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「四当五落」は、長距離走には当てはまらない

President Onlineに、「昭和の名門公立高校では常識だった“四当五落”のすさまじさ」という記事が掲載されていました。

「四当五落」は「しとうごらく」または「よんとうごらく」と読みます。大学受験で4時間睡眠は合格するけど、5時間睡眠は不合格になる、という意味です。あくまで勉強量の必要性を説くための熟語です。

これに近い状況が昔にあったけど、最近は聞かなくなったので、記事になっているのだと思います。

では、本当に四当五落は過去の話なのでしょうか? 自分の経験を振り返って、大学受験、大学の勉強、仕事に四当五落は当てはまるのかを考えてみました。

その際、四当五落を「一定期間、何かを削って時間を投入すれば、成果が出ること」という意味としています。

結論は「四当五落は特殊な短距離走のケースでしか当てはまらず、長距離走で取り組めばよくなると、当てはまらない」です。


四当五落が当てはまるもの

①平成初期の大学受験

私が大学受験したのは、平成初期の18歳人口のピークの翌年くらいです。受験戦争と言われた時期でした。

高校は地方の公立進学校で、旧制中学の1校です。1学年に360人いて、現役合格が東大と京大で合わせて5人くらい、旧帝大に40人くらいの進学実績の高校でした。

高校1〜2年は授業と部活が生活の中心。高校2年に勉強のエンジンをかけて、高校3年でギアを上げる、という雰囲気でした。

周囲の友達も同じでような感じで、高校3年から受験モードでした。それでも、そこそこ合格しています。この記事ほどスパルタでないものの、平成初期の大学受験には四当五落はあったのだと思います。

②東大の単位取得(テストとレポート)

私はそれほど勉強熱心な学生ではありませんでした。進振りの点数は平均点くらいの70点台だったはず。

ある程度出席するけど普段は勉強せず、テスト前にまとめて対策してテストを受ける。レポート締切前の数日で、睡眠する時間を削って、レポートを書き上げる。こうしたことで、単位をもらえた授業も多くありました。

25年くらい前の話なのですが、ネットのブログを見ると、今もこうした授業はあるようです。

このように、四当五落で卒業必要な単位の一部をもらいました。ただし、こうした授業で学んだことは、ほぼ覚えてません。仕事でも役立ってません

③前工程がある短納期の仕事

例えば、経理と一緒に財務目標を作って、そこから2日で中期計画に落とし込んで、指定の日に外部に説明する場合ような仕事です。SEの開発の仕事も、このパターンがありました。

これは四当五落が当てはまります。前後の工程の時間のコントロールができない中、決められた納期までに、一定の品質の成果を出す必要があるのです。

この手の仕事は、最後は体力勝負です。納期の前日は徹夜したりしました。とはいえ、日頃からの事前検討をしておけば、ある程度はカバーできます。

四当五落が当てはまらないもの

①今の大学受験(首都圏)

自分の大学受験から30年近く経ちます。今は東京に住んでいます。子供は公立小学校から中学受験せずに、公立中学校に通ってます。

子供はまだ大学受験前です。でも、学校や友達の様子を聞いたりすると、四当五落は首都圏の大学受験に当てはまらないように思います。

それは、現代の首都圏の大学受験は、受験期の四当五落の勉強量でなく、高校に入る段階くらいでレースがほぼ決まっていると感じるためです。おそらく、中学受験前の小学生からの勉強量の総和で決まるのだろうと思います。

例えば、我が家の子供の友達では、小学4年生くらいから塾に通う子が増えてました。そして、多くの子が中学受験をしています。学校全体だと、2〜3割くらいが中学受験したのだろうと思います。

公立中高一貫校(倍率5倍とか)だけ受ける子供もいるようで、不合格で公立中に来る子も多くいます。そうした子供は勉強の習慣も付いている上に、中学1年から塾通いしてます

同じ公立中学でも、入学時点で、中学受験している子供としていない子供の間で、基礎学力に差があると思います。勉強の習慣、計算力や図形問題、熟語や読解力などで、中学受験していない子供(我が子)は周回遅れの差が付いていた印象があります。

私立の進学校に進んで、さらに大学受験に向けて塾通いしている子供とは、かなりの差が付いているはずです。

また、東京には難関私大の附属校も数多くあります。この場合は、中学受験でほぼ大学入学まで決まります。これは地方にない首都圏の特徴です。

こうなると、高校3年生になってから、4時間睡眠で勉強しても、なかなか差は埋まらないはずです。

つまり、首都圏の大学受験は小学生からの長距離走であり、ラストスパートの四当五落が成り立ちにくいのです。最近の中学受験者の増加を考えると、長距離走の傾向は強まっているのだろうと思います。

②大学・大学院ののゼミ形式の授業

東大で私が学んだ学部は学生数に比して教員数が多いため、少人数のゼミ形式授業が数多く開設されていました。

先生と大学院生が数名、学部生が数名で5〜10人くらいで、ディスカッションが中心の授業です。私が経験した最少人数は、先生+学部生2名の3名でした(たしか科学教育の授業)。

あと、法政大学の夜間大学院の授業も、基本的にゼミ形式でした。

そうした授業は、テストもレポートもないものが多かったです。全て出席すれば、A評価になるものが、ほとんどでした。

もちろん、授業中のディスカッションにはきちんと参加が必要です。論文の輪読だと準備が必要でしたし、統計分析の宿題が出る授業もありました

そうなると、四当五落は当てはまりません。毎回授業に参加して、コツコツと勉強を続けることだけが、単位をもらう道になります。

一方、このようなゼミ形式の授業で学んだことは、今でも覚えてます。その後の自分の考え方の基礎になっています。こうした授業で学んだことは、仕事に役立っています。

③期間の長い仕事

M&Aや事業再編のように、半年以上かけてやりきる仕事は、徹夜はしたことありません。忙しいのは忙しいし、業務量の山谷はあるのですが、取り組む時間も長いので、負荷はコントロール可能でした。

あとは、接客や教育などの相手へのリアル対応が基本の仕事は、四当五落はないだろうと推測します。もちろん、事前の準備やスキルアップが必要ですが、直前でどうなるものではなく、長年かけた積み重ねが必要なはずです。

長い期間をかけて取り組む仕事は、例えその中で短期的な業務があったとしても、時間軸でコントロールできるため、四当五落は当てはまらないと考えます。

まとめ

こうやって比較すると、四当五落が成立する条件は、周囲の条件が均質であり、短期間で成果が出せることだと考えます。

昭和〜平成初期の大学受験にはこれが当てはまったけど、今の大学受験は小学生からレースがスタートしているので、当てはまらないということになります。そのため、「四当五落」という熟語を耳にしなったのだろうと思います。これが、President Onlineの記事の背景と想定しています。

大学の単位取得や仕事でも、四当五落が当てはまるケースもありました。ただ、大学の単位取得や仕事は、長期間で成果を出せばいいので、四当五落は当てはまらないことが多いと思います。

「四当五落は特殊な短距離走のケースでしか当てはまらず、長距離走で取り組めばよくなると、当てはまらない」というのが、私の結論です。

要は、なんでも計画的に早い段階から継続的に取り組めば、成果を出せる、という当たり前の話ですね。

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