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都内で旅館業を考えるときに必要な接道義務についての法的な理解と確認方法

これからご自宅や購入物件を宿泊施設として営業を検討している方、物件を借りて運用しようとしている方、その物件の接道状況は確認しましたか?

自宅や投資物件の運用で宿泊施設を選択肢の一つとして考える場合、まず確認しないといけない項目の1つが前面道路の種類と敷地との接道状況です。

今回は宿泊施設を営む上で必要な接道義務についての法的な理解と確認方法について説明していきます。


接道状況を確認すべき理由

結論から申し上げると、物件の接道状況によって想定収支に大きく差が出てしまうからです。

物件の接道状況によってはその物件を旅館業として運営できるのか、はたまた民泊として運営しか道はないのかで分かれてしまいます。

民泊の場合は、日数制限(180日)が発生してしまうので、できれば制限の無い旅館業で運営していきたいですよね?

以下、東京都内の事例や条例に沿って理解していきましょう!

確認事項1 前面道路に4m以上接しているか

道路については建築基準法の中で定義や分類が定められ立法されています。

接道義務については、43条1項に記載があります。

第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。
一 自動車のみの交通の用に供する道路
二 地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第十二条の十一の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。)内の道路

建築基準法

これだけであれば、民泊するにしても旅館業をするにしても、以前から接道義務が守られていることを前提に考えてよいはずですから、特段対応しなくて良いものになります。

しかし、同条3項で下記のように各自治体で上乗せ条例を定めることができる旨の規定があります。旅館/ホテルは、特殊建築物にあたります。

3 地方公共団体は、次の各号のいずれかに該当する建築物について、その用途、規模又は位置の特殊性により、第一項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を十分に達成することが困難であると認めるときは、条例で、その敷地が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係に関して必要な制限を付加することができる。

 特殊建築物
 階数が三以上である建築物
 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物
 延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合にあつては、その延べ面積の合計。次号、第四節、第七節及び別表第三において同じ。)が千平方メートルを超える建築物
 その敷地が袋路状道路(その一端のみが他の道路に接続したものをいう。)にのみ接する建築物で、延べ面積が百五十平方メートルを超えるもの(一戸建ての住宅を除く。)

建築基準法

そして、東京都では、実際に上乗せ条例を東京都建築安全条例内で規定しています。

第十条の三 特殊建築物の敷地は、その用途に供する部分の床面積の合計に応じて、次の表に掲げる長さ以上道路(前条の規定の適用を受ける特殊建築物の敷地にあつては、同条の規定により接しなければならない道路)に接しなければならない。

東京都建築安全条例
東京都建築安全条例

旅館業をする場合、建築基準法二条1項2号の特殊建築物にあたります。もともと住宅として通常の接道義務で済んでいたものが、旅館業移行時に特殊建築物となることによって特殊建築物としてのより厳しい接道義務を課されることとなり、この接道義務を満たしている物件と満たしていない物件に分かれてきます。残念ながら接道義務4mに満たない戸建て等は、旅館業に進むことができなくなってしまいます。

ちなみに、民泊の場合は、旅館業と同様に宿泊業であるものの、建築基準法上、特殊建築物という扱いではないため、この上乗せ条例を気にする必要はありません。

確認事項2 前面道路は本当に道路か?

ここでもう一つ落とし穴になりやすいのが、接している前面道路が本当に建築基準法上、道路かどうかという点です。課されている接道すべき対象の道路とは、建築基準法の道路である必要があります。しかし、目視で道路だと思っている道が実は建築基準法上の道路でない場合があります。

建築基準法上の道路は、42条で規定されています。

第四十二条 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(省略)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。

 省略
 省略
 省略
 省略
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建築基準法

ここで、幅員四メートル以上(上記太字箇所)とありますが、四十二条二項で四メートル未満の道路でも行政庁が指定すれば1項と同様に道路とみなすという規定があります。これがいわゆる二項道路です。(下記、原文載せましたが読まなくて大丈夫です)

2 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(同項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満で崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該崖地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。

建築基準法

上で挙げられている各道路についての説明は省きますが、建築基準法上の道路かどうかは、各自治体で道路図を公表しているのでそこから確かめることが可能です。

例えば↓は渋谷区の道路図です。

例えば↓は目黒区の道路図です。

ちなみに新宿区の指定道路図は窓口でしか閲覧できないそう。めっちゃ不便🥺

各自治体のHPから地図情報を参照できるようになっていると思いますので、確かめてみてください。

よくある質問

特殊建築物に幅員の長さ基準はないのか

特殊建築物の前面道路の幅員の長さの基準については、たしかに東京都建築安全条例の第十条の二に規定する条文があります。しかし、同条では、特殊建築物の中の一部の用途に絞って接する道路の幅員について規定以上の義務を設けており、この中に旅館用途は含まれません。ですので、前面道路の幅員については、気にしなくて良いでしょう。

前面道路が私道でも良いのか

私道か否かは、建築基準法上の道路か否かに無関係で、私道でも建築基準法条の道路である場合とでない場合があります。各自治体のサイトから該当の道路が建築基準法の道路かどうかを確認することをお勧めします。

接道義務を満たしていない場合に、それでも旅館業を取りたい

▼接道の長さが足りていない場合
諦めた方が良いと思います。接道の長さが足りない状況で接道義務を満たしにいくには、道路に接している隣地を借りるか、取得する必要がありますが、あまり現実的とは言えません。

弊社で立ち上げからサポートした物件の一つが、接道状況が3.8mでなかなか惜しい状況でしたが、偶々所有者の敷地も隣地にあったため、接道している最小限の土地を旅館業中は借りることができる旨を賃貸借契約書に入れていただいて調整した事例がありますが、かなり稀な例かと思います。

▼前面道路が建築基準法上の道路ではなかった
建築基準法上の道路でない場合でも申請して行政庁に道路として認めてもらうという選択肢はあります。ただ、この申請関連に関しては、私は詳しくないので自分で調べてみてください。

以上です。何か道路関連で質問などあればお気軽にコメントしてください。

一軒家ホテル合同会社では、都内を中心に一軒家やマンションの一室を宿泊施設として旅館業や民泊運用する事業を展開しています。
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