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Figmaから多職種協働について考える③

これまでは、Figmaの事例検討、多職種協働の現状や問題について、自分なりに整理してきました。

これまでの振り返り

これまで学んできたことを、自分なりに簡単に整理してみますと、以下のような理解でいます。

・Figma
Figmaのビジョン:すべての人がデザインにアクセスできるようにする
Figmaを広まった要因
ブラウザファーストアプローチ:バラバラなメールベースのやりとりをクラウドベースのURLに集約、コミュニケーションコストの低下
クロスサイドネットワーク効果:他職種の参入ハードルの撤廃、透明性の向上・シームレスな関係性による開発効率の改善
Community-led Growth:デザインの共有コストの低下、拡張性の向上により、オープンなコミュニティベースによる市場創出

・多職種協働
多職種協働:同じ目的に対して2つ以上の職種で、それぞれの専門性の元協力し合う関係性のこと
多職種協働が困難を感じるシーン
・コミュニケーション時
・サービス提供時
・チームとしての機能時
問題点:時間の制約、オープンなコミュニケーションの欠如、ファシリテーション能力の不足、職種間での期待の不一致

・薬薬連携
薬薬連携:病院と薬局間での薬剤師の連携
薬薬連携の利用シーン
・地域勉強会を中心として連携する「地域勉強会型」
・院外処方せんの対応を中心に連携する「院外処方せん対応型」
・病院を退院する際に実施される連携として「退院時地域連携型」
問題点:片側主導になりやすい仕組み、情報共有の仕組み、薬剤師同士が会する場のインセンティブ設計の不足

今回は、これらのことを踏まえて、もう少し考えてみようかと思います。

ブラウザファーストアプローチからの学び

まず、Figmaでうまくいっていたブラウザファーストアプローチですが、医療における多職種協働の文脈では、現状、電話・FAXや何らかの書類的なものでのアナログなやりとりがベースになっていることが多いかと思います。
そのような状況が、Figmaの事例のようにURLなどに、情報や作業環境が集約できるのであれば医療における意思決定の効率性の向上や役割期待のマッチングも起こりやすくなるのではと考えます。
情報に関しては、どこまで現場ドリブンになっているのかはわからないですが、さまざまな情報がマイナポータルに集約されつつある段階かと思います。*1

デジタル庁.わたしの情報について(2024年6月2日参照)

また、作業環境の集約に関しては、在宅医療ではメディカルケアステーション(MCS)のようなサービスが集約化できている事例の一つではないかと思います。
MCSは、医療介護現場がリアルタイムにつながる地域包括ケア・多職種連携のためのコミュニケーションツールと説明されています。*2
MCSは、僕も少し使わせていただいたことがあります。アカウントさえ登録できれば、比較的シンプルにわかりやすい形になっているため、初見でも使いやすい仕様になっています。
ただ、在宅医療以外では、このようなツールはあまりない印象です。病院、薬局などの医療機関では、作業環境は基本個々の閉鎖的環境下が基本であり、退院時カンファレンスなど特殊なケースやアナログな連絡方法による協働体制が在宅医療以外では主体であることに変わりはなさそうです。
在宅医療の場だけでなく、外来・予防医療時などでもMCSのような、協働する際の初動コストを抑えられていける選択肢が増えていく必要があるのかもしれません。

クロスサイドネットワーク効果からの学び

Figmaでは、デザインのための特定のアプリのインストールが不要になったり、専門的スキルがなくてもできる設計など多職種の参入障壁が低くなっていることが、クロスサイドネットワークにつながっていたかと思います。
医療における多職種協働では、本音が話しにくいなどコミュニケーションにおける問題や薬薬連携でも病院側の主導に陥りやすい状況などが問題として挙がっておりました。状況に応じてパワーバランスが固定化されてしまい、コミュニケーションの偏りが発生してしまっているという印象です。
先ほどの、比較的取り組みが進んでいる在宅医療でも、発言する人や主導する人の偏りはどうしても生じてしまっている印象を持ちます。多職種協働の効用は、継続することで、場や関係性の変容が醸成されていく可能性が示されていましたが、このような現象はデジタル上でも変わらず起きるのか、顔の見えない場でも適用されていくのかは難しい部分かもしれません。
フラットな関係性を形成できるかは、Figmaではデザイナーのデザインから、誰でもデザインできる設計により、デザインを民主化してきたように、デザインというプラットフォーム上で、いかにそれぞれの専門性をコラボできる場にできるかどうかなのかもしれません。例えば医療では、患者さん中心の医療を土台として、そこにそれぞれの専門性を発揮できるような設計のコミュニケーションツールになると良いのかなと思います。
また、同カテゴリーのポジション同士でのつながりは強くても、医師・薬剤師間などカテゴリーが変わるとつながりが弱くなる傾向も感じます。横串だけではなく、縦串で繋がれる仕組みなどが必要なのかもしれません。これも在宅医療では、ケアマネジャーが機能しているかもしれませんが、他の分野では縦串のような役割は少ない印象です。
MCSのようなものが外来などにも水平展開されていくのか、既存のファネルごとでのコミュニケーションツールが垂直に展開していくのか、選択肢が増えていくことで、多職種協働の機会が増え、パワーバランス中心の医療ではなく患者さん中心にコミュニケーションができると、クロスサイドネットワークも進んでいくのではないかと思います。

Community-led Growthからの学び

Figmaでのオープンなデザインの共有や拡張性による成長は学ぶべきところが多いかと思います。
ただ、オープンさは医療とは相性が悪い部分もあり難しいところかもしれません。ベストプラクティスであったり、希少なユースケースなどは、小さなコミュニティベースでの共有であったり、研究発表などでの事例検討くらいではないかという印象です。また、適応外処方など、学問で習わないようなことは、セレンディビティ的な学習でしか補えていないのかなと思います。
どこかで、多職種協働の見本となるようなことが行われていたとしても、共有性や拡張性に制限があり、普及しにくい現状であるという印象です。
例えば、ボトルネックになっている部分が個人情報である場合、法の整備であったり、半自動で個人情報の問題が解消されるツールなどが実装されていくと変わってくるのかもしれません。
また、薬薬連携では、地域勉強会型が一方通行になりやすい部分が問題となっていましたが、このような現状稼働している仕組みを有効活用していくことも1つの手にはなると思います。このような勉強会は、デジタル上での開催はまだまだ少ないイメージですし、せっかく開催したとしても、それがストックとして検索容易な状態で保管されていくケースはまだまだ少ないかなと思います。
個人情報の問題が自動的に解消され、共有コストを下げていくことができたり、またそれらが検索容易な形で保管される場が整備されていくと、多職種協働に取り組まれている方達の事例を普及させていけるような土台ができていくのかもしれません。

最後に

自分なりに学ばせていただき、パラパラと思ったことを綴らせていただきました。
こう見てみると在宅医療は細かな課題はありつつも、土台は整っている印象を受けました。
また、外来医療では、在宅と比べると進んでいないところも多いと思いますが、がんや認知症、糖尿病など部分的に進んでいる分野もあるかと思います。
健康が多様化していく中で、多様なものを個別に対応していくことは限界があるのかと思います。多様なまま公正に、ノットワークする医療のためにも今後も多職種協働について考えていけたらなと思います。

ヘッダー画像:generated by DALL-E

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