くいると思いますが、リモートワークのマイナス点を把握した上で仕事をすることで、少しでもそのマイナスを減らせるといいですね。

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