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「悲鳴やため息」とどう付き合っていくか?

もはや悲鳴とため息シリーズと言っていいぐらいに同じテーマで書き続けているが、たぶんこの件については今回が最後の発信です。

最近読んだ本に、松村真宏さんの「仕掛学」という本がある。

簡単に内容を紹介すると、社会課題に対するときは、人の行動を変えるために「ついしたくなる」ような「仕掛け」でアプローチしよう、というものだ。
ポイントは、ただ行動を強要するのではなく、自然とそれを選ぶように誘引すること。
啓蒙という正攻法で人の行動が変わらない場合、この「仕掛け」が有効になり得るということが、数々の事例とともに記されている。


例えば、ポイ捨てがよく起こる場所の近くに小さな鳥居を設置する。
すると、バチが当たるんじゃなかろうかという気持ちが生まれ、ポイ捨てをやめさせることができる、というような感じ。
近年よく見るようになった男性トイレの便器の「的」のマークとかも、「仕掛け」の代表例ですね。

この「仕掛け」という考え方は、アルウィンで起こる色々な問題に対しても有効だと思う。
サポ周りも例外ではなく、これを何とか使えないかと思い、最近ホットな「ため息と悲鳴」に対して考えてみた。
「仕掛け」の要件を満たせているのかは分からないが、認識が変われば行動が変わる一例として、提案したい。

「ため息や悲鳴が聞こえた時こそ、応援の最大のチャンスである」

共有したいのはこれである。
本来ネガティブであるため息や悲鳴を、いっそ応援のスイッチにしちゃえ、という認識転換の「仕掛け」
これを共有できないだろうか。

この言葉を選んだのはいくつか理由がある。

まず、選手に一番応援が効くのは苦しいときであろう、ということ。
ため息や悲鳴が起きるのは、ミスや危ない(ように見える)シーンだ。
そういう場面では選手も動揺し落胆してしまうが、一息置いた後、ここぞとばかりに大きなボリュームの応援が湧き上がればどうか。
本来であれば落ちてしまうところで、逆にボルテージが上がっていけば、選手の気持ちの段差という意味で言えば、サポーターがやれる中で最高の応援ということにならないだろうか。

次に、ため息や悲鳴という、ナチュラルな行動を無理に抑えつけないという点。
ため息や悲鳴は、確かに選手のモチベーションを奪う可能性があり、できれば無い方がいいものではある。
ただ、一生懸命に応援している人ほど、つい出てしまう自然な動作でもある。
ここを抑えつけるとなると「味方選手のミス×ため息への非難的空気」というストレスの掛け算になるし、ガチガチに縛られ過ぎてしんどいのでは、という気もしてしまう。
それに対し「ため息が聞こえたら応援する」方法は、ため息をつかないことを強要せず、逆に応援のスイッチとして利用してやろうというチャレンジだ。
そこに新たな可能性が感じられないだろうか。

三つめに、この考え方はミクロだけではなくマクロでも応用が効く。
つまり、90分の試合の中での逆境(ミクロ)だけでなく、シーズンの、もっと言えばクラブ史の中での逆境(マクロ)においても、サポーターの熱を上げるスイッチにできる、ということだ。
クラブが苦しみ、ため息が聞こえてくるような時こそ動くということは、地域リーグ時代から山雅サポーターが実践してきたことでもある。
それを積み重ねることで、サポーターとクラブ、選手たちが互いに信頼関係を築いてきたのが松本山雅というクラブだったはずだ。
そのスタイルは必ず次代に繋いでいかないといけないし、だからこそ、いま応援が必要なんじゃないだろうか。
…というようなことも、もしかしたら伝えられる可能性があると思っている。

「ため息や悲鳴が聞こえた時こそ、応援の最大のチャンスである」

このタイミングでの新潟戦に、僕は2015シーズンのAway新潟戦を思い出す。
J1終盤戦、残留を懸けてのライバルとの直接対決に山雅は0-2で敗れ、結果的にそれが大きく響いて、TOP15の悲願は成し遂げられなかった。
いま、カテゴリーは違えど、あのとき同様に逆境で迎える新潟戦。
自力で生き残るチャンスが残されている中で、僕らは何ができるのかを再び問われている。

選手にとってのチャンスが決定的なシュートを打てる瞬間なのだとすれば、サポーターにとってのチャンスはクラブが苦しんでいる時なのだと思う。
だとすれば、そんな一番応援が効くタイミングでサポーターが意気消沈しているのは、選手がゴール前でシュートを打たず固まってしまっているのと同じだ。
今こそ最大のチャンス。
ここでやらずにいつやるのか。

逆境の時こそサポーターがクラブを支える。
その気持ちはずっと持って応援してきた。
「今こそ共に」や「山雅が好きだから」を作ったときも、そういう精神性を歌詞に込めた。
それが意味を失い空虚なものになってしまう前に、もう一度、言語化することで形にしたいと強く思っている。

「ため息や悲鳴が聞こえた時こそ、応援の最大のチャンスである」

悲鳴やため息が聞こえたら、次の拍手は倍の強さで叩こう。
その熱をスタンドに伝播させ、根付かせていこう。
その精神が、苦しい時にクラブを救うように。

これが選手の背中を押す言葉になることを願っている。

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